如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

政府による個人情報の監視は不可避、問題はどうコントロールするかだ

 

スノーデン 監視大国 日本を語る

2018年8月20日

 題名は「スノーデン監視大国日本を語る」だが、同氏の発言は国谷裕子氏との対談である第一章の34ページ
分(本文は全180ページ)で、残りは外国人専門家2人と日本人弁護士2人の発言である。

 米国政府が開発したネットワークの大規模監視技術(XKEYSCORE)を、日本政府に提供していたという文
書の存在が2017年4月に明らかになった。

 この結果、個人のプライバシー情報が本人の知らないところで勝手に収集・蓄積されており、この問題の意
味と対応策を識者が語るという内容である。

 ちなみに日本政府はこの問題に対して「証拠となる文書の信ぴょう性がない」という立場だが、今年5月の
NHKスペシャルで、米国に対応する日本側の組織は、防衛省情報本部電波部であり、内閣情報調査室も深い関
係にある、と報じている。

 報道によれば、東京の横田米軍基地に新たに設置された通信機器の工場建設及び維持費用も日本政府の「思
いやり予算」から支出されたとのこと。

 政府としては「真実」と言えば説明責任が生じるし、「虚偽」と言えば後に真実だったとなった場合、これ
も嘘をついたと責任を問われるので、「信ぴょう性がない」と答えるしかないのだろうが、NHK以外のマスコ
ミが後追いでも追撃しないことと合わせて、不透明感が否めないのは事実だ。

 情報漏洩については、世間一般にこれまで「どう漏洩を防ぐか」という視点から解決策が検討、講じられて
きたが、本書で識者らは、すでにどうやって漏洩を防ぐかというではなく、漏洩した情報を「どうやってコン
トロールするのか」が問題だとしている。

 アメリカにはインターネットのトラフィックの90%以上が通過する(P139)なか、アメリカ国外に住む外国
人には一切のプライバシー権利が保護されない(P137)状況では、米国以外の国々の市民のプライバシーは米
国に筒抜けと言っていいだろう。

 しかも米国はXKEYSCOREの機能縮小版を関係国に提供しており、この結果各国は自国民のプライバシーを
自由に閲覧、利用可能になっている。

 こうした問題に対してスノーデン氏は2つの方策を提示している。ひとつは、この問題に取り組むNGOを支
援すること、二つ目は完全に安全な通信システムを構築することだ。

 もっとも、どちらも即効性が見込めるとは考えにくい。日本ではこの分野のNGOの存在感は小さいし、完全
な通信システムなどまさに理想に過ぎないだろう。

 一つの可能性として言えるのは、こうしたNGOの活動や完全なシステムを目指すという動きをきっかけに、
「国家のプライバシー侵害を認めない」とする機運が国民・市民の間で強まり、マスコミや政府が無視できない
レベルにまで発展、対応が不可避な問題として認識されれば、XKEYSCOREを含めた監視行為への何らかの対
応策が検討されるかもしれない、ということだ。