如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

都内の土地持ちだけが「リア充」ではない

日本人よ、真の「リア充」とは土地持ちの階級だ(東洋経済オンライン)

田宮 寛之 : 東洋経済 記者

 

 「リア充」というキーワードが一般化して久しいが、「異性にモテるイケメン」「巨額の年収」「外資エリート」といったイメージを覆す意見を持つ作家・古谷経衡氏のインタビュー記事「日本人よ、真の『リア充』とは土地持ちの階級だ」が8月6日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 詳細は記事を読んでいただくとして、感想を言えば「日本のリア充の隠されていた一面を明らかにしたのは事実だが、ちょっとした疑問と同意できる内容が混在している記事」だった。

 

 記事の前半の趣旨は簡単に言えば、「真のリア充は大都市圏の土地持ちとその子孫」という主張。
確かに土地持ち特に都心3区や6区で50坪以上の土地を保有する人々は、記事にあるように億円単位の資産を持つわけで、マンションを建てて賃貸収入を得ることで収入面では一生安泰だろう。


 ただ記事にある「9割以上の人が一円も相続税を払っていない」という点についてはやや疑問もある。
 というのも、相続税の基礎控除額は、2015年から従来の「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と、大きく引き下げられており、都内にある程度の一戸建てを所有していればまず相続税からは逃れられないはずだからだ。私の知らない相続税対策(生前贈与など)が存在するのかもしれないが。

 

 一方、記事の後半部分では「都会で土地を所有し暮らすにはどうすれば良いか」について触れている。


 具体的には、東京に通勤通学では利便性が変わらないのに「イメージが悪い」という理由で不動産価格が安い「埼玉(川口、草加、八潮、三郷)と千葉(松戸)の5市を「住宅の取得しやすい扇状地」と命名している。

 確かに、人気のある武蔵野市など東京西部に比べて、都心への利便性の割には先の5市の物件価格は割安だと思うし、住環境もさほど悪くはないだろう(民度はやや気になるが)。

 

 経済評論家の森永卓郎氏が「年金削減時代に備え、月13万円生活に切り替えろ」などで最近言っているように、都心部から30~50kmほどの都会と田舎の中間地である「とかいなか」(都会と田舎の合成語)がこれに該当するだろう。
 同氏によれば家賃は3分の1、スーパーの物価も劇的に下がるらしい。収入が少ない家庭には生活条件は悪くない。

 話を戻すと、記事では「土地は第四世代や第五世代まで相続されるので固着化した世襲(筆者注:リア充な生活基盤)は何百年も続く可能性がある、と結論付けている。

 

 まあ莫大な不動産を相続し続ける資産家一族には当てはまるだろうが、そもそもそのような「一般人の視界にも入らないようなレベルのリア充」を、一般的な収入の自分の人生と比較すること自体が、将来無意味になるのではないかと個人的には思っている。

 

 記事にもあるが、手持ちの資産で買える範囲の物件を「とかいなか」で買って、家族とのんびりした生活を暮らすことも「リア充」の一つの在り方として認知されるのではないか。

 通勤に関しても最近は「在宅勤務」「サテライトオフィス」制度が充実してきているし、60歳で引退しても仮に90歳まで生きたら、残りの人生は30年もある。息苦しい都心よりも、のびのびとした郊外での老後を選択する人もいるだろう。もちろん病院、商業店舗、介護などの施設が整備されていることが条件だが。

  

 今後、さらに収入格差が広がり、階級が固定化していく可能性が高いとはいえ、絶対数が増える「平均所得以下」の彼らをターゲットにした商品やサービスは拡充していくはずだ。大幅な増加が見込まれる移民(正確には技能実習制度)もその対象に含まれるだろう。

 将来は「昔、リア充なんて言葉があったね」という時代が来るかもしれない。