如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

この不利な局面であえて鮮明に「擁護」する姿勢は立派

 

日本会議・肯定論

濱田浩一郎

2018年12月8日

 本書にも多数紹介されているが、ここ最近は「日本会議」を日本を陰から牛耳る黒幕のようなイメージで批
判的に語る本が多いように感じていた。

 私自身は日本会議の主義・主張に詳しくはないし、特に支持している訳でもないが、世間では陰謀論のような
「否定本」ばかりが目立つので、今回は逆に「肯定本」を読もうと思ったのが購入のきっかけだ。

 確かに著者によれば国会議員280人が会員であるなど、政治的な影響力を警戒する気持ちもわからないでは
ないが、「利益によって政治家と結び付いているわけではない。主義主張や政策に親和性があるから、政治家
は日本会議の議連に入る」(p76)というのが実情ではないだろうか。

 日本会議の会員がせいぜい「4万人以上」(p94)であれば、選挙での応援、投票効果も大して期待できな
いはずだ。

 また、同会議の公式Webサイトに掲載されている綱領で「相互の文化を尊重する共生共栄の世界の実現に寄
与する」とあるように、一部が批判するような民族的な差別意図は感じられない。

 あと気になったのは、本書で紹介されているように仏教系、日蓮系、神道系などの「新宗教団体のトップが
代表委員として名を連ねている」(p77)ことで、著者が引き合いに出す批判本「日本会議とは何か」の著
者・上杉聰氏が「(日本会議は)宗教団体だとやっかいで、憲法改正に突き進むカルト集団」(p同)と主張す
るための背景・理由にされている面はあるかもしれない。

 もっとも宗教団体やカルト集団が面倒だというのなら、一部の政党はどうなのかとツッコミも入れたくなっ
たが。

 ただ、著者が解説しているように、本書には「書面」での質問に対する日本会議からの「文面」による回答
が12カ所以上引用されている。これは他の日本会議本にない大きな特徴だろう。

 関係者などへの周辺取材と文献などの資料だけでも、著者の筆力次第で批判本は一定レベルの読み物にはな
るだろうが、本家本元の公式見解に勝る資料はないはずだ。日本会議側が「擁護派からの質問」なので真面目
に対応したという側面はあるだろうが、Webサイト以外で、公式な意見に触れることは一般人にはあまりない
ので、参考にはなったのは確かだ。

 読後の感想をまとめれば、「日本会議の正体がよく知られていないので、怖さを煽った本が出版されたら結
構売れて類似本が続々と出た。最近はその勢いも一段落したようだし、日本会議の実態を成立の歴史から検証
した肯定本が出版されたので読んでみたら、意外にまともな市民団体だった」といった感じだろうか。

 過激な嫌韓本、嫌中本に比べれば、よほど冷静かつ、まともにその主義・主張を展開していると思う。