如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

最近やたらに目立つ「からあげグランプリ金賞」とは何ぞや?

全部で26部門、単年度で計174店も金賞を受賞

 タピオカドリンクの人気が世間であっと言う間に盛り上がって、一気に潮が引くかのごとく消え去ったのは記憶に新しい。

 こうしたなか、今盛り上がっている食品として「鳥の唐揚げ」を挙げることに異論はないと思う。唐揚げは元々肉屋の定番商品だったし、スーパーの総菜売り場には必ずある。コンビニのローソンが「からあげくん」を売り出したのも随分昔のことだ。

 この唐揚げ業界に現在、ファミレス(すかいらーく)や居酒屋(わたみ)なども参入して、まさに戦国時代の様相になっていることは皆さんもご存じだと思う。

 

 唐揚げは個人的にも好きな総菜なので、多様な業種が参入して混戦となることで、味が良くなり、適度な価格競争も起きれば、消費者にとっても望ましいことではある。

 

 ところで、皆さんはこういった「唐揚げ店」の店頭やWebサイトに「からあげグランプリ金賞受賞」といったポスターを見かけたことはないだろうか。

        

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 実はこの「からあげグランプリ」、日本唐揚協会という団体が運営しているのだが、この協会のWebサイトを見て驚いたことがある。

 一般消費者の普通の受け止め方としては、「金賞」というのは、その年に最高と評価されたモノやサービスが受賞するものという認識があると思う。また「金賞」があるのだから「銀賞」「銅賞」もあると考えるのが普通だろう。

 日本唐揚協会のWebサイトで、からあげグランプリの記事一覧を見るとこの認識は大きく間違っていることがわかる。

      

 まず、最新の「からあげグランプリ」そのものが、大きく「第12回からあげグランプリ」と「第2回唐揚弁当グランプリ」の2つに分けられる。

 そしてこの「からあげグランプリ」については、「素揚げ・半身揚げ部門」「しょうゆダレ部門(3地区)」「手羽先部門」など10部門に分かれているほか、これとは別に「スーパー総菜部門」が北日本など4地区に分かれており、「からあげグランプリ」だけで14部門も存在、それぞれに「最高金賞」と「金賞」が授与されるのである。ちなみに「銀賞」も「銅賞」も存在しない。

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 これに加えて「唐揚弁当グランプリ」だが、こちらは「弁当屋部門」「専門店部門」「定食屋部門」がそれぞれ地区別に3つ、「酒場部門」が地区別に2つ、「コンビニ部門」が1つと合計12もあるのだ。

 「からあげグランプリ」と「唐揚弁当グランプリ」を合わせると、何と26部門も存在することになる。

 

 さらに驚かされるのか「金賞」の数。「最高金賞」はさずがに各部門ごとに1つだが、「金賞」は「全国定食屋部門」で受賞した「かつや」を除いて、すべての部門で複数の金賞受賞店が存在するのである。もっとも金賞を多く受賞しているのは「からあげグランプリ」の「東日本しょうゆダレ部門」で、何と15店も受賞しているのだ。

 

 この結果、トータルでの受賞店数をまとめると、「最高金賞」は26店、「金賞」に至っては148店にも達する。2つを合わせると174店だ。ちなみに資料の欄外の注釈によれば、「からあげグランプリ」のエントリー数は921で、ノミネート数は175、最高金賞と金賞の合計受賞店数は121だから、エントリー後の受賞率は13%、ノミネート後の受賞率は約70%となる。

 しかもこれは単年度の受賞店数なので、今年で12回目となる「からあげグランプリ」や2回目となる「唐揚弁当グランプリ」がこれまでにいくつの「金賞」を授与してきたのかは調べていないが、1000店を超えているのは間違いなさそうだ

 

 グランプリを主催する日本唐揚協会には、専門家としてそれなりの言い分があるだろうが、一般消費者からすれば「金賞の安売り」感は否めないだろう。ひとつかふたつと思っていた「金賞」が実際には174もあるとは誰も想像していないはずだ。

 

 私自身はこういった「〇〇賞受賞!」のような「権威付け」は嫌いなので、モノゴトを判断する基準にはあまりしていないが、一般消費者にとっては「金賞」が人気や味を保証する基準としている人も多いはず。味の好みは人それぞれなので、他人がとやかく口出しする話ではないが、「からあげグランプリ」金賞の実態を知っておいて損はないだろう。

 そして、この手の「〇〇賞受賞!」をウリにしているのは、「からあげ」だけではないというのも事実のはずだ。