窒息死に向かう日本経済
2018年7月7日
2015年から始まった角川書店から出版する「アホノミクス本」は本書で4冊目となるそうだ。ちなみにタイ
トルに含まれる言葉は「脱・アホノミクスのすすめ」に始まり、2冊目が「完全崩壊に備えよ」、3冊目は「
断末魔」、そして4冊目の本書では「窒息死に向かう」とヒートアップしている。この調子だと次回作は「心
肺停止」か「脳死状態」だろうか。
それはともかく、本書では現政権の政策が「カネ・モノ・ヒト」の分野において「呼吸困難」という状況を
それはともかく、本書では現政権の政策が「カネ・モノ・ヒト」の分野において「呼吸困難」という状況を
もたらしていると論じている。
ここでは「カネ」に関する記述について個人的な見解を述べたい。
まず著者は国債市場について、日銀の国債購入を「財政ファイナンス」と定義、政府の借金を賄うのが本来
の目的だとし、デフレ脱却というのはお題目に過ぎないと論じている。
まあ財政ファイナンスなのかどうかは別にして、現状の国債市場が流動性を失い、ほぼ機能停止状態にある
ことは間違いない。
銀行や証券会社の債券部門も人員削減が止まらないようで、今後市場が立ち直った際にマーケットに通じた
人材不足を懸念する声もある。
問題は、大量に買い入れ、買い続ける国債を、いつどのように処理するのかの目途が立たないことだ。誰も
が不安を感じながら対応策が見当たらないのである。
次に、株式市場について。著者は日銀のETF購入を「稼ぎ頭ファイナンス」とし、利益を稼ぎ出す企業のた
次に、株式市場について。著者は日銀のETF購入を「稼ぎ頭ファイナンス」とし、利益を稼ぎ出す企業のた
めに株価を恣意的に押し上げているとしている。
まあ「株価が下がると日銀の買いが入る」というのは株式市場では当たり前の話なのだが、問題はその買い
の対象がTOPIXや日経平均といったインデックス連動の投信に集中していることだろう。業績などの企業価値
を考慮せず組み入れ銘柄をひたすら買うことになるので、個別銘柄の割安・割高という指標が通用しにくくな
っているのだ。
最後に著者は、呼吸困難化の魔の手から逃れるには、「働き方改革」「生産性革命」といった造語に惑わさ
最後に著者は、呼吸困難化の魔の手から逃れるには、「働き方改革」「生産性革命」といった造語に惑わさ
れず、「君の名は?」と問いただし、その真意を正すことが重要だとしている。
これも間違っているとは言わないが、「相手の言い分を鵜呑みにしない」というのは、中学生でも分かるこ
とである。あえて邦画アニメのヒット作品名を流用するまで大袈裟なことなのかという疑問を持った。
著者は「アホノミクス」という言葉を多用すること等から見ても、現政権への批判的な態度は終始一貫して
著者は「アホノミクス」という言葉を多用すること等から見ても、現政権への批判的な態度は終始一貫して
いる。それはそれで構わないのだが、であれば一年以上もモリ・カケ問題で追及されても内閣の支持率低迷が
一時的な現象に留まり、いまだに根強い国民の支持があるという事実をどう受け止めるのか。
個人的には、「著者が国民に『政権を支持するのは何故?』という問いかけ」をしてみる価値は十分にある
と思うのだが。