如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

前作が「国家の年表」なら、本作は「個人の予定表」。逃げ切り世代にも責任アリ

 

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること

2018年5月16日

 前作「未来の年表」が国家・政府の未来図だとすると、本書は「個人の予定表」といったところだろうか。

 もともとベースとなる「未来」のデータが同じなので、内容がやや二番煎じになるのはやむを得ないところ
だろう。

 第1部では、人口減少に伴う事象を「個人の生活」レベルに特化して解説しているが、戸建てやマンション
の幽霊屋敷化や老齢化による自宅でのケガ、低所得の高齢者の増加などは、他の高齢化問題を扱った書籍でも
触れられており、目新しさはなかった。もう少しテーマの掘り下げ方にひと工夫あればよかったのだが。

 新たな発見と思ったのは、高齢者の増加で、「スーパーなど小売店の店員の対応がより複雑化」「バスや電
車の乗降に時間がかかりダイヤが乱れる」「地方在住の親が亡くなると遺産の資金移動が起きて地方金融機関
が消滅」などだ。

 確かに現時点でも、お年寄りがスーパーのレジで小銭を財布から取り出して精算に時間がかかる場面に直面
すると、「早く無人レジが普及すればいいのに」と思うし、都会に出て就職、結婚、住居を構えた子供たちが、
地元の田舎にしか店舗がない地方銀行や信用金庫などに受け継いだ資産をそのまま置いておくとは考えにくい。

 続く第2部では、具体的に個人や企業ができる対応策に言及している。ただ、こちらも「働けるうちは働く」
「年金の受給年齢を繰り下げる」「テレワークの拡充」など、よく聞く内容が中心だった。

 そのなかで、なるほどと思ったのは、高齢者の仕事について。筆者は、会社が新人などに任せている雑務に
近いような仕事は再雇用の高齢者に移管して、若い人にはそれに見合った仕事を任せることを提案している。

 確かに新人の即戦力化が求められつつあるとはいえ、「雑務は若い世代の仕事」という旧態依然とした会社
はまだ多いだろうし、そういった細かい実務を経験してきた高齢者の方が「社内手続きの要領や勝手」を知っ
ていて効率的な面もあるだろう。少なくとも、仕事らしい仕事もなく机に張り付かせて、肩身の狭い思いをさ
せるよりはマシだ。

 最後に本書では、年配者に対して「自分たちは『逃げ切り世代』だから関係ない」は許されないと指摘して
いる。

 その理由の一つとして1990年の出生率「1.57」ショックを挙げている。当時バブル経済に浮かれて人口減に
対して真剣な対策を講じなかった結果が今の状況を招いたとしており、若者が減れば、警察、消防などの社会
的な基盤も揺らぎ、低所得の無・低年金受給者を生活保護でサポートすることになれば、「逃げ切り世代」の
税負担増加は免れないとの分析だ。

 私自身、筆者とはほぼ同世代で、ある意味「逃げ切れる」と思っていた節もあったのだが、その認識は「ち
ょっと甘い」かもしれないと感じている。かと言ってこの年ではできることは限られるのだが。

【追記】どうも筆者は本書に続く第三弾の「未来の年表」を企画しているらしい。ただ、第二弾の本書がこの
内容だと、よほど目新しいデータや切り口がないと第三弾の売れ行きは「厳しい」ような気がする。