如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「所有」で人間の欲求は満たされるとは限らない

堀江貴文「所有欲が人を幸せにすることはない」(東洋経済オンライン) 

堀江 貴文 : 実業家

 

 モノを「所有」することで、人が幸せになることはない――と主張する実業家・堀江貴文氏の記事「堀江貴文『所有欲が人を幸せにすることはない』」が9月30日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では、「所有欲は、状況によれば行動のモチベーションにもなるだろう。でも所有欲が、人を幸せにすることはない。まず、ない。あるとしたら一瞬だ」とし、モノを「所有」することで得られる喜びは、努力の結果得られる報酬などの「獲得」の喜びと区別すべきだと指摘している。

 

 堀江氏の言いたいことは理解できる。「所有」はおカネで解決できる場合がほとんどだからだ。しかも所有することで、管理、維持、盗難などへの負担やリスクも発生する。

 

 かく言う私も、これまで中学生時代の映画のチラシに始まり、家庭用ゲーム機、フイルムカメラなどを買い集め、現在ではやや古いPCゲームの「所有」におカネをかけている。家計に影響するほどの多額は投じていないが。

 

 で、その過去に収集した所有物が今どうなっているかと言うと、多くは棚や物置で眠っているのが現状だ。

 

 個人的には、引退後の余裕のある時間を生かしてじっくり取り組むためという「理由」はあるのだが、数年後に迫った定年後に、昔のゲーム機やカメラで老後の長い期間楽しめるかどうかは疑問になりつつある。

 ゲーム機は操作性も含めたレトロな感覚を実感できるかもしれないが新しいソフトは出ない。フイルムカメラはそもそも、将来までフイルムが供給されているか、現像所が存在するのかも怪しい。使えないとなると、所有する価値は一段と低下する。(富士フイルムは現時点ではフイルム供給を続けるとしているが)。

 

 こう考えると、堀江氏の言う「所有の喜びは一瞬」というのは説得力がある。いざとなれば必要な時に、「借りる」「買う」は別にして、おカネで済ませるのが合理的だからだ。

 

 ただあえて反論するとすれば2点。一つ目は「所有」というか「コレクション」を生きがいにして、それに満足している人も少なからず存在するということ。もう一つは、「所有」と「利用価値」が一致している場合だ。

 

 前者の場合、美術品や骨董品などが多いと思うが、これらに囲まれて幸せな老人を私は複数知っている。彼らは「所有」の喜びを心底から感じているので、他人がとやかく言うべきことではない。彼らの趣味には「合理性」「効率性」という言葉はあまり意味はない。

 もともと人間は、合理性だけで行動するわけではないので、彼らの「所有」に意見を挟む気はない。本人が納得しているならば問題はない。

 

 後者の場合は、高級な乗用車が代表例だろうか。仕事で知り合いになった60代の男性なのだが、若いころからクルマが趣味で、スポーツカーを含めて相当の数を乗り継いできたらしい。今乗っているのは高級セダン。

 仕事は、呉服の個人の得意先向けの販売。買ってくれる顧客はほぼ決まっているうえ、新たな顧客も紹介がほとんどだという。

 

 商品を見たいと連絡があれば、顧客先に呉服を積んで向かう訳だが、先方の駐車場に止める際に、「貧相なクルマでは顧客の顔を立てられず申し訳ない」ことになるらしい。

 つまり呉服を定期的に購入するような富裕層には、その社会的な立場に見合った高級車で乗り付ける必要がある訳だ。

 

 このケースでは、高級車が、自分の趣味の面で充実感を満たしたうえで、仕事上でも有効利用されているので、「所有」の価値は高い

 この手法は一部の不動産ブローカーなどでも利用されいるらしい。こちらはどちらかと言えば「見掛け倒し」「はったり」の意味合いが強そうだが。

 

 聞くところによれば、堀江氏は「自宅」も所有しておらず、「ホテル」住まいらしい。確かにホテルなら、掃除などの家事の手間は減るし、食事は外食で済ませれば問題ない。今は独身のはずだから、家族への時間的な配慮も不要。

 「所有」しない主義だから、衣料関係なども最小限のはずで、ホテルの収納で十分なのだろう。

 

 先見性のある堀江氏のことだから、近著「捨て本」を読んで、今後「所有」から距離を置く人は増えるだろう。少し前から世間でキーワードになっている「断捨離」もこの考え方とほぼ同じはずだ。

 

 ただ個人的には、「所有」の非合理性に同意はするものの、堀江氏の切手のようにすべて処分するまでの踏ん切りはまだ付かない。

 こうした「こだわり」が結果として、あまり良い結果にならないのは比較的容易に想像できるのだが。

記事全体の8割強を「スライド」が占めるという試み――中身も充実

日高屋・幸楽苑「5分でわかる」ライバル企業比較(東洋経済オンライン)

武内 俊介 : リベロ・コンサルティング合同会社 代表、税理士

 

 昨日のブログで、4コマ漫画を多用した「じゅえき 太郎」氏の記事「つまらなさ気絶レベル!『酔った上司』の自慢話」を取り上げ、その分かりやすさを評価するブログを書いたが、今日は内容の8割以上を「画像」(正確にはパワーポイントのスライド)が占めるというさらに新たな試みの記事「日高屋・幸楽苑『5分でわかる』ライバル企業比較」が、9月28日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 ちなみに、この記事を執筆したリベロ・コンサルティング代表の武内俊介氏だが、会社Webサイトによれば、クレジット会社、会計事務所などの勤務を経て、税理士資格を取得し、その後独立して現在会社を2018年12月に立ち上げている。

 ちなみに「過去の記事一覧」はPCでアクセス上の問題があって確認が取れなかったが、東洋経済オンラインへの記事掲載は初デビューと思われる。

 

 一発目という事情もあって、既存の記事のスタイルとは意識的に大きく変えて「読ませる」記事から「見せる(魅せる)」画像に思いっきり振ったことは、意外性もあり評価したい。

 ちなみに本記事の文章は1ページ目の半分以下、文字数にして418字、原稿用紙1枚程度だ(スライドの見出しは除く)。

 

 さて、肝心の中身だが、まずは両社の「売り上げ」「店舗数」が似たような状況と言う前振りのあとに、日高屋の特徴(首都圏、駅前への積極展開など)を、その後対照的な幸楽苑の特徴(東日本のロードサイド中心など)を解説している。

 最後に、10年間で大きく業績を伸ばした日高屋と、伸び悩んだ幸楽苑の違いを明示したうえで、両社の今後の方向性を分析している。

 

 全体のトーンとしては、日高屋の「駅前屋台」戦略が奏功して売り上げでは追い抜いたが、幸楽苑も業態転換などでここ一年客数を大きく回復させており、「本当の勝負はこれから」という結論だ。

 

 個人的な見解を言えば、当面は日高屋の勢いが続くとみる。その理由となるキーワードは「アルコール」だ。

 「ちょい飲み」「せんべろ」など低価格で飲んで酔える手軽な居酒屋やチェーン店が人気を集めている傾向にはまだ陰りは見られない。しかも駅前立地ということで、平日の会社帰りや休日の暇な時間にちょっと来てさっと飲める気軽な飲み屋として需要は続きそうだ。

 

 参考までに日高屋ではWebsサイトの「ちょいのみ日高」で「中華そば+餃子+ビール」で合計930円(税込み)という、まさに「千円でお釣りがくる!」ことをアピールしている。 

 しかもアルコール飲料は料理に比べて原価率が低いので、利益の向上にもつながる。

 

 ピザやドリアなどの低価格帯を売り物にするイタリアンレストラン「サイゼリア」が、郊外のロードサイド店舗から駅チカに店舗展開を移行させているのも、得意とするワインの売り上げ向上を狙っているのは間違いない。

 

 一方、幸楽苑だが、主力のロードサイド店舗ではクルマでの来店が基本なので「お父さんのとりあえずビール」など酒類の売り上げが期待できない

 また「いきなり!ステーキ」に代表される業態転換も一時話題を集めたが、競合他社の参入も相次ぎ競争が激しいうえ、今年に入って海外進出したニューヨーク店舗の半数以上を閉めるなど、勢いに陰りも見られる。

 

 スライドによれば、一期でV字回復をしたとは言え、営業利益は4.0%と日高屋の11.3%の半分以下の水準に留まる。

 主力のロードサイド店舗を、その特徴を生かした別の外食業態に転換させるのか、駅前などに店舗の立地を移行していくのか、もしくは他業種(コンビニ、ホームセンターや書店など)と組んで、複合店舗を目指すのか――。

 

 主力の「柱」が明確に定まっている日高屋に対して、これからも試行錯誤が続きそうな幸楽苑がどこまで踏ん張れるかに注目したい。

 

 ちなみに私自身どちらの中華そばも食べたことはあるが、味音痴なせいか明確にどちらがうまいとは断言できない。普段は値段はやや高いが、地元で個人が経営する自家製麺のラーメン専門店で食べている。

上司の「飲み会強制」には、事前対策が有効

つまらなさ気絶レベル!「酔った上司」の自慢話(東洋経済オンライン)

じゅえき 太郎 : イラストレーター、画家、漫画家

 

 サラリーマンの悲哀を、イラストを使って分かりやすく説明する画家・漫画家「じゅえき太郎」氏の第二弾の記事「つまらなさ気絶レベル!『酔った上司』の自慢話」が9月27日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 前回「悲哀!連休気分をぶち壊す『上司からの電話』」では、休日の過ごし方や上司からの仕事の電話に悩まされるエピソードだったが、今回のテーマは「飲み会」。このキーワードだけで大体内容は想像できるのだが、4ページ目を除く全ページに掲載された4コマ漫画が実にリアリティがあって面白い。

 

 過去のすべての東洋経済オンラインの記事を読んだ訳ではないが、ビジネス経済誌のWeb版でここまでイラスト(漫画)を大きく扱った記事はないのではなかろうか。

 他のビジネス誌系Webと比較してやや軟派な記事が多い東洋経済オンラインにおいても、異色の記事だと思うが、個人的にはこういう風潮の記事もアクセントになって面白いと思う。

 

 さて、今回のテーマ「飲み会」で、取り上げているのは3つ。

 一つ目は「無礼講」。記事では、「この世に『無礼講』という言葉は存在しません」との言葉で始まっているが、これはサラリーマンの世界では30年以上前から存在している慣例だが、いまだに存在するのはともかく、まだ勘違いしている社員がいることには驚いた。 

 そもそもこの無礼講。表面上は「宴会の席では多少の無礼は許される」という意味だが、これを言葉通りに受け止める思考回路が理解できない。無礼講というのは宴会が始まる前に上司が発言する言葉だが、その真意は「酒の席で日ごろ聞けない社員の本音を引き出す」ことであり、また「酒に飲まれる人間かどうかを見極める」機会として捉えることにある。

 そもそも「パワハラ」だ「セクハラ」だと騒がれるこのご時世に、言葉通りの「無礼講」が通用するという認識が甘すぎる。

 

 一方、この段落で感じたのは「作者の会社への対応の変化」。前回は、休日に上司からかかって電話に対して、「着信を無視しても『なんの電話だったんだろう』『なんかやっちゃったかなという不安が休日の邪魔をします」という弱気な姿勢だったが、今回は「そもそも飲み会には行きたくない、という人は正直に断りましょう。無理して飲み会に参加する必要はありません」と毅然とした態度を推奨している。

 本人の仕事に対する考え方が変化したのか不明だが、仕事とプライベートを切り分ける姿勢は重要だ。

 

 2つ目は「上司の自慢話」。これも私自身経験があるが、最初は参考になると思って聞いているのだが、まず間違いなく飲み会のたびに同じ話を聞かされることになる。要するに他に聞いてくれる人がいないから部下に自慢する訳だが、こういう上司に限って日頃仕事で目立った実績を上げられないので、過去の栄光(自己評価だが)にすがっていることが多い。

 まあ、自慢話をする上司も同じようにさらに上の上司から自慢話を聞かされてきたであろうから、同情の余地がないわけではないが、付き合わされる側の立場も考えてほしいものである。

 

 3つ目が「定時退社直前に仕事の要請」。これも要領の悪い上司にありがちな事象である。そもそも仕事を請け負った段階で、どの程度の作業量で、部下の手伝いが必要かどうかを把握すべきなのだが、段取りの悪さもあって結局時間切れで「部下に頼む」という迷惑な事態を引き起こしている。しかも救いようがないのは、本人にはその自覚がないことだ。

 

 以上、3つの「上司との飲み会あるある話」だったが、回避する方法として有効なのは「事前対策」である。

 基本的にこの手の上司は「自分の都合」でしか行動しない。「部下への配慮」という思考は持ち合わせていないものと心得るべきである。

 したがって、1つ目と2つ目のケースでは、「今日は学生時代の友人と会うので」とか「家族や親戚と大事な話があるので」などと言っておけば、まず強引には誘ってこない。特に家族関係を持ち出せば、飲み会に誘うことで問題がこじれたときに恨みを買う可能性を恐れて、引っ込むことが多い。ただしあまり多用するとバレるのでケースバイケースで。

 

 3については、就業時間内できれば早い時間帯に「今日は以前から約束していた大事な用事がありますので定時で帰ります」と宣言しておくのが有効だ。小細工としては、夕方近くになったら「仕事を早く切り上げたいオーラ」を振りまいておくとさらに効果的だ。

 

 以上、以前に比べれば無理に飲み会に誘く上司は減ったと思うが、記事からはまだ生息していることが分かる。繰り返すようだが、有効なのは先手を打つ「事前対策」である。

「出来立て弁当」は伸び悩むコンビニの救世主になるか

コンビニ「出来たて弁当」は消費増税後に人気商品として広がるか(ダイヤモンド・オンライン)

森山真二:流通ジャーナリスト

 

 店内で炊いたご飯に、フライヤーなどで調理したおかずを付け合わせて「出来立て弁当」として提供する新しいスタイルの弁当に対して、コンビニ各社の対応が明確に分かれていることを解説する記事「コンビニ『出来たて弁当』は消費増税後に人気商品として広がるか」が9月26日付けのダイヤモンド・オンラインに掲載された。

 

 コンビニ弁当と言えば、おにぎりなどが置いてある棚の横に、麺類などと並べて置かれていて、レジで電子レンジで温めてもらうという認識だったのだが、最近では、差別化を図り、集客力を高めるための商品として、「出来立て」をウリにするらしい。

 

 確かに記事にもあるが、コンビニのレジ近くには「唐揚げ」「コロッケ」など店内で揚げた総菜を置いているし、あとは炊飯器を用意して、弁当の容器に詰め込めば「出来上がり」となるのではないかとは思う。

 

 パックで密閉された既存の弁当も味は悪くない。ただ、細かい話で恐縮だが、個人的には付け合わせの「漬物」まで電子レンジで一緒に温まってしまうのは何とかならないのかと感じていた。

 これが、ご飯もおかずも出来立てに近い状態で提供されて、漬物もそのままの温度であれば、例えば同じ「鳥の唐揚げ弁当」なら、出来立てを選択する顧客の方が多いと思う。

 

 この出来立て弁当に最も力が入っているのが、ローソンだ。2018年2月末時点で国内14,659店舗のうち、6000店に出来立て弁当「まとかど厨房」を展開済だという。

 ちなみに同社のWebサイトを見ると、鳥の唐揚げ系では、既存のタイプでは「おろし竜田弁当」が税込み498円、一方「まとかど厨房」では「鶏から弁当(おろしポン酢)」が税込み500円でほぼ同じ価格。

 

 9月には新商品も投入するなど、「弁当の出来立て化」路線はさらに強化される見通しだ。

 Webサイトを一見したところ全く同じ商品は見当たらないし、記事によれば「既存の常温やチルド弁当と競争しない」そうなので、商品同士の「食い合い」は回避できていると思われる。

 

 一方、セブンイレブンは「出来立て弁当」を扱っていない。過去にはとんかつ弁当の販売を試験的に実施たこともあったようだが、現時点ではチルドや冷凍食品に傾注しているようだ。

 

 記事では、「セブンは、出来たて弁当は、炊飯、盛り付けなどの作業が発生する。この作業に対しそれほど売り上げ、利益が上がらないと評価している」と解説している。

 

 これはこれで説得力のある説明ではあるが、問題の本質は、加盟店からの24時間営業問題でのトラブルなど、現状でも人手不足で運営維持が厳しい加盟店に、これ以上の作業負担を要請できるかという、現実が大きな要因になっているはずだ。

 

 確かに強引に出来立て弁当の導入を決めて、さらに店員の作業量が増大すれば、その不満が爆発して最悪の場合、異物混入などの「バイトテロ」が起きないとも限らない。

 設備投資やリスクを伴う新商品よりも、オリジナルブランドで商品開発力もある冷凍食品の充実を図るというのは、ひとつの経営判断だ。

 

 持ち帰り弁当市場では、「ほっともっと」を展開するプレナスが販売不振から直営店190店の閉鎖を発表、利益の見込める加盟店化を目指すなど、競争は激しさを増している。

 以前から店内調理の弁当を手掛けていたスーパーに加え、最近ではドラッグストアも参入している。「中食」市場の拡大が背景にあるのは間違いない。

 

 今後、10月以降持ち帰りの弁当には軽減税率が適用されることも追い風となり、コンビニでの「出来立て弁当」の売り上げ増加は確実だろう。

 ただ、懸念されるのは、先にも書いたが「弁当作り」にかかる作業コストをどこまで抑えられるかだ。 

 

 商品が人気化すれば、品ぞろえ充実の声が高まるのは必至、おかずの種類を増やしていけば必ず店員の作業負担は高まる。

 しかも弁当がもっとも売れるのは、お昼時に集中しているはず。ただでさえ長いレジ待ちが発生しているのに、さらに待ち時間が増えるのを顧客が耐えられるだろうか。

 

 個人的には、昼食の弁当にあまり「こだわり」はないので、空いているコンビニで適当に済ませることが増えそうな気がしている。

「仕事」を部下に任せるのも上司の「仕事」

「自分でやりたい中毒」から今度こそ抜ける方法(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 自分が通常の業務をこなしながら、部下のマネジメントも兼任するプレイングマネジャーの仕事の進め方をアドバイスする記事「『自分でやりたい中毒』から今度こそ抜ける方法」が9月25日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 書かれている内容はすべて「なるほど」と納得できる上に、具体的で参考になる。

その「心得」3か条を紹介すると、

  1. 「自分でやってしまいたい」を捨てる
  2. 「今」ではなく「1年後」に視点を置く
  3. 業務量を3割減らす

以上の3点である。

 

 1については私自身も含めて、経験済である。「後輩を育てなくえは」という自覚はあるのだが、現実には仕事の締め切りはあるし、顧客に迷惑はかけられない、今回は自分で処理しておくか、となって、結局これが毎回続くのである。

 「何か問題が発生したら自分の責任」というプレッシャーもあって、その場は問題なく進行するのだが、「マネジャー」としての仕事は放棄していることになる。

 

 「部下に任せられない」という気持ちは理解できるが、よくよく考えてみれば、自分もそのような環境のなかで上司に「仕事を任されてきた」ということを思い出してほしい。

 失敗すれば当然怒られるが、失敗を体験するからこそ、次は失敗しないように対応策を考え、成長していくのが若手のあるべき姿だろう。

 その機会すら与えられないのでは、仕事で成長するのを期待する方に無理がある。

 

 2については、1の延長線で考えるべきだろう。部下の失敗を恐れていては何も進展しない。仕事を任せた当初は、「尻ぬぐい」の覚悟を決めて、自分の仕事の負荷が増えることは「長い目で見れば必要不可欠なこと」と割り切るしかない。

 ただ、仕事を任された若手にとっては、仕事の内容は初めてだし、方策も手さぐり状態、それまでの仕事も抱えているので、そのままではオーバーワークになって「潰れて」しまうことにもつながりかねない。

 

 そこで有効打になるのが3の「業務量を減らす」である。

 担当する仕事は増えたのに、人間のこなせる仕事量はすぐには変わらない。となれば、過去からの慣例で続けていた「会議」や「朝礼」などを見直すというのは有効だ。

 ただ現実に「会議」や「朝礼」を減らそうとすると、仕切っていた上司などから抵抗勢力が出てくるのは必至。社内事情を考えると、直属の上司(部長など)としては、ライバル部署と比較されて「会議」や「朝礼」を廃止して、「楽」をしている、させているのではないかと、評価されることを恐れる可能性が高い。

 

 ここは手間も時間もかかるが、まずは上司に「改革が効率化につながり、その先には事業の進展が見込める」ことを説得するのが先決だろう。上司の顔色をうかがう「ヒラメ」と言われようが、とりあえず効率化を実現し、効果が目に見えてきたら上司の評価も変わってくるはずだ。

 

 ここで個人的なアドバイスとしては、若手への業務移管に伴う、無駄な会議などを減らしたことの成果を「上司の実績」として、譲ってしまうことを勧めたい

 仕事に携わった若手たちは、実際に誰が貢献したかはわかっているし、上司は自分の顔が立つことで満足する。次の仕事での新しい企画や提案には、抵抗もせずに後押ししてくれる可能性もある。

 

 個人の実力が評価される時代になったとはいえ、一部の専門職を除けば、しょせん仕事はチームワークで進めることが多いはずだ。

 現場の仕事と若手のマネジメントの両立ぐらいで悩み、苦しんでいるようでは、その先にあるよりレベルの高いマネジメントなどが勤まるはずがない。

 

 これはある大企業の役員から聞いたのだが、ある程度の立場になったら「自分で仕事をするのではなく、いかにして人に仕事をさせるかが重要」と言っていた。

 今思い返すと「名言」だと思う。言われた当時は自分も、仕事を若手に任すよりも自分でこなす方が効率的だと思っていたが、もっと早く気づけばよかったと後悔している。

転職成功のカギは「スキルアップ志向」だった

転職で給料を上げる人と下げる人の決定的な差(東洋経済オンライン)

宇都宮 徹 : 東洋経済 記者

 

 給料のアップは役職とともにサラリーマンの目標ひとつだが、9月24日付けの東洋経済オンラインでは、雑誌・週刊東洋経済の特集「給料、最新序列」のなかから、転職に関する部分を抜粋して「転職で給料を上げる人と下げる人の決定的な差」と題して掲載した。

 

 記事では、転職者数が8年連続で増加、10年ぶりの高水準となったことや、転職で給与が上がった人の割合も過去最高を更新、一方で、給料が減少した人の割合も増えており、二極化が進んでいると解説している。

 

 給料を上げる傾向パターンとして紹介しているのは2つ。

 ひとつは、「業種」として給料が低い業界から業界に転じること。

 ただ記事では、給料が高い業種として「総合商社」「コンサルティング」などを挙げる一方で、低い業種として「介護」「百貨店」などを紹介している。

 

 それぞれの業界を見れば、高い方には「交渉力」「語学力」などが高いレベルで求められるのに対して、低い方には基本的に必要とされる「スキル」は低いと言える。

 実際問題として、介護でも百貨店でも高い専門性(特殊な技能や経験)がなければ、他業界で評価されることは困難だろう。つまりごく一般的な社員が、給与の高い業界に転職するというのは現実的ではない。

 

 もうひとつの方法が「スキルアップ」だ。

 記事では、「広告営業職だったが顧客企業のブランディングに深く関与」していた実績をアピールして未経験の広報部門への転職に成功した人や、逆に「年収アップには拘らなかったが、自分の個性を生かせる職場を限定して」営業から人事部門に転職、給与も約10%アップした具体例を紹介している。

 

 確かに、他業界で必要とされる人材と評価されるには、「その会社には存在しないレベルの営業テクニックや実績を持つ」という社内で即戦力を期待されるケースが多いとは思う。

 ただ、会社側が「経営改革に伴う組織や人事制度の一新」や「新規事業への参入に伴う経験者の確保」を意図している場合は、異業種からでも「転職」できる可能性は高まる。

 

 それでも、採用する側が重視するのは、「求職者が何を実績として残し、会社にどのように貢献してくれるのか」だろう。

 転職希望者が、自身のスキルアップを目指していて、目標がしっかりしていることが採用に有利に働くことは間違いないはずだ。

 

 ただ、これは知り合いの採用担当者から聞いた話だが、面接で重視しているのは「その人物の過去、現在、未来にわたって生き方に一貫性があるかどうか」だという。

 

 スキルアップは重要だが、やみくもに頑張ればいいというものではない。転職を目指すのであれば、自分の将来設計をしっかり固めたうえで、説得力のあるスキルアップを目指すことから始めるべきなのだろう。

 

親会社の人事で使えないのは「天下り役員」だけではない

なぜ親会社からの使えない「天下り役員人事」はなくならないのか(ダイヤモンド・オンライン)

秋山進:プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役

 

 日本企業の特に子会社を多く抱える大企業で慣例的に行われてきた「天下り役員人事」の不合理性を指摘する記事「なぜ親会社からの使えない『天下り役員人事』はなくならないのか」が9月23日付けのダイアモンド・オンラインに掲載された。

 

 天下りと言えば「高級官僚」が代名詞だが、記事では民間企業を引き合いに出している。天下り人事の問題はすでに広く世間に知られていることだが、記事では「グループ会社の社長人事は、経験値やスキルに照らしたうえでの最適配置ではなく、本社役員の処遇問題として処理されている」と指摘している。

本人の能力に関係なく、その時点の本社の役職に見合った子会社の役職(名目上の地位は上)に異動することに起因しているという解説だ。

 

 本人の能力に関係なく、子会社の役員や管理職に登用されるのだから、押し付けられた子会社はたまったものではない。

 大体の場合、親会社出身というプライドがある一方で、子会社に飛ばされたという負い目もあるので、新天地で心機一転実力を発揮しようという人間はまずいない。

 

 さらにやっかいなのは、親会社のルールが絶対だと思い込んでいて、子会社の実情も知らないのに、現場の仕事の進め方に文句をつける輩が多いことだ。これならまだ、何もしないで役員室に閉じこもっていてくれた方がありがたい。

 

 子会社の立場からすれば、親会社からの天下り人事は「仕事を確保するための人質」のようなものなのだ。仕事を発注してもらうためのコストと割り切れるからこそ、役に立たない天下りを受け入れているのであり、元々仕事で活躍してもらおうなどとは期待していないケースが多いだろう。

 

 さらに言えば、この天下り問題は「低年齢化」しているという現実がある。富士通など名だたる大企業が45歳をターゲットにリストラを始めるなど、本社要員の削減は50代以上の幹部社員だけではなく、その下の中間管理職世代まで進行しているのだ。

 

 もちろんリストラなので、完全に退職して別会社に移籍する人も多いだろうが、少なからぬ人材が子会社に向けられている可能性はある。

 こうした若い世代の「子会社への転籍」の最大の問題点は、本人の気力・体力は十分なのだが、仕事の方向性が「親会社」に向いていることだ。つまり、子会社で実績を上げれば親会社に復帰できるという「希望」が心の支えなのである。

 

 以前は「修行」と言う意味合いを兼ねて本社復帰を前提にした、海外を含む関連子会社への出向は珍しくなかったが(給与格差は本社が補填していた)、現在の本社にはそんな余裕はない。

 

 本社からきた人材の叶わない夢のために「本社向け」の仕事に追い回される子会社の社員には理不尽としか思えないだろう。

 しかも本人が本社に戻ることはないと自覚した段階では、すでに現場は疲弊しきっている。管理職も社員も新たな事業に取り組む気力は残されていないはずだ。現場にはペンペン草すら生えていないかもしれない。

 

 記事では「社外取締役」の出番だと主張しているが、必ずしも外部から招へいしたプロの経営者が成功のカギになる訳ではないことは、日産自動車、オリンパス、LIXILなどの例で実証済だ。

 

 安易に外部の力に頼ろうとする経営者の気構えも問題だろう。大企業であれば様々な事情で「埋もれた」優秀な人材も多いはず。彼らを「発掘して生かす」人事を考えることが先決ではないだろうか。

サラリーマンが「不動産大家」を目指すのは無理、REITも視野に

「不動産投資」は金持ちほど圧倒的に有利な理由(東洋経済オンライン)

加谷 珪一 : 経済評論家

 

 不動産投資で儲けることができるのは、「すでに土地を持っている」「土地を買える資産がある」などお金持ちほど有利な状況を解説する記事「『不動産投資』は金持ちほど圧倒的に有利な理由」が9月22日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事の言いたいことをまとめると、「土地・建物を購入するのに銀行借り入れをする時点で、すでにサラリーマンは不利な条件からスタートすることになる。儲からないのは当然」ということになる。

 

 読後の感想を正直に言えば、サラリーマン大家を目指す人向けに「警鐘を鳴らす」本は、「投資を勧める」本に比べれば少ないとはいえ、それなりに存在する。

 

 今回の記事に書かれていることは、すべて事実であり、その意味ではブームに乗ってサラリーマン大家を目指す人には、是非とも読んで頂きたい内容ではある

 

 とはいえ、解説する事象が「サラリーマンの不動産投資」というテーマに限定されるだけに、既読感があるのも事実。具体的には昨年11月に出版された「不動産投資にだまされるな-『テクニック』から『本質』の時代へ」 (中公新書ラクレ)と、かなり内容がダブっていると感じた。

 

 本書については私も出版直後にAmazonで購入して、「不動産投資は『投資』ではなく『事業』だ。サラリーマンは圧倒的不利」というタイトルでレビューを書いているのだが、このレビューに書いた内容と記事がほぼ被るのである。ちなみに現時点でも私のレビューは「トップレビュー」を維持している。

 

 という訳で、不動産投資の初心者にはわかりやすい内容ではあるのだが、多少なりとも投資の実情を知る人にとっては、特に目新しい指摘は見当たらないのが実感だ。

 

 加えて言えば、今回の記事は個別物件の「大家さん」になることをテーマにしているので、最後に「つねに一定の資金を確保しておく必要がありますし、話を通しやすい銀行をいくつかキープしておくといった措置も重要となります。何より、無数の案件をつねにチェックするという気の遠くなるような作業が求められでしょう」と結んでいる。

 

 これを読むと、「サラリーマンは不動産投資に向かないということなのだ」と思い込む人もいると思うので、この記事は直接「大家さんになる」ケースを想定しており、サラリーマンが不動産投資をするのは「間接的」な不動産投資もあるということは指摘しておきたい。

 

 具体的には、東証に上場しているREIT「Real Estate Investment Trust」である。これは不動産投資に特化する会社(不動産投資法人)を上場させたもので、投資家から集めた資金を物件に投資し、そこから得られる賃貸料や売却益などを投資家に分配金として配分するという仕組みである。

 一般の事業法人に比べて、収益の90%以上を分配すれば法人税がかからないため、収益のほとんどが投資家に分配されることになる。

 

 ちなみに現時点で上場しているREITはインフラファンドを含めて69銘柄。肝心の予想利回りだが、いちごホテル(3463)の7.5%台は別格にしても、5%を上回る銘柄は9もある。最も手堅い投資先とされる日本ビルファンド(8951)でも、利回りは2.6%台だ。

 

 しかも投資先の物件は、銘柄によって「住居」「ホテル」「商業施設」「物流倉庫」など様々なうえ、各銘柄が複数の物件に投資するので「分散効果」も見込める。

 

 加えて10万円台から投資できる銘柄も少なくない。個別の物件に投資するのは個人的には空き家リスクなどを考えれば「時限爆弾」を抱え込むようなものだと思っているが、REITであれば、投資を始めるための資金も少なくて済むし、自動的に分散投資となる。しかも「管理」という面倒くさい業務から解放される。しかも個別物件と違って金融商品なので取引所で換金するのも容易だ

 

 個人的にも、数年前からREITには10数銘柄を継続して投資しており、年間の分配金収入は10万円以上だ。

 定年までには退職金を含めて、現在の5倍以上に投資する予定で、現在の利回りが維持できると仮定すれば、年額60万円、月額にして5万円程度の副収入が見込める(税金は考慮していない)。これは公的年金の生活費不足分を補う効果は十分あると思う。

 

 ただ気を付けたいのは、REITは今年に入って上昇を続けており、指標となる東証のREIT指数は年初の安値から現在までで20%以上値上がりしている。

 利回りは魅力的に見えても、REIT価格自体の下落の可能性は想定しておいた方がいいだろう。安く買った方が利回りは高いことは言うまでもないが。

 

 という訳で、ぐだぐだと書いてきたが、言いたことはサラリーマンが不動産投資をするなら、個別物件だけではなく、REITという手法もあるということだ。

 何千万円も一気に投資して、多大なリスクを背負う以外にも、手元の資金で手軽に投資できる方法はあるのだから、検討してみる価値はあるのではないだろうか。

 もっとも投資はあくまで「自己責任」であることは留意してほしい。

パナソニック、販売中止の液晶4Kテレビを改良して新モデルを発表

ダブルチューナーを搭載、Amazon  Alexaにも新たに対応

 

 前回(9月17日)の当ブログで、「パナソニック、売れ筋の液晶4Kテレビを販売中止」として同社が、販売好調なテレビを突然販売中止としたことを伝え「10月にも次期モデルが発売されるのではないか」との市場での噂を伝えたが、早くもその通りの展開となった。

 

 パナソニックは、20日「4Kチューナー内蔵ビエラ 2シリーズ7機種を発売」とするスレスリリースを発表、すでに生産完了となったGX850シリーズなどの事実上の後継機種GX855シリーズを10月18日から発売する。

 

 発売の一カ月前にテレビの新製品を発表するのが、一般的に早いのか遅いのかはよく分からないが、前モデル(GX850)の場合、発表は今年1月9日、発売日は1月25日だったから、発表から発売までの期間は16日、今回の28日というのは早い発表と言えるのではないか。

 

 想像するに、4Kテレビの販売台数ペースが急速に上向きになっていきたので、早めに発表することで、GX850シリーズの販売中止による他社への買い替えを阻止する狙いがあると思われる。

 

 さて、今回発表になった液晶テレビ4KビエラGX855シリーズだが、その特徴の詳細や評価についてはカタログや専門雑誌を見て頂くとして、個人的な感想を言えば、

  1. 4Kダブルチューナー内蔵で新4K衛星放送の裏番組録画に対応
  2. リモコンに音声操作マイクを内蔵
  3. AmazonのWorks with Alexaを搭載(スマートスピーカーで利用可能)

の3点だと思う。

 

 プレスリリースやカタログには「画質」「音質」の性能アップを多く記載しているが、前回のプレスリリースと比較したが、変化は見られなかった。

 

 大きな変更点の一つ目のダブルチューナー搭載は今回最大の目玉。これで他社と同等の機能を備えることになった。20日からラグビーのワールドカップが始まり4Kでも放送されることで、4Kへの注目度が高まり、テレビ局も番組数を増やしていくのは確実。

 開催初日に合わせて、新モデルを発表したのは「偶然」だろうか。

 

 次の特徴が、リモコンへのマイク機能の復活。これは前々モデルにあった機能だったのだが、前回のモデルチェンジでこの機能は「有機EL」テレビにのみ搭載されたのだが、ユーザーの復活要望が大きかったと思われる。

 メーカーとしては全モデルで音声認識機能に優れるGoogle アシスタントに対応に対応させたことで、「良し」と考えたようだが、手元のリモコンで操作するというニーズは根強いらしい。

 

 3つ目が、リモコン機能にも関連するが、Amazonのスマートスピーカー「Alexa」のアプリに対応したこと。今自宅にはAlexaが3台、Google Homeが1台あるのだが、メインで利用しているのはAlexaなので、この機能追加はありがたい。

 細かい点を言えば、全モデルでは発売後のバージョンアップで対応したAmazonのビデオ配信サービス「prime video」にも当初から対応している。

 

 気になる価格だが、購入予定の49型はAVウォッチなどによれば、16万円前後とのこと。これは全モデルGX850が20万円台でスタートしたことを考えると安い。

 

 幸か不幸か、最近になって自宅のプラズマテレビの寿命が一段と迫ってきただけに、発売以降に価格ウォッチを続けて、冬のボーナスシーズン辺りでの購入を真剣に考えている。

経済は「広域化」、行政は「狭域化」で都道府県の再編は必至

人口急減時代の「日本」という国のたたみ方(東洋経済オンライン)

佐々木 信夫 : 行政学者、中央大学名誉教授、法学博士

 

 日本の人口減少への問題提起をする書籍や記事をここ数年だいぶ見掛けるようになったが、47都道府県の在り方を問う記事「人口急減時代の『日本』という国のたたみ方」が9月20日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 近年では、人口減少という視点から日本の将来への「絶望」的な衝撃を与えたベストセラー「未来の年表」を2017年に出した河合雅司氏は、今年6月に「未来の地図帳」を出版、47都道府県制度の維持は不可能との前提で、対応策などを提言している。

 

 確かに記事にあるように、人口100万人に届かない県が10もあること自体問題だと思うが、これが2045年には19県とほぼ倍増し、全体の半分近くを占めるとなればさらなる大問題である。

 一方で、「未来の地図帳」によれば、東京都は1360万人、神奈川県も831万人を抱える見通しで、都道府県間の格差はもはや既存の行政の仕組みでは解決できないのは確実だろう。

 そもそも1890年と言う130年近く前に府県制によって現在の47の単位に分割されて以降、名称変更以外何の変革もなかった都道府県制度が制度疲労を起こしているのは間違いない。

 

 地方活性化のためのアクセス向上を狙って整備してきた「新幹線」「高速道路」「地方空港」は、逆に地方から都市への人口移動という結果となり、格差はさらに拡大した。

 

 国全体として長期的な「人口減少・高齢化」が避けられないなかで、では「どのように対応するか」については、現在は諸説あるのが現実だろう。

 

 ひとつは「道州制」。これは昭和の初期から論議されており、著名人では経営コンサルタントの大前研一氏等の他、最近では元大阪府知事の橋本徹氏が著者「実行力」で主張している。

 これは現在の47を10以下の行政区分にまとめて、広域行政による効率化を図るという狙いが主たるものだ。

 比較的わかりやすい考え方だが、地元の「県」が地方自治の代表でなくなることや、「国」主導の再編への抵抗などもあって、実現への動きは鈍い。

 

 一方、近著「未来の地図帳」で河合雅司氏は、人口減少への対応策は、自治体の「広域化」ではなく社会の「ドット化」とすべきと主張している。

 これは既存の市町村の枠組みに囚われずに、もっと狭いエリアで地域の特性を生かした「ミニ国家(王国)」のような集落を多数作るというものだ。

 道州制とは真逆の主張となるが、この考え方自体過去にあまり見られなかったこともあって、地方活性化のテーマとしては盛り上がりには欠けている気がする。

 富山市のようにコンパクトシティ化で成功した例もあるにはあるが、まだ少ないし、さらに規模の小さいドット化した自治体が現実問題として機能するのかという疑問も影響しているだろう。

 

  また記事の著者・佐々木信夫氏が9月に出版した「この国たたみ方」で考察を述べていて、Amazonの内容紹介によれば、その主張の基本は「道州制」の導入と、東京・大阪の「二都構想」にあるようだ。

 記事には、「移動のコストが高すぎる点も分散の進まない要因です。こうした人の流れを変える構造改革こそが、日本がいま最も必要としている国家政策」とあるように、「人の移動」による地方活性化の推進が考え方の柱としている模様。

 

 個人的な考え方を述べれば、都道府県の「機能的」な合併は不可欠だと思う。水道事業やゴミ回収、図書館などの公共事業運営などは民間委託が進みつつあるとは言え、コスト削減は管轄の市町村の範囲に留まり、効果は限定的だ。

 いずれの事業も市町村の合併で事業規模が拡大すればスケールメリットが働いて、より効率的かつ質の優れたサービスが可能になる。

 

 「機能的」と言ったのは、道州制などで県が統合されても、地域の名称として「象徴的」に「県」の名前を残せば、抵抗も弱まるのではないかと思うからだ。

 

 そもそも戦後すぐの昭和22年には10,505もあった市町村の数は、その後「昭和」「平成」の大合併を経て、現在は1,718まで減少している。率にすれば84%もの減少だ。

 当然ながら合併によって、首長や議員の数も減った訳で、市町村が抵抗を乗り越えて合併を繰り返したのに、県の仕組みは絶対に維持するという主張には、無理がありすぎる。

 

 ただ都道府県の再編は、あくまで見た目の「カタチ」の問題ではなく、合併による人口減少の歯止めや産業の活性化などの「中身」が伴わなければ意味はない。

 鉄道、道路など既存のインフラを有効活用しつつ、それぞれの地方がその特性を生かした活性策を自ら計画、策定し、実行できるように、政府も積極的に後押しをすべきだと思う。

 内閣改造で新たに地方創生担当大臣となった北村誠吾氏には、「問題発言」ではなく「地方活性」というカタチで実績を残してほしい。