日本の崩壊
2018年7月6日
日本政治史の泰斗・御厨貴氏及び古代ローマ史の第一人者・本村凌二氏という二人の東大名誉教授の対談
である。
タイトルは「日本の崩壊」だが、当然ながら各氏が得意とする古代ローマ帝国の崩壊の過程や、歴史的な天
タイトルは「日本の崩壊」だが、当然ながら各氏が得意とする古代ローマ帝国の崩壊の過程や、歴史的な天
皇制の位置づけなどを引き合いに出しながら日本という国家の過去と現状及び問題点を浮き彫りにしている。
切り口は5つ、「天皇制」「ポピュリズム」「政治と派閥」「安全保障」「国力」だ。
感想を率直に言えば恥ずかしながら、自分の勉強・知識不足から両氏の主張を十分に理解できたとは言えな
いと思う(特に天皇制と安全保障)。ただ、ポピュリズムや政治と派閥の項では、田中角栄や小泉純一郎など
著名な政治家を取り上げており、比較的分かりやすかった。
最後に「日本が崩壊するかどうか」について。
御厨氏は「日本人の(大戦、震災からの)回復力は目を見張るべきもので(国家の)崩壊はない。ただし
最後に「日本が崩壊するかどうか」について。
御厨氏は「日本人の(大戦、震災からの)回復力は目を見張るべきもので(国家の)崩壊はない。ただし
緩慢な衰退は否めない」としている。そして衰退の最大の原因は「将来構想を示さない政治、国家観を持たな
い政治家にある」と断じている。
政治家を擁護する訳ではないが、小選挙区制で次の選挙に勝つことが最優先の代議士に「100年先の国家を
政治家を擁護する訳ではないが、小選挙区制で次の選挙に勝つことが最優先の代議士に「100年先の国家を
語れ」と言うのは土台無理筋な話のような気がする。ただ総理大臣が毎年のように交代していた一時期に比べ
れば現政権の政治的基盤は安定しており、今の安倍政権で「将来の国家像」を描けないのであれば、これはも
う誰が総理大臣になっても大局に立った政治は望めないだろう。
一方、木村氏は日本人のモラルの高さを引き合いに出し「民度の高い国民がいる国は簡単には崩壊しない」
一方、木村氏は日本人のモラルの高さを引き合いに出し「民度の高い国民がいる国は簡単には崩壊しない」
と論じている。ただ一方で、不祥事の隠ぺいなど日本企業のモラル低下を憂いている。ちなみに木村氏は「自
由を基調にした社会主義」に期待するとしており、その理由として、日本社会に根差す平等主義、博愛主義を
挙げている。
個人的な感想を述べれば、やや偏見があるのかもしれないが、平等主義というのは「みんなで一緒に貧乏に
個人的な感想を述べれば、やや偏見があるのかもしれないが、平等主義というのは「みんなで一緒に貧乏に
なりましょう」という考えではないか、という印象を持っている。努力して結果を出した人がその分報われな
いというのは悪平等ではないだろうか。「機会」は平等であるべきとは思うが、「結果」は格差があって当然だと
思う。
もちろん「富の再配分」という概念を否定する訳ではないが、行き過ぎると有能な人材や利益を稼ぐ企業は
海外に出て行ってしまい、結果として日本にとって先行きの見えない不幸な状況に陥るのではないだろうか。
誤解を覚悟で言えば、「公務員」と「年金生活者」と「赤字企業の従業員」しかいないような国に未来はあるのだ
ろうか。
以上は私個人の浅はかな見方ではあると思う。時間があれば本書を再度読み直して、両氏の見解を理解しも
以上は私個人の浅はかな見方ではあると思う。時間があれば本書を再度読み直して、両氏の見解を理解しも
う一度自分の意見が意味のあるものなのかどうかを考えてみたい。