今週は夏休みで週刊誌は軒並み先週の合併号のため発売はない。そこで今期は週刊誌を含めた「雑誌」に関わるちょっとした話題を提供したい。
日本雑誌協会は5月に小冊子「これで雑誌が売れる!!」の2019年度版を発行、一般書店向けに配布したほか、協会のWebサイトからもダウンロード可能としている(無料)。
よく言われているように雑誌の販売落ち込みは著しい。全国出版協会の日本の出版統計によると、月刊誌の販売額は1995年に1兆円を超えていたが、2017年は5000億円台と半減、週刊誌も同期間に4000億円台から1000億円台半ばまで激減している(グラフからの読み取りなので詳細な数値は不明)。
グラフの右肩下がりの推移からは、長期低迷傾向に歯止めがかかる兆しは見られない。
そこで、雑誌販売を盛り返そう、という意気込みで企画・作成されたのが今回紹介する「これで雑誌が売れる!!」である。
ただこの全63ページの小冊子が狙っているのは、「雑誌の売り上げ増」というよりは正確には「書店での雑誌の売り上げ増」である。
Amazonなどでのネット販売や電子書籍版を対象にはしていない、というか全体を通じた感想としては「どうやってネット販売から実店舗に客を呼び戻すか」がテーマになっている。
ということで、内容は「売れる雑誌をどうやって作るか」ではなく、「既存の雑誌をどうやって書店で売るか」だ。
構成は、メインは「売り場づくり」「事前準備」「定期購読」「ジャンル別・売り伸ばしのテクニック」の4章立てで個別書店の取り組み(131項目もある)を紹介、また個性的な取り組みで売り上げを維持している書店2店へのインタビュー記事も掲載されている。
詳細は実際に読んで頂くとして、書店の取り組みで特徴的だったのは、ネット通販ではできない「実店舗ならではのアピールに取り組んでいる」ことだった。
具体的には、「付録付きの雑誌は基本 1 冊は見本として常に内容が確認できるようにしています。女性誌に関しては付録を開封して実物が手に取れるように売り場に展示しています」(p9)といった、ネットでは不可能な実物を確認するという手法だ。
また、「入り口から店の中心へと向かうメイン通路に女性誌棚を設置し、男性誌は壁側の棚に集中させています。これはメイン客層である女性達に、いかに店の中心に足を運んでいただけるかを考えた結果です」(p13)のように、店舗内での商品配置を工夫して、顧客の動線をコントロールするという対策を講じている店舗もあった。
一方、書店独自の判断で、「特集で売れる雑誌」と「自分の店のカラーにしたい雑誌」を見分ける。自分の店のカラーにしたい雑誌(月刊誌なら 2 週間展示で 24 銘柄)は「最良の場所」から動かさない。特集が面白そうな雑誌は必ず「その隣」に置きPOPを立てる(p14)、という、オリジナルな展示を売り物にしている書店もあった。
全体を通じた感想を言えば、店舗の規模とは関係なく、個性的かつ魅力的な展示、品ぞろえをしている書店は今後も生き残るように感じた。
例えると、「特に用事はないのだけれど、何となく気になってつい入ってしまう」雰囲気のある店は、顧客が途切れず、新たな発見もあるので、気になった雑誌を買うという行為が日常活動の一部に溶け込んでいくだろう。
逆に言えば、雑誌を発売日順に並べて平積みし、あとは定期購読者の来店をあてにするような書店は淘汰される可能性が高い。
というのも、敵対関係にあるネット書店の代表格Amazonを例にとれば、まず品ぞろえでは到底勝ち目がないうえ、定価販売の書店に対して、Amazonは2冊以上なら4%、3冊以上なら8%、10冊なら10%という「まとめ買い」割引も実施している。
加えて、プライム会員なら配送も無料となれば、買いたい本が決まっている顧客層では最初から勝負にすらならないのは明らかだ。
「これで雑誌が売れる!!」は、書店向けに有用なアドバイスを多数紹介していると思うが、書店の将来像を考えると、仕入れる雑誌自体には何の区別はないのだから、あとは「書店に行くという行為を生活の流れのなかに組み込めるか」が生き残りの決め手だと思う。
これは素人の発想に過ぎないのだが、時代は映画や音楽などを中心に「サブスクリプション(定額制」」の流れ。書店も店内に椅子を用意した専用コーナーを設けて、そこに配置した雑誌は「月額制で読み放題」みたいな試みもアリかと思うのだが。
確かにdマガジンなどが、格安で数十種類の雑誌を読み放題にしている電子版のサブスクリプションビジネスを展開、好評を集めているが、雑誌側の都合もあって、すべての記事が読める訳ではない。
個人的に、専用コーナーで雑誌を読んで気になったテーマの「単行本や専門書をついでに買ってくれるかも」というのは、甘い期待だろうか。