如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「バカな投資家」が買う「クズな金融商品」を強烈に糾弾!

 

投資バカ ~50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク

2018年9月8日

 荻原博子氏の投資に関する考え方はほぼ一貫していて、それは「リスクをわきまえずに投資をすべきではな
い」とうこと。本書のタイトルを引き合いに出せば「クズな金融商品を買うのはバカな投資家」だということ
だ。

 全体を通じて著者は、今後も日本のデフレ傾向が続くなかで、毎月分配型投信などクズ投資にしかならない
各種リスク金融商品を紹介し、これらへの投資を控え、現金を積み上げることを推奨している。

 確かに、堅調な米国株には過熱感もあるし、日本株は公的資金の買いで下支えされている側面が強い。新興
国は通貨安の懸念が強く株式相場には逆風、これを受けて欧州株も不透明感が強く、世界全体に株式には手を
出しにくいのは事実。

 一方、各国の金利も新興国は短期的に、先進国も中期的には上昇基調にあり、債券投資には向かない環境だ。

 株式も債券もダメとなれば、投資して損を被るなら、現預金の方が利息も付かないが元本が減らないだけマ
シという考え方は成り立つ。

 という訳で、クズ金融商品への投資回避を含めて総論的には賛成なのだが、部分的には「どうなの?」とい
う記述もあったので、そこは以下に指摘しておきたい。
 
 まず、第二章。投資鉄則2として「キャンペーン商品に飛びつかないこと」とある。これは一般論としては
正しい。金融機関が「売れない、売りにくい」からギフトカードなどの「おまけ」で釣るのである。

 ただしこれには例外もあって、それは変動利付10年国債だ。某証券会社から購入すると数万円のキャッシュ
バックがある。利率は最低でも0.05%と定期預金よりはずっと高いし、変動金利なので今後の金利上昇局面に
も対応できる。しかも国債なのでリスクはほぼゼロ、下手な銀行に預金してペイオフのリスクに晒されるくら
いなら、こっちの方がずっとましだ。ただし購入後一年は解約できないが。

 第三章のテーマは年金と保険。公的年金の受け取り開始を65歳から70歳に先送りすると年金額は42%も増え
るという話。

 これは各種メディアなどで盛んに報じられたこともあり知っている人は多いのだが、実際には受取年金が増
えると各種税金や社会保険料も増えるので、まるまる42%年金が手取りで増額になる訳ではないことは知って
おいた方が良い。

 一方保険について。著者は「ライフスタイルを確認して必要な時期だけ入る」としている。これも基本的に
は正しい。特に入院期間が大きく短くなっている現在、医療保険の見直しは必須だろう。諸般の事情から個人
的に保険の相談を受けることもあるのだが、まっさきに検討するのが、入院一日につき5000円といった医療保
険の解約だ。まず間違いなく契約不要な人がほとんどである。

 ただし個人的に絶対に入っておいた方が良いと考えている保険がある。それは「個人賠償責任保険」だ。こ
れは不注意で他人に損害を与えた場合保障される契約で、最近では自転車に乗っていて人にぶつかり多額の損
害賠償を請求されるという事件が相次いでいるが、これも個人賠償責任保険でカバーされる。

 ちなみに最近女子大生が歩行中の老人に自転車で接触、老人が死亡し、被告の女子大生が有罪判決を受けた
が、実刑にならなかったのは、この保険で被害者への賠償ができたためという(余談だが、ちなみに加害者に
は反省の色はないらしい)。

 ちなみに一人が加入すれば同居する家族全員が保障の対象になる。しかも私の場合は、保険料はたったの月
額120円だ。リスクを考えれば入らない手はないと思うのだが。ただ、自動車の任意保険のオプションでも契
約できるので、まずは任意保険の契約内容を確認することを勧める。

 他にも指摘したいことはあるのだが、これ以上書くと文章が長すぎて、読む方も苦痛だと思うのでここで止
めておきます。

 最後に、将来が心配で「何か投資をしなくては」と焦っている人は、是非本書を一読することをお勧めしま
す。投資するのは読んでからでも遅くありませんから。

【追記】
 同じ「投資バカ」というタイトルでセゾン投信の社長の中野晴啓氏が2015年に出した本があるが、ほぼ趣旨
は同じだ(若干セゾン投信の扱うファンドを擁護する記載はあるが)。