如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「今年こそ貯蓄を」と考えている人への的確なメッセージ

2020年、お金を貯めたいなら「ボーナス払い」をやめるべき理由(ダイヤモンドオンライン)

深野康彦:ファイナンシャルプランナー

 

 昨年のバブル世代を狙い撃ちにした大企業のリストラ対象年齢の低年齢化などを背景に、50代の勤労者は言うまでもなく、30代、40代の人たちにも会社の将来、そして自分の人生設計への不安感の高まりから、「今年こそ貯蓄をしよう」と考えている人は多いだろう。

 

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 1月5日付けのダイヤモンドオンラインに、まさにこういう人々のための記事「2020年、お金を貯めたいなら『ボーナス払い』をやめるべき理由」が掲載された。

 

 タイトルには「ボーマス払い」が使われているが、内容はその他貯蓄環境を取り巻く様々な事例を取り上げており、新年に貯蓄を目指すためのアドバイスが具体的に書かれているのが特徴だ。

 著者はファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏。1989年にFP会社に入社、その後1996年に独立して現在に至るというから、FPとしての経歴は30年近くになる。

 ちなみに私がFPの資格を取ったのは1999年だが、当時から分かりやすい解説が人気の有名なFPだった記憶がある。

 

 記事前半では、今年の賃金に関する注目ポイントを解説している。

 最初のポイントは2020年4月からの「同一労働同一賃金制度」で、著者は「本来、正社員と非正規社員の収入格差をなくすための制度ですが、どうやら非正規社員の収入を上げるのではなく、正社員の収入を下げる方向に動く企業が多いようです」と指摘している。

 

 具体的には「家族手当、住居手当などが廃止になる有力候補」としており、家族持ちや賃貸住まい、住宅ローンを抱える人への影響が大きそうだ。

 特に大企業では、各種福利厚生制度が充実していることが就職の際の人気要因のひとつになっていたが、バブル崩壊・リーマンショック以降、保養所や社員寮などを売却する動きが続いており、この流れに沿えば会社側は「家族手当」「住宅手当」の廃止は当然視野に入れていると思った方がいい。昨年の残業規制に加えて、今年の各種手当の廃止はサラリーマンには堪える。

 

 第二のポイントは、「給与所得控除の上限額が引き下げ」と「基礎控除の引き上げ」。

 年収850万円以上の所得控除が220万円から195万円に引き下げられる訳だが、ただし、税務署の平成30年分所得税の改正のあらましによれば「年齢23歳未満の扶養親族がいる人」などには新たに「所得金額調整控除」が設定されるので、対象の家族がいる世帯には多少の軽減措置もある。

 

 もっとも影響は基礎控除の方が大きいかもしれない。記事にもあるが、財務省の平成30年度税制改正の個人所得課税の(3)公的年金等控除の適正化によれば、注釈に小さく下図のように記載がある。

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財務省の資料から抜粋

 現在は年金支給開始時期の調整期間中で、65歳未満でも年金を受け取っている人がいるが、より影響が大きいのは65歳支給になる現役世代だろう。

 控除金額が70万円から60万円へと年額10万円の引き下げというのは、率にすれば15%である。これまでは月額5万8000円までの年金には課税されなかったが、今年からはこの水準が5万円ちょうどに引き下げられることになる。

 個人年金や企業年金などで60歳からの支給を予定していた人には、負担増は避けられないかもしれない

 

 記事では後半で、「年収に占めるボーナスの割合は、従業員数5000人以上では約28%に達しています」と指摘、業績に左右されるボーナスへの家計依存度を低くして、固定資産税や保険料などの支払いを毎月積み立てることを推奨している。

 これについては具体的には、例えば生命保険料や自動車任意保険料は「年払い」の方が「月払い」より安いので、支払いを「月払い」にするのではなく、「年払い」のための資金を自分で毎月積み立てるという意味だということを確認したい。

 

 また深野氏お得意の「節約」分野の指摘も改めて参考にしたい。ポイントは通信費と生命保険。

 Docomoなど大手キャリアから格安キャリア(MVMO)に乗り換える節約法ははすでに広く知られているが、実践している人はまだ少ない。

 MM総研の調査「国内MVNO市場規模の推移(2019年9月末)」によれば、2019年9月末の契約数比率は7.8%に留まっている。ちなみに私はY-mobileのガラケーを使っているが、「いつでもどこへもかけ放題」で支払いは毎月1000円ちょっとである。この辺りのアドバイスは昨年7月の当ブログ「シニアには「ガラケー」「タブレット」の2台持ちがオススメ」でも書いているので、参照されたい。

 

 生命保険については、予定利率が最低水準にある今、長期の終身保険などに入るのは問題外。どうしても病気や事故の補償が不安なら「こくみん共済」など各種共済でカバーするか、若い世帯なら掛け捨ての死亡保障の定額保険が最も合理的だ。

 記事にもあるが、見かけの金利に惑わされがちな「外貨建て保険」などは、見方を変えれば長期で「外為」の変動に賭けるようなようなものである。もしも外国為替で運用したいならFXでレバレッジを1倍に設定して投資した方が手数料的にはまだマシだ。投資先としては決してお薦めはしないが。

 

 ということで、新年早々「今年こそ資産を増やそう」という考えている人には、まず足元の所得の動向と節約の基本を押さえるという意味で、タイミングのいい記事だと思う。