如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

空き家の売却方法に変化 個人間売買が増加

創造的!「空き家」巡る奇想天外ビジネスの実態(東洋経済オンライン)

中川 寛子 : 東京情報堂代表

 

 平成30年の総務省「住宅・土地統計調査」によると、空き家は849万9000戸、総住宅数に占める空き家率は13.6%と過去最高を更新した。7件に1件は空き家なのである。

 

     f:id:kisaragisatsuki:20191205085153j:plain

 よく知られるように全国の空き家問題は愁眉の課題となっている訳だが、これらの空き家をビジネスとして生かしている事例を紹介する記事「創造的!『空き家』巡る奇想天外ビジネスの実態」が12月5日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 著者は東京情報堂代表の中川寛子氏。リクルート社の住宅情報誌などの編集を外部スタッフとして担当、その後All Aboutの住宅ガイドとしてネットデビューし、現在の住宅関連情報を各種メディアで扱う事業を手掛けているようだ。

 

 記事の内容を簡単にまとめれば、「売れないと思われている不動産にも工夫次第で買い手はいる」ということを紹介する内容と言えるだろう。

 

 これまでにも東洋経済オンラインでは、「空き家」ビジネスを取り上げてきたが、本記事の特徴はその紹介事例が多いことである。具体的には、

  1. 売りたい人、買いたい人が直接やりとりをする掲示板「家いちば
  2. 100均という価格設定で話題になったのが空き家ゲートウェイ
  3. 温泉付き1円別荘を売る会社として有名になったのが横浜市にある不動産会社リライト
  4. 参加型クラウドファンディング「ハロー!リノベーション
  5. 2017年に創設された小規模不動産特定共同事業者登録(平成29年に改正)

 と5つもの事例が紹介されている。

 

 もちろんページ数の制約はあるので、各内容について詳細までは書かれていないが、ビジネスの概要は理解できる。

 

 どの事例にも共通するのは、世間一般からの常識では買い手が付かず、不動産屋からも仲介を断れるような物件を手掛けていること。

 1の「家いちば」では、買い手と売り手が相対で交渉、間に不動産業者が入らないことで、売買が成立しやすくするという特徴がある。これは2の空き家ゲートウェイも同じ仕組みだ。

 

 宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料には上限額があり、取引額200万円以下の場合、報酬は取引額の5%以内。また、低廉な空き家等の売買などで通常と比べて現地調査などの費用が発生する場合は、上記の上限額と現地調査などの費用を合計した額(ただし、上限は18万円+消費税)まで、となっている(全日本不動産協会)。

 

 これは不動産会社にとっては「おいしい物件」ではない。彼らの手掛ける仕事の手間は物件価格による違いはなく、価格が大きいほど「旨味」は大きい。不動産会社の店頭で物件選びを体験された方はお分かりだろうが、より高い物件を勧めてくるのはそういう理由からだ。

 

 もちろん物件の調査や契約書の作成、不動産の移転登記など、不動産屋まかせだった各種事務作業はすべて自分で手配する手間は生じるが、これでも売り手には「塩漬け」になっている物件が売れる可能性が出てくるし、買い手は自分の目で物件を調べて価格交渉も売り手と直接できるというメリットがある。

 あくまで現在の不動産会社の成功報酬も取引額の5%以内と「上限」が定められているだけで、値引き交渉は可能ではあるが、現実には厳しいだろう。売買の当事者が自由に価格を決められる魅力は大きい

 

 このように言う私自身、空き家ではないが現在の東京郊外の自宅を「個人間売買」で購入したという経歴を持つ。

 ちなみに私は不動産とはまったく関係のない仕事をしているサラリーマンだが、趣味で取った「宅建士」の資格を持っている。

 そのため不動産業者の仕事の実態を知っており、「その手数料と仕事ぶりが見合っていない」というのが自分で取引した最大の要因だが、この個人間取引で「仲介手数料200万円程度」を節約して購入することができた。

 不動産登記については私は安全性を考慮して司法書士に依頼したが、やろうと思えば自分で移転登記することも可能だろう。実際に法務局には「無料の登記相談所」が設けられていて、登記書類の書き方を手取り足取り教えてくれる。契約書も雛型は容易に入手できる。

 

 現在は、買い手が付かない「空き家」が対象になっているが、この流れが買い手が付きそうな「空き家」にまで進めば、「個人間取引」が増加する可能性は少なくないように思う。

 

 

一般NISAの廃止は中高年の資産運用へのイジメだ

「NISA恒久化」に暗雲!投資家は6ステップで運用方針を整理しよう(ダイヤモンドオンライン)

山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
 

 NISA(少額投資非課税制度)のうち、2014年に始まったいわゆる「一般NISA」の先行き不透明感が強まっている。

 

 12月4日のダイヤモンドオンラインには、経済評論家・山崎元氏の「『NISA恒久化』に暗雲!投資家は6ステップで運用方針を整理しよう」が掲載された。

 

 記事の趣旨は、「一般NISA」が「つみたてNISA」に一本化されそうな雲行きなので、個人投資家としては今後の資産運用をどうすべきか、という内容だ。

 具体的な対策については記事に詳しく書かれているので、本稿では「一般NISA」の扱いについて述べたい。

 

 確かに一般NISAに対しては、口座数が1100万口座を超え広く普及したものの、年間上限120万円(当初は100万円)の範囲内で個別株式などの短期売買が可能なことで、一部に批判の声があったのは事実のようだ。

 

 これに対応するため、金融庁は2016年に16歳未満を対象にした「ジュニアNISA」を2016年に、非課税期間を20年間とする「つみたてNISA」を2018年に導入したが、口座数は思うように伸びていない。

 これに業を煮やした政府が、NISA制度を「つみたてNISA」に一本化しようというのが趣旨のようだ。

 

 ただ、マスコミの報道を見ると、まだ具体的な方策は決まっておらず流動的なようにも見える。

 11月27日の読売新聞オンラインは「NISA「一般・つみたて」一本化へ…税負担の公平性にも配慮」の見出しで、政府が「将来の一本化方針を、12月にまとめる与党税制改正大綱に明記する考え」としている。

 一方、11月29日付けの朝日新聞デジタルでは「NISA、2024年「積み立て型」新設 資産形成促す」との見出しで、「2024年から安定的な資産形成を促す「積み立て型」を加える」として、図表を使って一般NISAは、従来型に加えて積み立て型を加え、将来的に一本化するという解説をしている。

  いずれにせよ、現在の一般NISAは縮小の方向にあるのは間違いなさそうだ。

 

 この一般NISAの扱いについては個人的に異論がある。

 まず、積み立て型のNISAを拡充して、長期投資を推奨するのには反対しないが、それと一般NISAを縮小するのとは「全く別次元」の話ではないか。

 

 そもそも一般NISAを導入した背景には、日本の家計の金融資産が「現金・預金」集中していて、これを「投資」に振り向けようという狙いがあったはずだ。

 

 2019年8月の日本銀行統計局による「資金循環の日米欧比較」調査によれば、家計の金融資産に現金・預金の占める割合は、米国12.9%、ユーロ圏34%に対して、日本は53.3%と依然として圧倒的に高い。

 

 この比率を引き下げるのに有効な手段のひとつが、一般NISAであることは間違いないだろう。

 個別株式の短期売買への批判はともかく、個人が非課税枠を意識して株式や投資信託など証券投資に向かわせる大きな「きっかけ」にはなったはずだ。

 

 富裕層の運用に使われているとの指摘だが、一般NISAの投資上限は年間120万円で通算5年合計でも600万円に過ぎない。数カ月前に金融庁のレポートで「老後資金2000万円が必要」が話題になったが、その3分の1にも満たない金額である。600万円を非課税で貯蓄するのは富裕層だけなのだろうか。

 

 しかも私のように50代後半ともなれば、「つみたてNISA」の利用期間はほとんどない。老後資金を自力で用意すべきとしながら、中高年には投資先の選択肢を絞り込むというのは、給与水準が下がっていく世代にとってはダブルパンチのようなものだ。

 

 2023年までは一般NISAは継続されるので、それまでは最大限活用するつもりだが、現行の制度がそれ以降も続くことを期待したい。

 

ステマ問題の解決策は表示を「広告」に一本化することだ

2019年も物議醸した「ステマ」招く根本的な理由(東洋経済オンライン)

中嶋 よしふみ : FP、シェアーズカフェ・オンライン編集長

 

 ステマ(ステルスマーケティン)と呼ばれる、いわゆる報酬を受け取りながら記事のように掲載する問題を取り上げた記事「2019年も物議醸した『ステマ』招く根本的な理由」が12月3日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では、「京都新聞が報じた『吉本漫才コンビ、ツイートは「ステマの疑い」 京都市の広告と明示なし、識者「アンフェア」』という記事」を引き合いに出して、「京都国際映画祭で吉本興業が行っていたPR事業の一部に、消費者やファンを欺くステマが含まれていた」と報じたことを伝えている。

 

 この件がステマの可能性が高いのは確実のようだが、問題は記事にあるように、「ステマ」と「ステマではない広告」の間にある広大なグレーゾーンだろう。

 

        f:id:kisaragisatsuki:20191203074221j:plain

 現在は、各種メディアや広告代理店が参加する業界団体、WOMマーケティング協議会が作成したWOMJガイドラインで、コンテンツに「関係性の明示」することが、ステマにならないための条件とされている、と記事では解説している。

 ただこの「関係性の明示」にも問題があるようなのだ。

 

 具体的には、関係性を明示する語句として「広告」「協賛」などのほか、「#Supported」「#Ambassador」といった文字も含まれているという。

 前者2つに限れば、まだ読者の理解が得られる可能性が高いが、後者2つなどは、そもそも「意味」が分からない人も多いだろう。

 

 批判を覚悟で言えば、「ステマなのだがステマとは知られたくないので、あえて英語表記で誤魔化している」という意図があるとしか思えない。

 

 ちなみに新聞広告の場合、私が購読している日経新聞では、該当ページが広告の場合紙面の最上段に【全面広告】と文字は小さいが明記されている。

 雑誌などでは、もう少し「広告」であることを示す言葉の種類は多いような感覚はあるが、記事全体を見れば、画像も多いし、文章から「タイアップ原稿だな」と想像は付くことが多い。

 

 一番の問題はやはりネット記事だろう。画面のサイズが小さいこともあって「ステマでない」ことを示す表示は小さい。

 例に出して恐縮だが、東洋経済オンラインのトップページにも、「広告」記事は複数掲載されている。

 具体的には、タイトルの末尾並びに本文ページの上段に「AD」の2文字が明記されているが、見出しや画像の大きさは一般の記事と同じ大きさで区別は付きにくい。

 ただ、ADの付いた広告記事はすべてトップページの「右端に寄せている」ことが東洋経済の「良心」からの配慮なのかもしれないが。

 

 現状では、「ステマを直接規制する法律は日本にはない」ため、業界団体のガイドラインが指針になっているが、欧米ではすでに法律で規制されているという。

 

 日本でも、日本弁護士連合会(日弁連)が「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を消費者庁に提出しているようだが、既存の大手メディアなどと異なり、各会社の社会的信用が玉石混交状態のネット業界関係者の間で、意見調整がすんなり進むとは思えない。

 

 個人的には、法整備が進むまでは「ステマ」でないことを示す言葉を「広告」に限定して、周知させるのが効果的だと考える。

 「協賛」や「英語表記」でも構わないのでは、との意見もあろうが、そうなれば「どういう基準」で「誰が」線引きをするのか簡単には結論が出ないはずだ。

 ならば「誤解」なく「明確」な表現に統一するのが最善だろう。

 

 話は変わるが、私自身もステマ広告には「うんざり」している一人である。

 特に、話題の商品や人気の新製品に関する雑誌の記事には、同じ商品を解説する記事でも、広告主の協賛で書かれた記事の方が、製造責任者のコメントがあって、本来の記事よりも内容が濃かったりするので、悩ましいと感じることも多い。

 

 個人的には対応策として、商品紹介の雑誌の類では、晋遊舎が出版する『MONOQLO』と『家電批評』としか参考にしていない。

f:id:kisaragisatsuki:20191203074551j:plain

「MONOQLO」と「家電批評」

 どちらの雑誌も、実際に実物をテストして評点を付けて評価しており、その具体的な解説には納得させられる記述が多い。

  また、他の雑誌ではまずやらないような「ワーストバイ」といういわゆる「買ってはいけない」商品についても記事化していることも評価できる。

 

 以上からステマ広告への対応策をまとめると、雑誌の記事はステマの可能性があることを認識しつつ、役に立つ部分だけを参考にして、『MONOQLO』か『家電批評』を読んで知識を深めたうえで、購入の際にはカタログで仕様を確認する、という方法が確実だと思っており、商品購入にあたっては実践している。

 

 ここまでやって購入した商品がハズレだったら諦めもつくからだ

【注目商品】効果が大きい家庭用トイレの消音装置

注目商品の紹介企画「第1回」

 

 今回は、いつもとは趣向を変えて、【注目商品】として、日ごろ気になっている商品を紹介することとする。今後もこの企画は不定期に掲載したい。

 

 我が家は戸建てなのだが、1階のトイレがリビングと隣接していて、トイレを利用する際の「音」が漏れていないかいつも気になっていた

 男性の私が気になるぐらいだから、女性はもっと気にしていたと思う。

 

 こうしたなか、日ごろ通院しているクリニックのトイレを使ったら、すぐに川の水流の音が鳴りはじめてびっくりしたのだが、これが壁に設置された小型の「消音装置」であることにそう時間はかからなかった。

 

 クリニックのトイレも待合室に隣接しているので、おそらく受付の女性が気を利かせて設置を提案したのだろうが、実際に使ってみてすぐに「これは家でも使える」と確信し、さっそくAmazonのサイトで同じ商品を探し、購入した。価格は2980円。以下の商品の画像である。

 

f:id:kisaragisatsuki:20191201130057j:plain

トイレ用の消音装置

 商品名は「トイレ用擬音装置」というのが一般的のようだが、「流水音発生器」などの名称もあるようだ。

 

 今回購入したのは、中国製の製品のようだが、説明書には日本語の記載もある。ただ裏ブタを開けて、単三電池を3本入れて、2つの黒いツマミで「センサーの感度」「音量」を調整するだけなので、設定や取り付けに悩むことはないだろう。

 ただ、センサーの感度は結構高いので、低めに設定した方がいいかもしれない。

 

 使い方は簡単。センサーが人を感知すると自動的に設定された「音(4種類あるがデフォルトは川のせせらぎ)」が35秒単位で5回流れる。何回目かは緑色の5つのLEDで

表示される。5回目が鳴り終わったら呈するが、手をかざせば再び鳴り始める。

 逆に音が不要だと感じたら、正面のボタンを押せばすぐに止まる。

 細かい話だが、外国語の使用説明書のシールも添付されていて、外国人向け需要もあるらしい。

f:id:kisaragisatsuki:20191201135056p:plain

4カ国語の説明書シール

 家族に感想を聞いたが、そこそこ好評だった。「そこそこ」というのが微妙な表現なのだが、女性が「すごく」良かったというとそれまでの「音」を気にしていたことが分かってしまうので、あえて控えめな表現をしたのだと個人的には「前向きに」解釈している。

 

 同様の商品としては、オーム電機が「おトイレの消音 流水音発生器」として1300円前後で発売しているが、こちらはセンサー機能はないので、手動でボタンを操作することになる。

 一方、TOTOからは「音姫」という商品名で発売されているが、価格は1万2000円以上と高いうえに、音も2種類からしか選べない。重さも大きさも2倍近い。しかも電源コンセントが必要になる。

 

 あと、Amazonで購入する際に気になるのが「レビュー」だろう

 この記事を書いている時点でレビューは77件。★5は52%と過半を占め、★4つを加えると73%に達する。★1つや★2つのレビューもそこそこある(合わせて22%)ので、「ヤラセ」だけのレビューだけではなさそうだが、★5の一部にはその疑いが強いレビューが存在するのも事実。

 

 元「Amazonベスト100レビュアー」である私の個人的な使用感を言えば、「値段の割には使える」というのが正直な感想。ただ耐久性についてはまだ何とも評価できない。

 

 ただ、3000円程度の商品で家族の女性から有難られて、お父さんの評価が上がることを考えれば、値段の割にコスパは悪くないとは思う。ご参考まで。

 

中古マンションの成約件数が上昇、購入時に「内側」の調査は不可欠

中古マンション販売、新築を上回る…条件に合う物件が格段に増加、“築深”が狙い目(ビジネスジャーナル)

住宅ジャーナリスト・山下和之の目

 

 マンション市場で、中古物件の人気が高まっているようだ。

 11月30日付けのビジネスジャーナルに住宅ジャーナリスト・山下和之氏の「中古マンション販売、新築を上回る…条件に合う物件が格段に増加、“築深”が狙い目」という記事が掲載された。

 

 2000年には10万件近い販売物件があった新築マンションが、その後急速に減り、2016年以降は3万7000件台で推移しているのに対して、中古物件は2000年以降じわじわと増えており、2017年、2018年は新築数とほぼ並んだが、2019年はこれが大きく逆転する可能性があると記事では指摘している。

 

       f:id:kisaragisatsuki:20191130184051j:plain

 記事にある「新築」と「中古」のマンションの累積件数のグラフを見ると、確かに「大きく」差が開いている。ただ、記事では「10月までの合計では両者の差は1万件以上」としているが、グラフを読み取ると、その差は「3万件」の誤りのようにも見えるのだが・・・

 

 山下氏は、物件を探している人は新築にこだわらず、中古にも目を向けることで、購入対象となる部件数は2倍に増えるとアドバイスする一方で、中古物件の築年数にも注目。「築31年以上の物件の割合は08年には15%ほどだったのが、18年には35%以上」に達していると指摘している。

 

 新築好きの日本人が、中古にも目を向けるようになるのは悪いことではない。山下氏の言うように対象物件が大きく増えるのは確かだ。

 

 また、「現物」を確認できるので、内外装やベランダからの景色が実感できるほか、共用施設の利用状況や、住んでいる住民の雰囲気も把握できるかもしれない。イラストと仮想画像でしか完成図を見られない「青田売り」の新築にはない中古の大きなメリットだ。

 

 ただ、気になるのは記事にもある「築年数」の問題。先述のように東日本不動産流通機構の調査では、すでに首都圏の仲介市場で新規登録されたマンションのうち3戸に1戸は築31年以上の物件である。

 また、同機構の月例マーケットウォッチ10月度(データ)によれば、首都圏の中古マンションの成約状況では、築年数が初めて22.16年と22年の大台に達している。中古物件の「高齢化」は確実に進行している。

 

 築30年と言えば、2度目の大規模修繕を迎える時期。物件の状況次第では「給排水管」や「エレベーター」の更新が必要になるかもしれない。一回目の大規模修繕で多額の費用を遣ってしまった場合、修理費不足のため管理組合から数百万円規模の「一時金」の支払い要請が来る可能性もある。

 

 とは言え、山下氏が指摘するように近年の新築物件の価格上昇に合わせる形で、中古物件の価格も上がっており、特に立地のいい物件は新築並みの価格が付くこともある。これでは中古のメリットは減少する。

 山下氏は、記事の最後で「“中古マンション主役元年”のメリットを最大限享受するためには、築深物件に注目する必要がありますが、その見極めは簡単ではありません」と、その具体的な“見極め方”を次回の連載に持ち越している。

 

 ここは「斜め視線から」をウリにしている当ブログならではの個人的な見解を述べておきたい。

 

 中古物件の購入で注意を払うべき項目に「築年数」があるのは確かだが、先に述べたように「外観」「内装」「住環境」といった“外面”からの確認は容易だし、様々なメディアでもその見分け方は紹介されている。それはそれで確認すべき“必要”事項だが、これで“十分”ではないのだ。

 

 マンションには必ず管理組合があり、年に一度以上の総会を実施し、その議事録を残すことが義務付けられているほか、管理規約や長期修繕計画に関する内容も書類として整備されていることになっている。

 

 マンションの管理規約や、これら「議事録」などの資料は、マンションの実態を“内面”から知るのに大いに役立つのだ。住民が今問題にしている点や、それに対する組合の対応などは購入前に知っておくべきだろう。

 

 このようにマンション購入に当たっては、物件の「外面」「内面」の両側からの調査・確認が不可欠なはずなのだが、現状では購入者も仲介業者も、「外面」にしか関心を示していないのが実態だろう。しかもその「外面」も素人が見て分かる程度のことしか対象にしていない。 

 こういった流れを是正するため、ホームインスペクション(住宅診断)を説明義務化する「改正宅建業法」が、2018年4月に施行されたが、様々な課題もあって中古媒介市場で十分に機能しているとは言えない状況だ。

  やはり、マンション購入にあたっては「内部情報」を確認する手間を惜しんではならない

 

 では、この議事録などの内部資料をどうやって入手するかだが、多少の費用はかかるが不動産会社に頼めば、管理組合からコピーを受け取ることが可能なはずだ(閲覧しか認められない可能性もある)。できれば3年分ぐらい確認しておきたい。

 

 議事録の閲覧・開示を要請した際に、それを拒むような管理組合のマンションや、その手間を嫌がる不動産屋は見切った方がいい。購入後に後悔する可能性が高いからだ。

 

 というのも、区分所有法第三十三条には「利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない」と明記されている。

 また、同法律の第四十四条第5項目には「第三十三条の規定は、議事録について準用する」と書かれている。このことは6月30日付けのブログでも書いた。

 

 閲覧が義務付けられている資料の開示を拒絶するからには、「それなりの知られたくない内部事情」があるからに間違いないはずだ。こういった不安要素がある中古マンションを避けるべきなのは言うまでもないだろう。

 

 以上、中古マンションを購入する際には、「内面」「外面」両方からの調査・確認を行うことを強く勧めたい。

需要高まるシニア婚、成功の決め手は「自分」を分かっているか

「50代で再婚できる人」とできない人の明確な差(東洋経済オンライン)

旦木 瑞穂 : ライター・グラフィックデザイナー

 

 巷では、中年世代以上の婚活事情が活性化しているらしい。

 11月29日付けの東洋経済オンラインに、「『50代で再婚できる人』とできない人の明確な差」という記事が掲載された。

         f:id:kisaragisatsuki:20191129072530j:plain

 

 記事では冒頭、「近年、生涯独身人口が増加している一方で、熟年世代の婚活が活発になっている」で始まり、45歳以上から入会できる結婚相手紹介サービス最大手のオーネットのサービス「スーペリア」の会員が、2015~2017年までの間に約3倍になったこと。

 また、創業60年の30代・40代・中高年・シニアを専門とした結婚情報サービスを展開する茜会では、少し前から50代が増加し、最近では60代、70代が増えてきたことを紹介している。

 

 会員の婚歴だが、オーネットは未婚率は28%、茜会は0~50代は初婚の方多く、50~60代は初婚と離婚された方が同程度だそうだ。

 

 ここまでは、婚活市場のいわば「客観的なデータ」。気になるのは、どういう人たちが結婚に成功もしくは、失敗しているのかという具体例だろう。

 

 当然ながら記事でも成功例、その逆の例をそれぞれ4つ紹介している。またうまくいかない事例については、その理由もコメントしている。ちなみに成功例にはコメントはない。

 

 具体的な内容は記事を読んで頂きたいが、失敗する傾向として「自分が選ぶ」という姿勢の人が多いことを挙げている。

 

 ここからは個人的な感想だが、成功した人の事例を見ると、「子供がいない、もしくはすでに独立している」という共通項目が目を引いた。

 4例のうち、離婚が3人、死別が1人。別離からはいずれも2年以上が経過しているが、行動を開始してからは1年以内に成婚している。

 

 再婚に関することわざに「去り跡へ行くとも死に跡へ行くな」というのがあるが、現代では年月が経てば新たな人生に向けて、離婚・死別の差を問わず、再婚への意欲が高まってくるのかもしれない。

 

 一方、うまくいかない方の事例は「なるほどね」と合点のいくものばかりだ。

 例としては「高い理想を相手に求める」「自身の年収や学歴が低い」など、自分に対する社会的かつ一般的な評価を冷静に認識できていない(もしくはしたくない)ことに尽きる。

 

 また記事では、女性は「経済依存」「入籍ありき」、男性は「親との同居」「婚歴なし」が不利な条件になっていると指摘している。

 

 これも私見になるのだが、うまくいかない女性の事例をみると、「年収」「学歴」「趣味」「ビジュアル」など男性に求める条件が、やたらに多いのが気になった。

  再婚なので慎重になる気持ちは分かるが、一般的には年齢が高いことは女性の方に不利に働く要因になりやすいはずだ。

 

 相手に求める条件に見合った資質を自分の方でも備えているのであれば、構わないのだろうが、そのような好条件の女性は婚活市場に出てくる前に、再婚相手が見つかる可能性が高いだろう。「分相応」という言葉を参考にしてほしい。

 

 もちろん男性側の事例にも問題はある。「料理ができて子供がいないことを希望」、「56歳まで親と同居」など、もう少し現実を見た方がいいのではないか、とアドバイスしたい。

 

 記事では、「うまくいくかいかないかは、ほんのちょっとの差。タイミングや努力次第だと思います」と茜会のコメントを紹介しているが、うまくいかない人の事例を見る限り、「ちょっと」どころの差ではなく、「大いなる」勘違いが原因ではないかとも思える。

 

 ここまでシニアの婚活事情について書いてきたが、世の中全体でみれば生涯単身のままの「ソロ化」が進行しているのも事実。

 趣味などの遊び友達や相談相手を求めるのであれば、「結婚」は絶対の必要条件ではないだろう。

 今回の記事には、オーネット社部長の「(50代で)結婚となると、資産や子どもの問題などが関わってくる。だから取りあえず、一緒にいて楽しい相手、気の合うパートナーを探したい……という方が増加しています」というコメントが紹介されている。

 

 近い将来、「結婚」にこだわらず「パートナー」という選択が、シニアの間ではより普及していくのではないかと思った。

金融庁が金融知識の普及要員を公募――やりがいはありそうだが・・・

金融庁「おもしろ求人」発見で考えた、投資教育で伝えるべき7つのこと(ダイヤモンドオンライン)

山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

 

 最強の金融庁長官と呼ばれた森長官の時代から、その存在感と影響力を高めてきた金融庁が、知識普及関連業務に従事する職員を募集している。募集をWebサイトで公開したのは11月20日だが、この試みについて経済評論家の山崎元氏の記事「金融庁『おもしろ求人』発見で考えた、投資教育で伝えるべき7つのこと」が11月27日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 個人的には山崎氏を、国内系及び外資系の金融機関に10数社勤めた異例の経歴を持ちながら、現在は「個人目線で金融商品への投資」に的確なアドバイスをしてくれる信頼できる「数少ない」業界出身者の評論家だと思っている。

 実は20年以上前にまだ山崎氏が外資系の証券会社で仕事をされていた頃に、一度仕事でお会いしたことがあるのだが、当時から忌憚のない意見をする意外な”業界人”だったと記憶している。

 

 さて、記事では、募集人員の解説に始まり、その実際の仕事としては「テキスト作り」が重要になるとし、そのテキストで取り上げるべき重点項目として「生活におけるお金の意味」など7つを挙げている。

 

 重点項目の具体的な内容は記事を読んで頂くとして、記事の視点として興味深かったのは、採用された職員の仕事のスタイルについてだ。

 先に述べたように、全国各地を回って学生や教員、社会人に金融知識を教えるのだから「やりがい」はあるとしつつも、金融庁内での意見や見解の合意は言うまでもなく、投資理論には欠かせない数学の知識も必要になるため、文部科学省との交渉もする必要性を示している。

 

 これは現実的かつ正しい指摘なのだが、個人的には日本銀行が統括する金融広報中央委員会との交渉が一番重要ではないかと思っている。

 というのも、同委員会は「金融リテラシー・マップ」として、「生活スキルとして最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を具体化して、年齢層別にマッピングした(対応づけを行った)もの」を公表(2016年1月改訂)しており、具体的には「金融教育プログラム『学校における金融教育の年齢層別目標』」として、例えば「金融や経済の仕組み」などの分野別に、小学生低学年から高校生に至るまで学年別に習得すべき内容を細かく定義している。 

f:id:kisaragisatsuki:20191127074845p:plain

学校における金融教育の年齢層別目標(金融広報中央委員会の資料)

 金融知識の社会普及についてすでに経験も実績もある同員会との調整なしで、金融庁がどんなに優れたテキストを作成、奮闘しても、世の中に普及するとは限らない。

 信託報酬の安い、投資家にとって有利な投資信託よりも、自分たちが関与する(評価に繋がる)投信を売りたがる金融業界の構図とそういう意味では似ていると言えないもない。

 ただ、委員会の顧問には金融庁長官もいるので、上からスジを通していけば大きな問題とはならないのかもしれないが。

 

 記事では最後に、お金の運用に関わる金融機関が「ビジネスをしている」ことの意味を伝えることの重要性を考慮し、「金融のみではない消費者教育の一環として教えるべきだろう」と指摘しているが、これは、正しい方向性を示してると思う。

 現在、消費者に直結した資格としては「消費生活アドバイザー」があるが、そのカバーする範囲は広く「金融商品」については、専門家とは格差があるのが実態だろう。

 ただ、彼らの持つネットワークを活用して、金融庁が新たに作成した「分かりやすいテキスト」を元に金融知識を深めてもらうという手法は検討の余地がありそうだ。

 

 いずれにせよ、内外の関係者との調整やテキスト作りで大変な仕事ではあるだろうが、「金融知識の普及」で正々堂々と社会貢献しているという点では、金融機関の店頭で良心の呵責に悩ませながら「手数料の高い商品を売り込む」よりもよっぽど「やりがいのある仕事」ではあるはずだ。

 

 最後に、この金融庁の職員募集だが、締め切りは12月4日の当日必着であること、それと募集しているのは「1名」ということを一応確認しておきたい。

 やりがいのある仕事は、競争率も高いのはどこの業界でも同じなのである。

 

消費者の節約傾向に変化、一段と「資産価値」重視に

お金が貯まる人があえてブランド品を選ぶワケ(東洋経済オンライン)

松崎 のり子 : 消費経済ジャーナリスト

 

 節約志向というと、主婦が一円でも安い日用品などを求めて行動というイメージがあるのだが、最近はこの傾向に変化が出ているらしい。

 11月26日付けの東洋経済オンラインに「お金が貯まる人があえてブランド品を選ぶワケ」というタイトルの記事が掲載された。

 

 記事では前段で「節約意識が高い消費者が、より価格が高いものを購入するようになっている」という風潮を紹介、「安さ」が節約の決め手とはならなくなってきたとしている。

 

 この根拠として、フリマアプリ「メルカリ」のプレスリリース「2019年度「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査」を引用、「フリマアプリ利用者の約3割が「新品の商品購入単価が上がった」ことを紹介している。

 ちなみにこの調査結果では、「フリマアプリ利用・非利用者を問わず、購入する商品は新品であることを重視する割合が減少。非利用者は昨年対比5.0%減少。利用者は昨年対比2.1%減少」という結果も明らかにしている。

 

 結論から言えば、記事にあるように消費者が、「売れるものを買う」という選択をしているからに他ならない。

 つまり、購入価格が高くても、その分フリマで高く売れれば実質的な負担はその差額で済むので、安い品を買って売れずに抱え込むよりもメリットが大きいということだ。

 

 ちなみに、記事では「腕時計ならロレックスがダントツの人気、不動の地位」、「ブランドバッグも同様だ。人気のトップスリーは、エルメス・ヴィトン・シャネル」だそうだ。

 

              f:id:kisaragisatsuki:20191126071625p:plain

 こうした資産価値というか将来の売却価格を想定して、購入する商品を選択するというのは、マンションなどの不動産や、下取りを前提にした乗用車などでは一般的になっている。

 こうした流れが、高額商品から腕時計やバッグなどのやや低価格帯にまで普及してきたということだろう。

 最近は、「ミニマリスト」とか「断捨離」といった必要最小限のモノしか家に置かない人たちが増えていることも影響しているかもしれない。

 つまり、モノを購入する基準が「所有」から「利用」へと価値観が変化しているのだ。

 

 個人的な事情を紹介すると、最近凝っている私の数少ない趣味のひとつにPCゲームがあるのだが、新品を購入することはない。デジタル商品なので中古でも内容自体は劣化しないという事情もあるが、商品にもよるが大体定価の半値で購入できるからだ。

 

 加えて、ゲームを楽しんだ後は購入先に中古品として買い取ってもらうのだが、この際に対象となるゲームの買い取り額が一定以上だと、査定額が20%アップするというキャンペーンが開催されることが結構な頻度である(キャラクター商品や各種ゲームの中古品流通では大手の駿河屋の場合)。

 

 さらに言えば、PCゲームの価格には「古くても面白いものは高いが、新しくてもつまらないものは激安」という傾向があるので、購入する際には「多少高くても買い取ってもらう際に高いゲームを選んだ方がお得」ということになる。

 この行動は、まさに高級ブランド品を購入する考え方と同じだ。購入する際の初期費用は高くても、最終的に「良い品を安く利用できる」訳だ。

 

 ちなみに乗用車では、トヨタが高級ブランド「レクサス」6車種に加え、その他13の車種で「KINTO」として、月額利用料金制のサービスを開始している。料金は最近デビューした小型SUV「RAIZE」なら月額39,820円(税込)、レクサスだと月額198,000円からと跳ね上がるが、こちらは6カ月ごとに新車に乗り換えられる。

 

 以上から将来を想定すると、購入の決め手が「利用価値」が主流になり、しかもその商品の価格帯が一段と低下していく可能性がある。

 

 身近な例を挙げれば、デジタルコンテンツを手掛けるDMMの電子書籍の一部は、2日間限定で読めることを条件に、普通の購入価格より安く読める仕組みがある。一度読んだら、まず二度と読まないような人たちには歓迎されるだろう。

 

 現状では、実店舗がECサイトに押されて厳しい環境にあるのはよく知られているが、成長しているECサイトにおいても今後、「利用価値」を考慮した販売方法への対応次第で、業界内の淘汰が進む可能性はあるだろう。

40代のリストラ対策には30代から準備を。お手本になる50代は少ないという現実

50歳を超えて最前線で活躍できる人、隠居モードに陥る人の違い(ダイヤモンドオンライン)

丸山貴宏:株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役

 

 つい数年前まで「リストラ」と言えば、会社の業績悪化に伴う人件費削減のための50代の早期退職募集の事だったが、今は45歳まで対象年齢が下がってきた。

 こうしたなか、50代になっても第一線で活躍する人たちの特徴などを解説する記事「50歳を超えて最前線で活躍できる人、隠居モードに陥る人の違い」が11月25日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 著者は丸山貴宏氏。リクルートで人事担当採用責任者として活躍後独立、採用、転職のアドバイスで豊富な実績を持つ人事のプロである。1963年生まれなので現在56歳と思われる。

 

 記事前半では、最近の転職事情について、45歳で一つ目のハードル、50歳で二つ目の大きな壁が存在すると解説している。

 続いて、役職定年制度が多くの企業で採用された結果、「50代に入ると働く人の評価が下げられる感がある」とし、「隠居モードに入っているような人がけっこういたりします」と現状を紹介している。

   

            

           f:id:kisaragisatsuki:20191125102438j:plain

 一方で記事後半では、こうしたなかでも第一線で活躍する50代の人たちの特徴として、「自分のキャリアを会社に委ねてきたかどうかの違い」を理由として挙げている。

 

 ここまでの内容の感想を言えば、50代に入って隠居モードに入る人がいるのは事実だが、その理由が「キャリアを会社に委ねた」結果、というのにはやや違和感があった。

 

 というのも、この記事の対象となっている現在の50代は「会社人間」と呼ばれるような人はザラで、三共のビタミンドリンクRegainのTVCM「24時間戦えますか?」のコピーが話題になった世代である。

 採用人数も多く、人事評価の基準も、営業部門などでは実績が優先されたが、「個性よりも協調性」を重視する傾向が強かった。

 つまり、会社から与えられた仕事をいかに「早く」「正確」にこなすかが査定に大きく影響していた。今の人事制度のように、別の部署への異動希望がそう簡単に出せるような状況ではないので、下手に異動希望の意志を出すと「不満分子」として、評価が下がることすらあったのである。

 

 こうした環境下では、「与えられた仕事」に全力投球しかない。現時点で50代で第一線で活躍したり、役員になった人は、「会社に仕事を委ねた」結果、同期入社よりも大きく実績を上げたことが評価された側面が大きいはずだ。まあ、中には将来の転職を想定して、仕事をしていた先見性のある人も当然いるだろうが。

 当然ながら、会社一筋に頑張ってきても、管理職のポストは限られている。地位や報酬で報われない人の方が多いのが実情だ。彼らを「キャリアを会社に委ねた結果」と切り捨ててしまうのは、時代の流れとは言えど、割り切れないものを感じる。

 

 記事では後半で、「どんどん転職のオファーが来る人になりたいのなら、自らにスイッチを入れて、30代の人から『あんな50代になりたい』と思われるような活躍をしなければなりません」としているが、そもそも「お手本」となるような50代の絶対数が現状ではまだ少ないと思う。

 

 見習うなら、50代のリストラを目の当たりにして、自分自身のキャリアプランを設計し、その実現に向けて仕事に取り組んでいる40代前半あたりの実力者だろう。彼らの自分への評価の基準は「社内」よりも「社外」からの客観的なモノサシであり、仕事を取り巻く環境とその変化を冷静に分析しているはずだ。

            f:id:kisaragisatsuki:20191125095432j:plain

 

 記事の最後では、50代で転職することになった人が、「専門分野で広く深い人的ネットワークを構築し、非常に高い交渉能力」していたことが評価され、退職後にはオファーが相次ぎ、転職活動することなく再就職が決まった事例を紹介している。

 

 現在の30代のビジネスマンにアドバイスするとしたら、このような社外でも通用するようなスキルを持つ人を社内で見つけて、そのスキルを習得することだ。先に書いたように40代の対象者がいればベストだ。

 ただ、このようなスキルを持つ人の仕事に対する方向性自体は、あまり年齢とは関係がないので、50代後半の人であっても何らかの形で「繋がり」を持った方がいいと思う。

 

 転職では、「社外でも通用するスキルが重要」というテーマは、最近ではどのメディアでも広く言われていること。自分で考えて実践するのもいいが、実際に社内で実践している人から学んだ方が効率的だ。

 ただ、いかにも「スキルを頂きに来ました」オーラを出して接近しては警戒されるのは確実、普段から本人と接点のありそうな仕事に積極的に名乗りを上げるなどの名前と顔を覚えてもらうぐらいの「配慮」は必要だろう。

50代になったら「他人から」より「自分による」自己評価を優先すべき

「肩書に執着する50男」ほど心が折れやすい理由(東洋経済オンライン)

齋藤 孝 : 明治大学教授

 

 会社員が50代になって役職定年を迎えると、厳しい現実を受け入れられなくなるという現実を解説する記事「『肩書に執着する50男』ほど心が折れやすい理由」が11月24日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 内容を要約すると、地位や肩書を失うことで「新たな目標やモチベーション、アイデンティティーを模索して、他者からの承認欲求を求めるようになる」ので、「2周目に入った新しい人生の現実を受け入れ、新しい価値観と基準を自分の中で作らねばなりません」ということになる。

 

 記事では、「男性に比べて、女性は社会的な地位や肩書にそれほどこだわりません」と言う一般的な傾向の他、「結局は誰かから自分の存在を認めてほしい、重要で大切な存在だと思われたいという気持ちが、これらのモチベーションの根源にある」と解説している。

 

 私自身も50代後半になって役職定年を迎えて、部下は一人もいないし、直属の上司は年下、責任ある仕事も少ないというのが現実だ。加えて、座席も一般職員と同じ並びになる。

 役職定年を迎えた当時は、覚悟はしていたものの、多少なりとも「虚しさ」を感じたのは事実だ。

 ただ、自分が役職定年を迎える前から制度はあったので、先輩たちがどのように勤務体系が変わるのかは、目撃してきたということもあって、「ショック」はなかった。

 

 こうして一カ月も過ぎると「虚しさ」は「ゆとり」に変化した。具体的には、自分で自分をコントロールする時間枠が相当に増えて、負担が減ったのだ。

 部会以外には会議にも呼ばれないので、資料の作成や確認の手間はなくなったし、それに伴って上司や部下への報告や指示も不要になった。これで精神的な負担は激減した。

 

 加えて言えば、個人的な事情から変則時間帯での勤務を承認してもらって、朝7時から夕方15時までの勤務にシフトしたことで、朝夕の通勤地獄からも解放された。これも身体的な負担の軽減になった。

 

 今思えば、現在の会社に勤めて30年以上経って、出世競争にも決着が付き、そろそろ張りつめていた「気」を緩めてもいい時期だと考えていたことが、結果的に良かったのだと思う。

 

 記事では後半で、「人間は社会的な動物ですから周囲の評価や評判、名声や名誉を求めます」とし、「結局は誰かから自分の存在を認めてほしい、重要で大切な存在だと思われたいという気持ちが、これらのモチベーションの根源にあるのです」と“承認欲求”に対して、「人間の性」と理解を示している。

 

 確かに、顧問やら参与やらといった名誉職の肩書を有難がる人たちの感情も理解できなくはない。私自身も「ないよりはあった方がましかも」とは思うが、特段欲しいとは思わない。

 

 この私の考え方の根底には「50代後半にもなって自分の価値を他人に決められてたまるか」という意識があるのだと思う。

 

 アメリカ合衆国第16代大統領・リンカーンは「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持ちなさい」と言ったそうだが、私が言い繋ぐとすれば「50歳を過ぎたら自分の価値は自分で決めなさい」ということになる。

 

 これから役職定年を迎える人、すでに役職定年となって悩んでいる人には、「これからは他人からの評価よりも自分で自分を評価する」ことを勧めたい。

 

 これは役職定年を迎えた自分の体験だが、どんなに仕事に精力を注いでも、逆に業務に影響が出ない程度に手を抜いても、会社の査定や評価にはほとんど影響しないと言っていい。そのぐらい会社は役職定年者を「戦力」としては見ていないのが実態だ。

 

 であれば、本当の定年である60歳までは「モラトリアム」の期間として、それこそ記事にある「2週目の人生」を考えることに充てるのが正解だろう。「疎外」されたのではなく「別格」になったと受け止めればいいのだ。

 

 かく言う私自身、第二の人生の指針を模索中ではあるのだが、時間的に追い詰められているという感じはない。何かのきっかけで興味が向いたことを、とにかく試してみることを実践しているので、自分主導で楽しんでいる感覚の方が強い。

 

 あと数年で本当の定年(60歳)なる訳だが、それまでに何かやりたいことが見つかれば「儲けもの」ぐらいの心構えでいいと思っている。