如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

知りたくても聞きにくい医者の「本音」を多面的にズバリ

 

医者の本音

2018年8月9日

 医者に診察してもらった経験のない人はほとんどいないと思うが、治療や投薬などで聞きたいことがあって
も、「こんなことを聞いて失礼ではないか」「質問したら怒られるのではないか」という場面は少なくないと
思う。

 そのような患者側からの素朴な疑問に、現役の消化器外科の医師が真面目に解説するという内容である。

 大学教授や有名病院の院長など肩書の立派な先生が、自分の専門分野について書いた本(本当に本人が執筆
したかは疑問だが)は多数あるが、30代の若手医師が医療業界の内情について言葉は悪いが「暴露」するよう
な本は珍しい。

 ただ本書はいわゆる「内部告発本」ではなく、特定の誰かやどこかの病院を貶めるのが目的ではない。患者
の側から見て、本来なかなか知り得ない病院や医師など医療の現状を「正しく理解してもらいたい」というの
が著者の意図だろう。
 
 全5章からなるが、一番参考になったのは第1章「医者の本音」だ。風邪で医者に診てもらうとパソコンの
電子カルテに処方箋発行機能があり「風邪1」ボタンを押すと、自動的に処方箋を書いてくれるという。ちなみ
に「風邪3」までボタンがあるらしい。患者としては「あまりに機械的」でちょっと違和感を感じるが、処方ミ
スの減少や時間短縮などの効果があるようだ。

 他にも「がんセンター」の生存成績がいいのは、がん以外の糖尿病や心臓病などを持っている患者を断って
いるため。VIP患者の多い某有名病院では飲み会の前に個室を回って「袖の下」をもらい軍資金にしている。
患者からの質問にわかったふりをしてコッソリ外来の奥でスマートフォンで情報検索している医師は多い。な
ど意外な事実も記載している。

 あと本書で特徴的なのは、やや下世話な「おカネと恋愛」(第4章)や、「死と老い」(第5章)という深
刻なテーマもしっかりフォローしていることだ。まさに多面的に医療業界の内部事情に触れている。
 
 本書は一人の医師としての見解ではあるが、医療業界の良い面も悪い面もしっかり正面から説明しようとい
う意思が強く感じられる良書だと思う。