如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

今通院している歯科医院、本当に信頼できますか?

やってはいけない歯科治療
 2018年6月2日
 
 肝炎、救急医療などを専門とする医療ジャーナリストが、「歯科診療」にスポットライトを当てた言わば
「告発本」である。
 
 70年代から急増した子供の虫歯に対応するため、政府主導で歯科医を急増させた結果、現在歯科医師は10
万人を超える一方、虫歯は治療が奏功して激減した結果、現在は完全な医師過剰の状態にあるとし、診療報酬
が安いままに置かれた歯科医院の経営が悪化、これがインプラント(人口歯根)や予防歯科といった自由診療
扱い(保険診療より収入は多い)になる治療法への傾斜に繋がっていると断じている。
 
 また、こうした利益追求の姿勢が、経費節減のための医療器具「ハンドピース」の使いまわしという感染症
リスクの増大のほか、ステマによる口コミサイトの高評価とセットになったネット広告への投資などの、歯科
医の「モラル崩壊」を招いていると指摘している。

 読み終えた感想を簡単に言えば、「歯科医師の本当の実力を見極めないと大変な結果を招きかねない。その
ためには患者も歯科医に任せきりではなく、自分の症状の勉強が必要」ということだ。これは歯科治療に限ら
ず、「自分の身は自分で守る」というのは自己責任の観点から当たり前ではあるのだが。

 ただ現実には、多少の治療知識を得て、歯科医や歯科衛生士に質問しても逆に専門用語を使って「反撃」さ
れたり、「逆ギレ」される可能性もある。できれば無用な「言い争い」は避けたいのが個人的なスタンスだ。

 その意味で第7章にある、「失敗しない歯医者選びの7つのポイント」は参考になった。詳細は本書を読ん
で頂くとしてその一部を紹介すると、「抜歯と診断されたらセカンドオピニオン」がある。抜く抜かないの明
確な診療基準はないので、別の専門医にも判断を仰ぐということだ。その他にも「虫歯治療」「インプラント」
「歯周病」などの各章ごとに最後にまとめられた「基礎知識」も大いに勉強になった。

 私が、現在通院している歯科医院はもう通い始めて20年になるが、親知らずを除いて抜歯されたことはなく、
現在もすべて自分の歯である。本書にあるように歯周病の予防には歯間ブラシが有効なのだが、通院開始当時
から勧められてこれを実践していることが結果に結びついていると思う。

 二カ月に一度、クリーニングに3000円程度かかるが、1本数十万円もかかるインプラントを入れることを考
えれば、安いものである。

 私の場合は、たまたまいい歯科医に巡り合えたので良かったが、本書を読む限り、患者の治療よりも自分の
収入を優先する医師が想像以上に多い可能性があることが分かった。患者の知識不足に乗じて、不安を煽り、
高額な治療に誘導するシーンの紹介では、もはや「悪徳商法」に近いようなイメージすら感じた。

 歯科医師という国家資格の肩書きを持つ「先生」の言い回しや説得に、自信を持って自分の意見を言える人
は少ないだろう。その意味で歯科医が行う(本来不要な)自分のための診療という「罪」は、そこらの詐欺師
よりも重いのではないか。

 現在通院中で、その治療方針に疑問をもっている人はもちろん、今後のことを考えて治療が必要なった時の
ために信頼できる歯科医を見つけておこう、という人にも是非お薦めしたい本である。