如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「仕事」を部下に任せるのも上司の「仕事」

「自分でやりたい中毒」から今度こそ抜ける方法(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 自分が通常の業務をこなしながら、部下のマネジメントも兼任するプレイングマネジャーの仕事の進め方をアドバイスする記事「『自分でやりたい中毒』から今度こそ抜ける方法」が9月25日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 書かれている内容はすべて「なるほど」と納得できる上に、具体的で参考になる。

その「心得」3か条を紹介すると、

  1. 「自分でやってしまいたい」を捨てる
  2. 「今」ではなく「1年後」に視点を置く
  3. 業務量を3割減らす

以上の3点である。

 

 1については私自身も含めて、経験済である。「後輩を育てなくえは」という自覚はあるのだが、現実には仕事の締め切りはあるし、顧客に迷惑はかけられない、今回は自分で処理しておくか、となって、結局これが毎回続くのである。

 「何か問題が発生したら自分の責任」というプレッシャーもあって、その場は問題なく進行するのだが、「マネジャー」としての仕事は放棄していることになる。

 

 「部下に任せられない」という気持ちは理解できるが、よくよく考えてみれば、自分もそのような環境のなかで上司に「仕事を任されてきた」ということを思い出してほしい。

 失敗すれば当然怒られるが、失敗を体験するからこそ、次は失敗しないように対応策を考え、成長していくのが若手のあるべき姿だろう。

 その機会すら与えられないのでは、仕事で成長するのを期待する方に無理がある。

 

 2については、1の延長線で考えるべきだろう。部下の失敗を恐れていては何も進展しない。仕事を任せた当初は、「尻ぬぐい」の覚悟を決めて、自分の仕事の負荷が増えることは「長い目で見れば必要不可欠なこと」と割り切るしかない。

 ただ、仕事を任された若手にとっては、仕事の内容は初めてだし、方策も手さぐり状態、それまでの仕事も抱えているので、そのままではオーバーワークになって「潰れて」しまうことにもつながりかねない。

 

 そこで有効打になるのが3の「業務量を減らす」である。

 担当する仕事は増えたのに、人間のこなせる仕事量はすぐには変わらない。となれば、過去からの慣例で続けていた「会議」や「朝礼」などを見直すというのは有効だ。

 ただ現実に「会議」や「朝礼」を減らそうとすると、仕切っていた上司などから抵抗勢力が出てくるのは必至。社内事情を考えると、直属の上司(部長など)としては、ライバル部署と比較されて「会議」や「朝礼」を廃止して、「楽」をしている、させているのではないかと、評価されることを恐れる可能性が高い。

 

 ここは手間も時間もかかるが、まずは上司に「改革が効率化につながり、その先には事業の進展が見込める」ことを説得するのが先決だろう。上司の顔色をうかがう「ヒラメ」と言われようが、とりあえず効率化を実現し、効果が目に見えてきたら上司の評価も変わってくるはずだ。

 

 ここで個人的なアドバイスとしては、若手への業務移管に伴う、無駄な会議などを減らしたことの成果を「上司の実績」として、譲ってしまうことを勧めたい

 仕事に携わった若手たちは、実際に誰が貢献したかはわかっているし、上司は自分の顔が立つことで満足する。次の仕事での新しい企画や提案には、抵抗もせずに後押ししてくれる可能性もある。

 

 個人の実力が評価される時代になったとはいえ、一部の専門職を除けば、しょせん仕事はチームワークで進めることが多いはずだ。

 現場の仕事と若手のマネジメントの両立ぐらいで悩み、苦しんでいるようでは、その先にあるよりレベルの高いマネジメントなどが勤まるはずがない。

 

 これはある大企業の役員から聞いたのだが、ある程度の立場になったら「自分で仕事をするのではなく、いかにして人に仕事をさせるかが重要」と言っていた。

 今思い返すと「名言」だと思う。言われた当時は自分も、仕事を若手に任すよりも自分でこなす方が効率的だと思っていたが、もっと早く気づけばよかったと後悔している。

転職成功のカギは「スキルアップ志向」だった

転職で給料を上げる人と下げる人の決定的な差(東洋経済オンライン)

宇都宮 徹 : 東洋経済 記者

 

 給料のアップは役職とともにサラリーマンの目標ひとつだが、9月24日付けの東洋経済オンラインでは、雑誌・週刊東洋経済の特集「給料、最新序列」のなかから、転職に関する部分を抜粋して「転職で給料を上げる人と下げる人の決定的な差」と題して掲載した。

 

 記事では、転職者数が8年連続で増加、10年ぶりの高水準となったことや、転職で給与が上がった人の割合も過去最高を更新、一方で、給料が減少した人の割合も増えており、二極化が進んでいると解説している。

 

 給料を上げる傾向パターンとして紹介しているのは2つ。

 ひとつは、「業種」として給料が低い業界から業界に転じること。

 ただ記事では、給料が高い業種として「総合商社」「コンサルティング」などを挙げる一方で、低い業種として「介護」「百貨店」などを紹介している。

 

 それぞれの業界を見れば、高い方には「交渉力」「語学力」などが高いレベルで求められるのに対して、低い方には基本的に必要とされる「スキル」は低いと言える。

 実際問題として、介護でも百貨店でも高い専門性(特殊な技能や経験)がなければ、他業界で評価されることは困難だろう。つまりごく一般的な社員が、給与の高い業界に転職するというのは現実的ではない。

 

 もうひとつの方法が「スキルアップ」だ。

 記事では、「広告営業職だったが顧客企業のブランディングに深く関与」していた実績をアピールして未経験の広報部門への転職に成功した人や、逆に「年収アップには拘らなかったが、自分の個性を生かせる職場を限定して」営業から人事部門に転職、給与も約10%アップした具体例を紹介している。

 

 確かに、他業界で必要とされる人材と評価されるには、「その会社には存在しないレベルの営業テクニックや実績を持つ」という社内で即戦力を期待されるケースが多いとは思う。

 ただ、会社側が「経営改革に伴う組織や人事制度の一新」や「新規事業への参入に伴う経験者の確保」を意図している場合は、異業種からでも「転職」できる可能性は高まる。

 

 それでも、採用する側が重視するのは、「求職者が何を実績として残し、会社にどのように貢献してくれるのか」だろう。

 転職希望者が、自身のスキルアップを目指していて、目標がしっかりしていることが採用に有利に働くことは間違いないはずだ。

 

 ただ、これは知り合いの採用担当者から聞いた話だが、面接で重視しているのは「その人物の過去、現在、未来にわたって生き方に一貫性があるかどうか」だという。

 

 スキルアップは重要だが、やみくもに頑張ればいいというものではない。転職を目指すのであれば、自分の将来設計をしっかり固めたうえで、説得力のあるスキルアップを目指すことから始めるべきなのだろう。

 

親会社の人事で使えないのは「天下り役員」だけではない

なぜ親会社からの使えない「天下り役員人事」はなくならないのか(ダイヤモンド・オンライン)

秋山進:プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役

 

 日本企業の特に子会社を多く抱える大企業で慣例的に行われてきた「天下り役員人事」の不合理性を指摘する記事「なぜ親会社からの使えない『天下り役員人事』はなくならないのか」が9月23日付けのダイアモンド・オンラインに掲載された。

 

 天下りと言えば「高級官僚」が代名詞だが、記事では民間企業を引き合いに出している。天下り人事の問題はすでに広く世間に知られていることだが、記事では「グループ会社の社長人事は、経験値やスキルに照らしたうえでの最適配置ではなく、本社役員の処遇問題として処理されている」と指摘している。

本人の能力に関係なく、その時点の本社の役職に見合った子会社の役職(名目上の地位は上)に異動することに起因しているという解説だ。

 

 本人の能力に関係なく、子会社の役員や管理職に登用されるのだから、押し付けられた子会社はたまったものではない。

 大体の場合、親会社出身というプライドがある一方で、子会社に飛ばされたという負い目もあるので、新天地で心機一転実力を発揮しようという人間はまずいない。

 

 さらにやっかいなのは、親会社のルールが絶対だと思い込んでいて、子会社の実情も知らないのに、現場の仕事の進め方に文句をつける輩が多いことだ。これならまだ、何もしないで役員室に閉じこもっていてくれた方がありがたい。

 

 子会社の立場からすれば、親会社からの天下り人事は「仕事を確保するための人質」のようなものなのだ。仕事を発注してもらうためのコストと割り切れるからこそ、役に立たない天下りを受け入れているのであり、元々仕事で活躍してもらおうなどとは期待していないケースが多いだろう。

 

 さらに言えば、この天下り問題は「低年齢化」しているという現実がある。富士通など名だたる大企業が45歳をターゲットにリストラを始めるなど、本社要員の削減は50代以上の幹部社員だけではなく、その下の中間管理職世代まで進行しているのだ。

 

 もちろんリストラなので、完全に退職して別会社に移籍する人も多いだろうが、少なからぬ人材が子会社に向けられている可能性はある。

 こうした若い世代の「子会社への転籍」の最大の問題点は、本人の気力・体力は十分なのだが、仕事の方向性が「親会社」に向いていることだ。つまり、子会社で実績を上げれば親会社に復帰できるという「希望」が心の支えなのである。

 

 以前は「修行」と言う意味合いを兼ねて本社復帰を前提にした、海外を含む関連子会社への出向は珍しくなかったが(給与格差は本社が補填していた)、現在の本社にはそんな余裕はない。

 

 本社からきた人材の叶わない夢のために「本社向け」の仕事に追い回される子会社の社員には理不尽としか思えないだろう。

 しかも本人が本社に戻ることはないと自覚した段階では、すでに現場は疲弊しきっている。管理職も社員も新たな事業に取り組む気力は残されていないはずだ。現場にはペンペン草すら生えていないかもしれない。

 

 記事では「社外取締役」の出番だと主張しているが、必ずしも外部から招へいしたプロの経営者が成功のカギになる訳ではないことは、日産自動車、オリンパス、LIXILなどの例で実証済だ。

 

 安易に外部の力に頼ろうとする経営者の気構えも問題だろう。大企業であれば様々な事情で「埋もれた」優秀な人材も多いはず。彼らを「発掘して生かす」人事を考えることが先決ではないだろうか。

サラリーマンが「不動産大家」を目指すのは無理、REITも視野に

「不動産投資」は金持ちほど圧倒的に有利な理由(東洋経済オンライン)

加谷 珪一 : 経済評論家

 

 不動産投資で儲けることができるのは、「すでに土地を持っている」「土地を買える資産がある」などお金持ちほど有利な状況を解説する記事「『不動産投資』は金持ちほど圧倒的に有利な理由」が9月22日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事の言いたいことをまとめると、「土地・建物を購入するのに銀行借り入れをする時点で、すでにサラリーマンは不利な条件からスタートすることになる。儲からないのは当然」ということになる。

 

 読後の感想を正直に言えば、サラリーマン大家を目指す人向けに「警鐘を鳴らす」本は、「投資を勧める」本に比べれば少ないとはいえ、それなりに存在する。

 

 今回の記事に書かれていることは、すべて事実であり、その意味ではブームに乗ってサラリーマン大家を目指す人には、是非とも読んで頂きたい内容ではある

 

 とはいえ、解説する事象が「サラリーマンの不動産投資」というテーマに限定されるだけに、既読感があるのも事実。具体的には昨年11月に出版された「不動産投資にだまされるな-『テクニック』から『本質』の時代へ」 (中公新書ラクレ)と、かなり内容がダブっていると感じた。

 

 本書については私も出版直後にAmazonで購入して、「不動産投資は『投資』ではなく『事業』だ。サラリーマンは圧倒的不利」というタイトルでレビューを書いているのだが、このレビューに書いた内容と記事がほぼ被るのである。ちなみに現時点でも私のレビューは「トップレビュー」を維持している。

 

 という訳で、不動産投資の初心者にはわかりやすい内容ではあるのだが、多少なりとも投資の実情を知る人にとっては、特に目新しい指摘は見当たらないのが実感だ。

 

 加えて言えば、今回の記事は個別物件の「大家さん」になることをテーマにしているので、最後に「つねに一定の資金を確保しておく必要がありますし、話を通しやすい銀行をいくつかキープしておくといった措置も重要となります。何より、無数の案件をつねにチェックするという気の遠くなるような作業が求められでしょう」と結んでいる。

 

 これを読むと、「サラリーマンは不動産投資に向かないということなのだ」と思い込む人もいると思うので、この記事は直接「大家さんになる」ケースを想定しており、サラリーマンが不動産投資をするのは「間接的」な不動産投資もあるということは指摘しておきたい。

 

 具体的には、東証に上場しているREIT「Real Estate Investment Trust」である。これは不動産投資に特化する会社(不動産投資法人)を上場させたもので、投資家から集めた資金を物件に投資し、そこから得られる賃貸料や売却益などを投資家に分配金として配分するという仕組みである。

 一般の事業法人に比べて、収益の90%以上を分配すれば法人税がかからないため、収益のほとんどが投資家に分配されることになる。

 

 ちなみに現時点で上場しているREITはインフラファンドを含めて69銘柄。肝心の予想利回りだが、いちごホテル(3463)の7.5%台は別格にしても、5%を上回る銘柄は9もある。最も手堅い投資先とされる日本ビルファンド(8951)でも、利回りは2.6%台だ。

 

 しかも投資先の物件は、銘柄によって「住居」「ホテル」「商業施設」「物流倉庫」など様々なうえ、各銘柄が複数の物件に投資するので「分散効果」も見込める。

 

 加えて10万円台から投資できる銘柄も少なくない。個別の物件に投資するのは個人的には空き家リスクなどを考えれば「時限爆弾」を抱え込むようなものだと思っているが、REITであれば、投資を始めるための資金も少なくて済むし、自動的に分散投資となる。しかも「管理」という面倒くさい業務から解放される。しかも個別物件と違って金融商品なので取引所で換金するのも容易だ

 

 個人的にも、数年前からREITには10数銘柄を継続して投資しており、年間の分配金収入は10万円以上だ。

 定年までには退職金を含めて、現在の5倍以上に投資する予定で、現在の利回りが維持できると仮定すれば、年額60万円、月額にして5万円程度の副収入が見込める(税金は考慮していない)。これは公的年金の生活費不足分を補う効果は十分あると思う。

 

 ただ気を付けたいのは、REITは今年に入って上昇を続けており、指標となる東証のREIT指数は年初の安値から現在までで20%以上値上がりしている。

 利回りは魅力的に見えても、REIT価格自体の下落の可能性は想定しておいた方がいいだろう。安く買った方が利回りは高いことは言うまでもないが。

 

 という訳で、ぐだぐだと書いてきたが、言いたことはサラリーマンが不動産投資をするなら、個別物件だけではなく、REITという手法もあるということだ。

 何千万円も一気に投資して、多大なリスクを背負う以外にも、手元の資金で手軽に投資できる方法はあるのだから、検討してみる価値はあるのではないだろうか。

 もっとも投資はあくまで「自己責任」であることは留意してほしい。

パナソニック、販売中止の液晶4Kテレビを改良して新モデルを発表

ダブルチューナーを搭載、Amazon  Alexaにも新たに対応

 

 前回(9月17日)の当ブログで、「パナソニック、売れ筋の液晶4Kテレビを販売中止」として同社が、販売好調なテレビを突然販売中止としたことを伝え「10月にも次期モデルが発売されるのではないか」との市場での噂を伝えたが、早くもその通りの展開となった。

 

 パナソニックは、20日「4Kチューナー内蔵ビエラ 2シリーズ7機種を発売」とするスレスリリースを発表、すでに生産完了となったGX850シリーズなどの事実上の後継機種GX855シリーズを10月18日から発売する。

 

 発売の一カ月前にテレビの新製品を発表するのが、一般的に早いのか遅いのかはよく分からないが、前モデル(GX850)の場合、発表は今年1月9日、発売日は1月25日だったから、発表から発売までの期間は16日、今回の28日というのは早い発表と言えるのではないか。

 

 想像するに、4Kテレビの販売台数ペースが急速に上向きになっていきたので、早めに発表することで、GX850シリーズの販売中止による他社への買い替えを阻止する狙いがあると思われる。

 

 さて、今回発表になった液晶テレビ4KビエラGX855シリーズだが、その特徴の詳細や評価についてはカタログや専門雑誌を見て頂くとして、個人的な感想を言えば、

  1. 4Kダブルチューナー内蔵で新4K衛星放送の裏番組録画に対応
  2. リモコンに音声操作マイクを内蔵
  3. AmazonのWorks with Alexaを搭載(スマートスピーカーで利用可能)

の3点だと思う。

 

 プレスリリースやカタログには「画質」「音質」の性能アップを多く記載しているが、前回のプレスリリースと比較したが、変化は見られなかった。

 

 大きな変更点の一つ目のダブルチューナー搭載は今回最大の目玉。これで他社と同等の機能を備えることになった。20日からラグビーのワールドカップが始まり4Kでも放送されることで、4Kへの注目度が高まり、テレビ局も番組数を増やしていくのは確実。

 開催初日に合わせて、新モデルを発表したのは「偶然」だろうか。

 

 次の特徴が、リモコンへのマイク機能の復活。これは前々モデルにあった機能だったのだが、前回のモデルチェンジでこの機能は「有機EL」テレビにのみ搭載されたのだが、ユーザーの復活要望が大きかったと思われる。

 メーカーとしては全モデルで音声認識機能に優れるGoogle アシスタントに対応に対応させたことで、「良し」と考えたようだが、手元のリモコンで操作するというニーズは根強いらしい。

 

 3つ目が、リモコン機能にも関連するが、Amazonのスマートスピーカー「Alexa」のアプリに対応したこと。今自宅にはAlexaが3台、Google Homeが1台あるのだが、メインで利用しているのはAlexaなので、この機能追加はありがたい。

 細かい点を言えば、全モデルでは発売後のバージョンアップで対応したAmazonのビデオ配信サービス「prime video」にも当初から対応している。

 

 気になる価格だが、購入予定の49型はAVウォッチなどによれば、16万円前後とのこと。これは全モデルGX850が20万円台でスタートしたことを考えると安い。

 

 幸か不幸か、最近になって自宅のプラズマテレビの寿命が一段と迫ってきただけに、発売以降に価格ウォッチを続けて、冬のボーナスシーズン辺りでの購入を真剣に考えている。

経済は「広域化」、行政は「狭域化」で都道府県の再編は必至

人口急減時代の「日本」という国のたたみ方(東洋経済オンライン)

佐々木 信夫 : 行政学者、中央大学名誉教授、法学博士

 

 日本の人口減少への問題提起をする書籍や記事をここ数年だいぶ見掛けるようになったが、47都道府県の在り方を問う記事「人口急減時代の『日本』という国のたたみ方」が9月20日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 近年では、人口減少という視点から日本の将来への「絶望」的な衝撃を与えたベストセラー「未来の年表」を2017年に出した河合雅司氏は、今年6月に「未来の地図帳」を出版、47都道府県制度の維持は不可能との前提で、対応策などを提言している。

 

 確かに記事にあるように、人口100万人に届かない県が10もあること自体問題だと思うが、これが2045年には19県とほぼ倍増し、全体の半分近くを占めるとなればさらなる大問題である。

 一方で、「未来の地図帳」によれば、東京都は1360万人、神奈川県も831万人を抱える見通しで、都道府県間の格差はもはや既存の行政の仕組みでは解決できないのは確実だろう。

 そもそも1890年と言う130年近く前に府県制によって現在の47の単位に分割されて以降、名称変更以外何の変革もなかった都道府県制度が制度疲労を起こしているのは間違いない。

 

 地方活性化のためのアクセス向上を狙って整備してきた「新幹線」「高速道路」「地方空港」は、逆に地方から都市への人口移動という結果となり、格差はさらに拡大した。

 

 国全体として長期的な「人口減少・高齢化」が避けられないなかで、では「どのように対応するか」については、現在は諸説あるのが現実だろう。

 

 ひとつは「道州制」。これは昭和の初期から論議されており、著名人では経営コンサルタントの大前研一氏等の他、最近では元大阪府知事の橋本徹氏が著者「実行力」で主張している。

 これは現在の47を10以下の行政区分にまとめて、広域行政による効率化を図るという狙いが主たるものだ。

 比較的わかりやすい考え方だが、地元の「県」が地方自治の代表でなくなることや、「国」主導の再編への抵抗などもあって、実現への動きは鈍い。

 

 一方、近著「未来の地図帳」で河合雅司氏は、人口減少への対応策は、自治体の「広域化」ではなく社会の「ドット化」とすべきと主張している。

 これは既存の市町村の枠組みに囚われずに、もっと狭いエリアで地域の特性を生かした「ミニ国家(王国)」のような集落を多数作るというものだ。

 道州制とは真逆の主張となるが、この考え方自体過去にあまり見られなかったこともあって、地方活性化のテーマとしては盛り上がりには欠けている気がする。

 富山市のようにコンパクトシティ化で成功した例もあるにはあるが、まだ少ないし、さらに規模の小さいドット化した自治体が現実問題として機能するのかという疑問も影響しているだろう。

 

  また記事の著者・佐々木信夫氏が9月に出版した「この国たたみ方」で考察を述べていて、Amazonの内容紹介によれば、その主張の基本は「道州制」の導入と、東京・大阪の「二都構想」にあるようだ。

 記事には、「移動のコストが高すぎる点も分散の進まない要因です。こうした人の流れを変える構造改革こそが、日本がいま最も必要としている国家政策」とあるように、「人の移動」による地方活性化の推進が考え方の柱としている模様。

 

 個人的な考え方を述べれば、都道府県の「機能的」な合併は不可欠だと思う。水道事業やゴミ回収、図書館などの公共事業運営などは民間委託が進みつつあるとは言え、コスト削減は管轄の市町村の範囲に留まり、効果は限定的だ。

 いずれの事業も市町村の合併で事業規模が拡大すればスケールメリットが働いて、より効率的かつ質の優れたサービスが可能になる。

 

 「機能的」と言ったのは、道州制などで県が統合されても、地域の名称として「象徴的」に「県」の名前を残せば、抵抗も弱まるのではないかと思うからだ。

 

 そもそも戦後すぐの昭和22年には10,505もあった市町村の数は、その後「昭和」「平成」の大合併を経て、現在は1,718まで減少している。率にすれば84%もの減少だ。

 当然ながら合併によって、首長や議員の数も減った訳で、市町村が抵抗を乗り越えて合併を繰り返したのに、県の仕組みは絶対に維持するという主張には、無理がありすぎる。

 

 ただ都道府県の再編は、あくまで見た目の「カタチ」の問題ではなく、合併による人口減少の歯止めや産業の活性化などの「中身」が伴わなければ意味はない。

 鉄道、道路など既存のインフラを有効活用しつつ、それぞれの地方がその特性を生かした活性策を自ら計画、策定し、実行できるように、政府も積極的に後押しをすべきだと思う。

 内閣改造で新たに地方創生担当大臣となった北村誠吾氏には、「問題発言」ではなく「地方活性」というカタチで実績を残してほしい。

 

第一印象が決め手?、就活生の採用サイト評価

就活生が選ぶ「印象のよい採用サイト」20社(東洋経済オンライン)

佃 光博 : HR総研ライター

 

 最近の就活生は、就職先の企業を研究するにあたって「採用ホームページ」を最も利用するらしい。その採用HPの学生の評価をランキングした記事「就活生が選ぶ『印象のよい採用サイト』20社」が、9月19日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 同日に掲載された「40歳年収東京都ワースト500社ランキング」に比べると対象企業の数がかなり少ないような気もするが、1人1社で有効回答数は1890人ということだから、ランキングとして公表するには妥当なのかもしれない。実際上位20社といっても、21ポイントの同数で18位に3社も入っているので、これ以下のランキングはあまり意味はなさそうだ。

 

 上位2社は「ANA」「JAL」の航空会社大手2社。記事には「学生が採用ホームページを評価する基準は「見かけ」である」とあるが、ANAのページを見る限り、トップページに特に派手に目を引くような仕掛けはない。会社情報、仕事紹介と続いたあとに「社員インタビュー」のコーナーがあり、リンク先で業務別に47人が紹介されている。この社員のコメントが充実していて一人当たり約2000字もある。

 新卒の就職希望者にとっては、売上高や利益などの数値データよりも、実際の社員のコメントの方がイメージしやすく参考になると思えるので、これは親切な対応だと思う。まあ会社のイメージアップのバイアスがかかっていることは前提だが。

 

 一方のJALだが、冒頭に「3分で知るJAL」として会社概要を数値データを解説するコーナーを設けているが、その直後にあるのは「トップメッセージ」。まずは経営トップの考え方を知ってもらおうというスタンスなのだろう。写真付きながら文字数は約2600。

 その先にスクロールすると「若手社員座談会」として、社員5名による会話が掲載されている。文字数は約3000字。一人あたりにすると約600字で、ANAの約3分の1だ。

 

 ここまではあくまで、若手社員のコメントをどう扱っているかという観点から見た分析だが、「トップの意思」か「現場の声」のどちらかを優先するかで会社の姿勢の一端がわかるような気もする。いうまでもなく、これはどちらが良い悪いという話ではなく、会社の考え方の違いの話だ。

 

 参考までに、両社ともに親会社ではなく企業グループとしての採用サイト(ANAJAL)を見ると、どちらも最初に派手な動画や大きな画像が目に飛び込んでくる。記事の学生コメントにある「動画が魅力的」というのは、こちらのサイトのことを言っているのではないだろうか。

 「インパクト」があるのは確かだが、そこから先に進むのにやや手間取った。TVコマーシャルとは違うのだから、もう少し使い勝手に配慮があってもとは感じた。もっともスクロールすれば済む話ではあるのだが。

 

 今回はランキングの上位2社の採用サイトを取り上げたが、同業でもその構成を比べることで方向性の違いは、多少把握できると思う。

 

 ただ、あくまで採用サイトは「応募する新卒を集めるための広告」という側面があるのは確か。企業分析の取っ掛かりにはいいが、トップや社員のコメントはあくまで「参考情報」として、業界や会社の将来性を幅広い視点から分析した方がいいと思う。

 

 新卒でも職種別の採用が増えつつあるとはいえ、総合職で採用されれば、希望通りの職場に配属されるかの確証はないのが一般的。であれば会社全体としての未来を分析した方が現実的だろう。

 

 

「強制転勤」を続ける会社は人材難に将来直面する

不都合だらけ「強制転勤」はこうして撲滅できる(東洋経済オンライン)

横山 由希路 : フリーランスライター・編集者

 

 「転勤」というと、いわゆる「栄転」「左遷」というイメージのほかに、「志願」「強制」という側面があると思うのだが、918日付けの東洋経済オンラインに掲載されたのは、このうち「強制」転勤の影響と企業の対応について書かれた「不都合だらけ『強制転勤』はこうして撲滅できる」というタイトルの記事だった。

 

 基本的なスタンスは強制転勤によって、共稼ぎや単身赴任の場合、仕事や育児で様々な問題が生じる、ということだ。

 記事にあるように、共稼ぎの場合、夫が転勤する場合に妻・家族が帯同すれば仕事を辞めるというのが現在ではまだ一般的だし、現地での仕事には就労ビザの問題がある。単身赴任となれば、家事・育児はすべて妻の負担になってしまう。

 

 確かに、共稼ぎ世帯の方が専業主婦世帯を上回っている現状では、「収入の減少」「妻の家事等の負荷増加」はつらいものがある。子育て世代では住宅ローンの返済もあるだろうし、夫婦で分担していた家事・育児が妻一人で対応するのでは、生活に余裕がなくなるのは確実だ。

 

 この大きな負荷の要因として、記事では「労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、国内転勤で赴任1週間前、海外でも赴任1カ月前の辞令がザラ」という調査結果を紹介している。

 これは個人的な見方だが、特に金融機関の場合「赴任通知」が一週間前というのには事情がある。あまり表ざたにはなっていないが、顧客との間で金銭的に不適切な関係があった場合に備えて、社員がその取引の隠ぺいにかける時間をなくすという意図があるという話を、当事者から聞いたことがある。

 ちなみに、同機構のレポート「企業における転勤の実態に関するヒアリング調査」によれば、ある金融業では転勤の内示が赴任「当日」という事例もある(p29)。

  一般的な転勤者にとっては迷惑な話だが、こういう事情があることも指摘しておきたい。

 

 記事中ごろからは、(他社に勤める夫の強制転勤)への対策として、サイボウズで最近はやっているという女性の「リモートワーク」の事例を紹介してる。具体的にはイタリアのナポリで仕事をする女性なのだが、これは同社が24時間クラウドサービスを提供するという事業を手掛けていることも影響しているはずだ。

 

 まだこういった事例は少ないだろうが、夫婦共稼ぎ世帯が今後も増加傾向にあることを考えれば、将来の結婚を考える新卒、強制転勤の可能性に怯える世帯などは、待遇を重視して会社を選別する傾向が強まるだろう。

 終身雇用制度の崩壊、転職への抵抗感の低下、仕事とプライベートの両立などで、自分や家庭をより重視する若い世代は増えている。

 

 しかもカネカの事例のように、転勤に伴う不都合な関係がSNSで拡散するようになり、今まで表に出てこなかった会社側の対応が、世間に広く認識されるようになった。「悪い」評判が広まれば、「良い」人材が集まらなくなるのは言うまでもないだろう。

 

 この問題でカギとなるのは会社の人財部門及びそれを統括する経営陣の意識だろう。現場の若い世代には当然危機意識はあるだろうが、経営者の意識が変わらなければ「強制転勤」問題は解決に向けて進展しない。「業務命令なのだから転勤に従うのは当たり前」という前時代的な意識では、社員は納得しなくなりつつある。

 

 有名大企業の一部はその知名度と社会的ステイタスから危機感が薄いかもしれないが、多くの新卒の卒望動機はすでに「会社名という他者の評価」よりも「自分の価値観によるスキルと生活の向上」に変化してきている。人材の流動化も加速するのは間違いないはずだ。

 

 もう数年もすれば、「リモートワーク」「サテライトオフィス」「個人事業主契約」といったスタイルは一般化しているだろう。

 その観点から見れば、組織が硬直化しておらず、経営陣の考え方も柔軟な社歴の若い中小企業の方が、対応力という点では有利かもしれない。

パナソニック、超売れ筋の液晶4Kテレビを半年で販売中止

モデルチェンジで好調な販売を加速か? 

 

 売れ行きが好調な4Kチューナー内蔵型テレビ市場で、抜群の売り上げを誇っていたパナソニックの最新型液晶テレビが、発売から半年余りで突然販売中止となった。

 

 その機種は「TH-49GX850」。他の画面サイズも含めて、すでにメーカーのWebサイトでは生産完了商品となっている。このテレビ、4Kチューナー内蔵のほかに、AI機能の搭載や、転倒防止スタンドなどが評価されて、調査会社BCNの8月26日から9月1日までの実売台数ランキングでは第1位だったほどの超人気の機種。雑誌「家電批評」などでも高評価だった記憶がある。

 

 実は自宅の、今観ているパナソニックのプラズマテレビが壊れかけているので、1月の発売当初からこの機種の価格変動をウォッチしてきたのだが、当初20万円台だった価格は5月以降急速に下がり始め、6月には一時12万円台まで下落した。その後やや価格は持ち直したものの、8月末には家電量販店のWebサイトでは「取り扱い中止」「生産完了」などの文字が出始め、9月に入ってカタログからも消えたというのが、これまでの経緯だ。

 

 ネットでは、「生産予定分を販売し終えただけ」とか「モデルチェンジがあるのでは」といった噂が流れているが、真相は不明。10月には新型機を発売するという予想も流れている。

 

 これらの話をまとめて類推すると、パナソニックのTH-49GX850は市場では高評価だったが、4Kチューナーが1つで裏撮りができない(他社は2チューナー内蔵)。売れ行きが好調なうちにマイナーチェンジして仕様を強化し、ライバルと同機能でさらに販売を伸ばす、というメーカー側の意図があるのではないかと思う。

 

 でなければ、売れ行き絶好調のモデルを半年やそこらで販売中止にするメリットがない。ちなみに現在は市場の残っている在庫品が14万円台で出回っているが、新機種の登場を考えると、ここは待った方が得策だろう。

 

 もうひとつ気になるのが、次世代の4Kテレビ「有機EL」の動向だ。パナソニックのカタログを見れば、有機ELへの製品シフトを狙っているのは一目瞭然で、液晶は隅に追いやられている。キャンペーンの2万円キャッシュバックも「有機EL」の最上位機種のみだ。

 

 確かに店頭で同じパナソニックでも有機EKと液晶を並べて比較すると、「黒色」の表現力は全然違う。しかも一番安いモデル「TH-55GZ1000」なら23万円台なので、先の液晶モデルと10万円程度の差しかない。

ただ、55型以上の製品しかないことと、パネルの生産が韓国LG1社独占というのは昨今の日韓対立問題を考えると不安要因ではある。長期の利用で「画面が焼き付く」という問題も解決されたとは言えない状況らしい。

 それでも有機ELは、感覚的には液晶以上のスピードで、価格下落が進んでおり、価格差がさらに縮まれば、画質では圧倒的に優れている有機ELの普及が進む可能性もある。

 

 昨年末にBS4K放送も始まり、今年はラグビーのワールドカップなどもあって4Kコンテンツも拡充傾向、さらに言えば、約10年前の家電エコポイント制度でテレビを買い替えた層のテレビが、そろそろ寿命を迎えつつあるということもあって、4Kテレビの普及度が加速するのは確実。

 実際に、4K放送を受信できるチューナー内蔵型の薄型テレビが、5月の販売実績では4K以上の解像度のテレビの構成比が初めて50%を突破して、52.1%になったそうだ。

 

 来年のオリンピック・パラリンピックに向けて、今年冬のボーナス、4月の新年度、6月の夏のボーナス商戦といった節目で、さらに4Kテレビの普及に弾みが付くとこは間違いないだろう。

 

 個人的には、10月に出ると予想されるパナソニックの液晶の新型機の価格が落ち着いてくる年明け頃の購入を検討しているが、有機ELテレビ製品が液晶にかなり近い水準まで下落すれば、選択は悩ましくなる。

 

 最後に、ここまで読まれた方は「何故そこまでパナソニックにこだわるのか」とう疑問を持たれるかと思う。特に東芝レグザの高級機の評判は総じて高い。

 これには理由があって、10年前にパナソニックのプラズマテレビと同時に同社のBDレコーダーを購入したのだが、子供がまだ小さくてリモコンが行方不明になることが頻繁にあった。

 リモコンなしでは操作できないので、対策として「テレビ」「ビデオ」の各純正リモコンを3つづつ計6個別途購入したのだ。当然ながら同じメーカーなら、チャンネル切り替えや音量調整などの基本機能は新機種でもそのまま使える。これが最大の理由である。

 もちろん「赤色」などの発色が鮮明で、Amazonプライムにも対応、リモコンが他社よりも大きくて使いやすいという利点もあるが。

 

 とにかく今は、10月と噂されるパナソニックの新製品に期待したい。

高齢者をターゲットにしたメルペイの戦略は奏功するか

メルペイが「巣鴨地蔵通り」を占拠した真意(東洋経済オンライン)

長瀧 菜摘 : 東洋経済 記者

 

 スマホ決済の大手「メルペイ」が、巣鴨という「おばあちゃんの原宿」として知られる商店街でシニア層向けのキャンペーンを展開しているという。この状況を紹介する記事「メルペイが『地蔵通り』を占拠した真意」が9月16日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 メルペイは、これまでも原宿や高円寺で同様のキャンペーンを行ってきたが、シニア向けに限定するのは初めてだそうだ。初日には「メルカリ・メルペイ講座」を実施したようだが、参加者は7名に留まった。

 一見少ないようにも思えるが、メルカリが定期的に開催しているシニア向けの交流イベントの定員は20人とのことだから、普及率を考えれば「想定内」の人数かもしれない。

 

 もっともメルカリの本意は、スマホ決済「メルペイ」の普及というよりは、本業の「メルカリ」の普及を広めて、その結果メルペイが利用されるケースが増えればいい、と考えているようだ。

 

 記事によれば、メルカリの取扱高は2019年4~6月の平均で2.6割の増加だったが、50代以上の利用者は6割増と際立っている。フリマを使う高齢者は急速に増えており、それが今回の「シニア向け」キャンペーンに繋がった形だ。

 

 では、どのような商品を高齢者がメルカリで売買しているのかが気になるが、圧倒的に多いのが「生前整理」だという。

 確かに記事にもあるが、ブランド品や骨とう品、書籍などをリサイクルショップに持ち込んでも買取値は極めて低い。特に服飾品に至っては「グラム当たりいくら」の世界だ。私も経験があるが、持ち込んで超安値で買い取られた商品が、その数倍から十数倍の価格で売られているのを店頭で見て、二度とリサイクルショップは使わないことに決めている。

 店頭によくある「高値買取」の看板は虚偽表示だと、消費者庁に訴えたいぐらいだ。

  その観点から、メルカリがシニア層が生前整理で得た売上金を、メルペイで使ってくれれば、メルペイの普及にも繋がるというのはよく考えられたストーリーではある。

 

 以上を踏まえて個人的な見解を述べると、メルカリのシニア利用度は今後も高まるが、メルペイへの波及効果は限定的だと思う。

 

 その理由だが、まずフリマ市場では年代を問わず、買い手同士の「競り」を前提にした「ヤフオク」よりも、自分の売りたい価格で売りやすい「メルカリ」人気が集まっているのは事実。

 ただし、高齢者がメルカリの売上金を、街中の商店街でメルペイを使って支払うかは別問題だろう。

 

 最大のネックは、スマホ決済がQRコードを使ったシステムで、金額の入金⇒QRコードの読み取り⇒決済の確認と言う「手間」がかかることだ。

 

 ちなみに私は50代後半だが、スマホ決済を一切登録も利用もしていない。コンビニなどでの少額決済は、電子マネーSUICAやNANACOの方が、タッチひとつで圧倒的に便利だし、1000円を超える決済は、その店舗が会員向けに発行するクレジットカードを利用する。こちらも店員がカードを読み取り機にスッと通せば決済完了だ。加えて店舗のポイントも付与されることが大半だ。

 基本的にサインも確認も必要ない(本来レシートの確認はすべきなのだろうが)。しかも不正利用されたら被害はカード会社から保証される安心感もある。

 

 あくまで「慣れ」の問題という意見もあるだろうが、「カードでピ!」で即時完了と、「アプリ起動⇒金額確認⇒決済処理」とでは、利便性に大きな格差があるのは事実。

 

 特に高齢者は「気が短い」「端末の操作に不慣れ」「新しいモノに消極的」という傾向が無きにしも非ずで、自分の好きな時間に自分のペースで利用できる「メルカリ」と、後ろで待っている客の視線を気にしながら手間のかかる「メルペイ」では、普及するスピードの差が相当大きいはずだ。

 

 政府もキャッシュレス化を推進する立場だが、その選択肢はQRコード決済だけではないし、期間限定ながら電子マネーなどにもポイントは付く。

 

 結果はまだ見通せないが、「メルカリ」はシニア層がけん引役となって成長するも、「メルペイ」は競合他社の多さもあって、メルカリほどの普及は見込めないのではないだろうか。