如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

コンビニATMの成長に限界か――セブン銀は新型機を導入するも

セブン銀「オワコンではない」新型ATMの勝算(東洋経済オンライン)

藤原 宏成 : 東洋経済 記者

 

 個人的にはコンビニのATMは結構利用する機会が多い。言うまでもなく、銀行の営業時間外やATM専用店舗が閉まっていても利用できるためだ。

 ただ政府のキャッシュレス化の推進などもあって、現金への需要が減りつつあるのも事実。

 こうしたなか、ゆうちょ銀行に次ぐATM台数を保有するセブン銀行が新型ATMで勝負に出たことを紹介する記事「セブン銀『オワコンではない』新型ATMの勝算」が9月15日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事によれば、世界トップレベルの顔認証機能や本人確認書類を読み取るスキャナー機能などを搭載し、現金の入出金以外のサービスにも対応できるのが特徴で、2024年までにすべてのATMを置き換える予定だ。

 

 セブン銀行の社長は「『ATMはオワコン』という声も聞こえてくる。しかし、ATMも進化する」と力説しているが、個人的な感想を言えば、ATMの機能が「進化」しても、利用度は「退化」するのではないかと危惧している。

 

 その理由だが、最大の要因はやはり「キャッシュレス社会の進展」。セブン銀行は、メガバンクや地方銀行などのATM維持費用軽減へのニーズを取り込んで成長、加えて、セブンイレブンの日々の売り上げをATMに入金させ、店舗及び本部の売上金管理の手間とコストを軽減することで、これまで順調に成長してきた。

 

 この成長の根本にあるのが「現金」へのニーズだ。この現金の利用度がキャッシュレス化で下がるのだから、ATMとしては逆境にあるのは間違いない。

 記事でも最後に南都銀行の店舗外ATMの運営受注を紹介しているが、ATM事業の生き残りの最大の方策は、こうした自行で管理しきれない地銀などの「ATMの運営受注」に頼らざるを得ないのが実態ではないだろうか。

 

 その「現金」を前提としたATM受注ビジネスも、今後地銀の合併等による銀行数の減少などで将来の見通しは甘くないはずだ。しかも今後は同業のローソンもATM事業に参入、さらに環境は厳しくなる。

 

 しかももとはと言えば、親会社のセブン-イレブン・ジャパンは、スマホ決済「7pay」の不祥事でケチが付いたとはいえ、電子マネーnanacoでキャッシュレス化を推進してきたコンビニの第一人者でもある。

 今回の7payの撤退を受けて、セブン-イレブン・ジャパンは急遽、nanacoの利用で取得できるポイントを、9月30日までの期間限定ながら、7月以前まで(100円で1ポイント)と実質的に同様の200円で2ポイントに還元率を戻している。7payの失敗で顧客が離散する可能性のあるnanacoへの繋ぎ止め策と考えれば、この期間は延長される可能性もあるだろう。

 また、あまり知られていないが、イトーヨーカ堂などグループ店舗での利用を前提としたnanacoと「一体化」や「紐づけ」が可能なクレジットカード「セブンカード・プラス」の年会費が最近無料になったのも、この一環だろう。新規加入のキャンペーン得点も盛りだくさんだ。

 

 つまり、セブン銀行を含むグループ全体を束ねるセブン&アイ・ホールディングスとしては、「脱現金化」の流れは避けられないものして、対応を進めているのだ。

 

 もうひとつの懸念材料は、顔認証機能を利用した新型ATMの利用価値。記事では、顔認証を活用した口座開設や、クーポンの配信などを計画しているようだが、セブンイレブンにはすでに、住民票や各種チケットの発行が可能な「マルチコピー機」が設置されており、個人的にも利用している。

 

 顔認証機能をより生かすというなら、「現金」利用を前提にしたATMよりも、マルチコピー機を「キャッシュレス化」対応の一環として取り込んだ方が効率的ではないだろうか。

 

 顔認証機能による口座開設には、「ペーパーレス」効果ぐらいしか期待できないし、そもそも今では銀行も証券も、顔写真や証明書類をスマホで撮って添付すれば、インターネットでも口座開設はできる。

 

 よくわからない新機能が「ヘルスケアサービス」だが、おそらく遠隔医療サービスの拡充を見込んで、現在のスマホのカメラでは不可能な「高度な画像分析技術」を生かしたサービスなのだろうが、想定される顧客はおそらく「高齢者」。

 そうそう頻繁にコンビニにいくとは思えないし、医師との会話もない「デジタルな」医療関連サービスがどこまでなじむか疑問もある。

 

 とは言え、メガバンクを中心に金融機関のATMの縮小は不可避な一方で、顧客の利便性を考えるとセブンATMへのニーズが当面根強いのも確かではある。

 新型ATMの機能がどれほどのものかはまだ見通せないが、世の中全体の「現金」縮小の流れを押しとどめるまでの効果がある、とまでは考えにくい。

 

 2015年には661円の高値を付けたセブン銀行の株価が、その後低迷を続け現在は半分以下の300円を割り込んでいるのは、ATM事業の将来性を暗示しているようにも見える。

ネット世代向けに「変貌」する結婚相談所に人気

20代の「結婚相談所」利用がじわり増える背景(東洋経済オンライン)

桜井 まり恵 : 恋愛・婚活アドバイザー

 

 結婚相談所というと、中高年世代にとっては「お見合いや社内恋愛で相手を見つけられずに至った最後の手段」的なイメージが強いのだが、若い世代には今「変貌した結婚相談所」がじわりと人気を集めている――こんな最近のネット世代の結婚事情を解説する記事「20代の『結婚相談所』利用がじわり増える背景」が914日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では婚活サービスを、利用者の割合の多い順に「ネット系婚活サービス」、次いで「婚活パーティー・イベント」、最後は「結婚相談所」と分類、特にSNSでのコミュ―ケーションに長けた20代、30台に「ネット系」が人気であると分析している。とまあ、ここまでは合点の行く内容で、ごく自然な話の流れだ。

 

 今回の注目点は、「結婚相談所に入会する20代の割合がここ数年でじわりと高まっていること」だ。記事によれば「ゼクシィ縁結びエージェントの20代の会員割合は、2015年の20.7%から2018年には25.9%へ増加」しているという。

 

 その理由として記事では、これまで会員の希望に沿った「相手を探す」ことが、相談所の担当者の仕事だったのが、現在はオンラインで自ら探せるようになり、これまでの「受け」だけから「攻め」も可能になったことなどを挙げている。

 

 このように、ネット世代の行動に適応する新しいシステムと、従来からある「独身証明書の提出が義務付け」という安心感がマッチして、若い世代の会員獲得につながっているようだ。記事によれば「担当相談員はジムトレーナーのように隣で伴走してくれる存在」だという。

 

 確かに「平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書」によれば「将来の結婚意向」で、将来結婚したいと考える20代、30代の比率は77.7%と高い(P37)。彼ら彼女らに受け入れられるサービスを提供すれば、会員は今後も増えるだろう。

 ただし、報告書では、20代女性の「結婚したい」比率が86%と高い一方で、30代男性は65.8%と実に20ポイント以上の差がある。

 

 特に30代男性は「すぐにでも結婚したい」は4.8%と性別、年代別では最低、一方「結婚するつもりはない」は12.6%とこちらは最高水準だ。年代的には「あきらめの境地」に達するには早すぎるし、時代に合わせて「変貌した」結婚相談所の認知度が男性の間で高まれば、この傾向が変化するかもしれない。

 

 個人的には、この記事と合わせて読んでほしいのが、同じく東洋経済オンラインの9月6日に掲載された「詐欺まがいの婚活に疲れ果てた男性の一大転機」だ。

 

 こちらは民間の婚活サービスに対して、過去の経験などから「しょせん営利目的でしょ」という警戒感から加入しなかった男性が、自治体の提供する「婚活サービス」に加入し、見事伴侶を獲得するという内容だ。

 

 民間の結婚相談所が、ネット世代の行動体系に合わせて、自分の希望する条件に合った相手を積極的に見つけられるように「変化」しつつあるのに対して、自治体のサービスは「加入する段階で身の程をわきまえない要求をする人には紹介はしない」という条件を「変えない」。

 

 これは、どちらが正しいという問題ではなく、利用する側が「自由度」を優先するか、「確実性」を志向するかの違いだろう。

 

 その点から考えると、婚活サービスは先の3つではなく、結婚相談所を「民間企業」「自治体」に分けた合計4種類に分類した方がいいのかもしれない。

 

 結婚したい若い世代が77%もいる以上、ニーズにあったサービスを提供すれば「成婚」の可能性は高まる。

 AIの活用や5Gなどネット環境のさらなる向上で、近い将来に第5、第6の婚活サービスが実現している可能性は十分にある。

 

 相対的な結婚志向の低い30代男性には、「あきらめるにはまだ早い」と言いたい。

最下位は月収21万円、年収300万円未満が11社も

40歳年収「全国ワースト500社」最新ランキング(東洋経済オンライン)

東洋経済オンライン編集部

 

11日に「最新!40歳年収」が高い500社全国ランキング」を組んだから、そのうち逆の「低い」ランキングも特集号するのではと考えていたら、やはり東洋経済は期待を裏切らなかった。

 13日付けの東洋経済オンラインに「40歳年収「全国ワースト500社」最新ランキング」が掲載された。

 

 集計対象となった企業の数は前回と同じ3227社で変わらないため、平均値も603万円と同じ。

 今回の記事で、注目したのはランキングの順位は当然だが、前回の「高い」企業バージョンと異なり、ランキング上位の会社の実名を挙げて記事化していないこと。

 

 記事の最後に「利益率の高くない事業を手掛けていたり、業績が苦しかったりと給料が高くない事情は、各社それぞれだ」としており、会社への配慮もあるのだろうが、想像するに最も懸念したのは、低い年収が広く世間に伝わることで、会社の評判が失墜し、経営危機の引き金になることを危惧したためだと思われる。

 

 東洋経済は「経済誌」が要であり、帝国データバンクのような「信用調査」が本業ではないことから考えても、無用なトラブルを避けるという意味では、数値データのみを提供して、その見方は読者に任せるというのは妥当な判断だと思う。

 

 とは言え、読者からすればランク上位の会社が気になるのは確か。ここはあくまで個人的な感想として、ランキングを評価してみたい。

 

 まず驚いたのが、年収(40歳推計)が300万円未満の企業が11社もランクインしていること。トップのトスネット257万円、月額換算では21.4万円だ。これでは日給1万のアルバイトを月に20日やるのと変わらない(社会保険などの負担は考慮しない)。

 このトスネットだが、本業は東北地区での警備事業。単体と連結の売上高(平成309月期)はそれぞれ約12億円と103億円だが、従業員数(平成30930日現在)で割ると一人当たりの売上高は各285万円と325万円になる。

  これはあくまで「売上高」だから各種経費を引いて、平均257万円の年収を支払っているのだから、経営としては立派とも言えるのかもしれない。

 

 第二位は、日本パレットプール。パレットとは倉庫での荷物輸送の際に荷物の下に置いてフォークリフトで運ぶためのプラスティックの板なのだが、これを必要な物流施設などに貸し出すのがメイン事業だ。

 業績面では意外と堅実で20123月期以降、2019年3月期まで8期連続で最終利益を確保し、配当も実施、今期は増収減益ながら配当額は維持する見通し。

 この業績から見る限り、ワースト2位の給与しか払えないような会社には見えないのだが、何か事情があるのだろうか。ちなみに株価は1800円台だが、予想利回りは3.76%もある。ただ、売買高が極端に少ないので、換金性は弱いかもしれない。

 

 第三位はカワサキ。大阪の服飾事業をメインとする会社だが、売り上げは20億円程度、社員数は連結でも104人と小規模な会社だ。

 気になるのは、Webサイトの事業紹介には、メインの服飾事業のほかに賃貸・倉庫事業の2つが掲載されているのだが、ニュースリリースを見ると補完的な事業と思われる「太陽光発電」関連のニュースで埋め尽くされている。今年に入ってからでは13本中9本が太陽光発電の「お知らせ」だ。

 新規事業に傾注するなら、きちんと事業紹介すべきだと思うのだが、「株主・投資家の皆様へ」の社長メッセージにも「太陽光発電」の「た」の字もない。

 Webサイト全体を見ても、どうにも「やらされている感」が強く、会社に「勢い」が感じられない。ついでに言えば、人材の採用活動は一切行っていないようだ。

 

 まあ、以下の企業も傾向は似たような状況のはずなので、この辺でやめておくが、注目したいのは第4位の太平洋興発

 創業1920年の歴史ある会社なのだが、何と平均年齢が58歳だ。従業員数は会社サイトによれば246名(2019331日現在)だから、60歳以上の社員がかなりの人数で存在することになる。求人募集もしていないので、このままだと2年後には社員の平均年齢が60歳の「還暦」という、聞いたことのない超高齢社員の東証一部上場企業が誕生することになる。

 

 以上、ランキングを個人的かつ主観的に解説してみたが、傾向としてはっきりしているのは、当然ながら「時代に取り残された事業を手掛けている」企業が多いことだ。具体的には、昔からの繊維、地方百貨店などだ。

 比較的社歴の長い会社が多いのも特徴で、創業時代から手掛ける事業が細りつつも何とか利益を出してきたうえ、社員数も少ないので人件費負担も少なく、現在まで生き残れたというパターンが多いように感じた。

 

 これらの企業が現状のまま大変身する可能性は低いが、第11位の堀田丸正のように、急成長したRIZAPグループに編入されるという「事件」が起きる可能性もある。親会社の意向次第で会社が様変わりする可能性もなくなくはない。

 過去にも、石綿のセメント管財を手掛けていた日本エタニットパイプという東証上場企業が、ミサワホームに買収されて、ミサワリゾートに社名を変更、ゴルフ場などのリゾート開発会社に事業転向した例もある。現在はミサワグループから離れ、会社名リソルとして東証一部に上場している。

 

 ただ、こういう企業は例外中の例外。次回のランキングでも大きな傾向は変わらないだろう。

「働き方改革」ならぬ「休み方改革」のススメ

「社員が休まない会社」が抱える根本的な問題(東洋経済オンライン)

岡本 祥治 : みらいワークス社長

 

 政府主導の「働き方改革」が注目され、認知度と普及が進む中、経営者視点から見た「休み方改革」のアドバイスを解説する記事「『社員が休まない会社』が抱える根本的な問題」が912日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 著者は、新卒でコンサルティング会社に就職、その後ベンチャー企業に転職、独立して会社を立ち上げている。

 休暇の取り方も、一定期間集中して働いてその後長期休暇というパターンから、常に朝から夜中まで働くというスタイルになったが、社員の規模が15人ほどになった段階で、家族を持つ社員もいることで休暇取得の重要性を再認識したようだ。

 

 この会社でも年末年始やお盆の休暇推奨や「ノー残業デー」などを設定したが、どこ会社でもあるように「休暇よりも仕事を優先したい」という人はいて、強制的な休暇取得に反発を感じる人もいるようだ。

 

 特に若い世代を中心に、仕事を自分で回せて、結果が評価される面白みを実感できるようになると、休みを取りたいとは思わなくなるし、休んでも結局自宅で仕事をしてしまうので、休暇の意味がなくなる。これは自分の経験だが、20代の半ばころにはタイムカード上は「有給休暇」として、実際は会社にきて仕事をしていたこともあったので、彼らの気持ちは理解できる。

 

 ただ長い目で見ると、仕事一筋で長い期間務めていると、休む習慣が薄れて肉体的、精神的に悪影響が出ないとも限らないし、何より「仕事」と「休暇」の区別というメリハリを付けることは、長い会社務めではとても重要になると思う。

 特に新しいアイディアや企画などは、仕事に集中している時よりも、休暇中にのんびりと別なことをやっている時に、ふと思いつくことが多いというのが実感だ。

 

 記事では、「休みを取りたがらない理由には、『他人に迷惑をかける』『自分がいないと仕事が回らない』などがあるようだ。しかし、実際はそんなことはない」としているが、その通りである。

 自分がいないと仕事が回らないなどというのは、「自信過剰」に過ぎない。仮に支障が生じるのであれば、それは経営側の組織運営のミスである。

 

 結論は記事にもあるが、価値観の多様化で「テレワーク」「正規・非正規の格差解消」「個人事事業主の増加」など働き方改革が進む中で、休み方も「まとめて長期」「毎月一定の期日」のように「強制ではなく、自ら選択する」という多様化が進むのだろう。

 

 個人的に以前から言っているのだが、小中学校の「出席扱いの休暇制度」を導入すれば、家族旅行が夏休みと年末年始に集中することも少なくなり、この時期渋滞する高速道路や高騰する交通・宿泊費用も安くなるはずだ。

 観光施設側にとっても、混雑が解消されるし、顧客が年間を通じて平準化するメリットがある。

 文部科学省は「義務教育」を盾に猛反対しそうだが、年間に数日休んだところで、どれほど教育に悪影響があるのか。官邸主導でどうにか実現してほしい。

 

 「働き方改革」と「休み方改革」は表裏一体の関係にある。現在は「働き方」に関心が集中しているが、「休み方」にももっと注目が集まってもいいはずだ。

 折しも11日の内閣改造で環境大臣に就任した小泉進次郎氏は、年明けに「育児休暇」を取得するとの報道もされている。

 このように政府のトップが率先して、休暇を積極的に取得することで、民間への波及効果が出てくるのであれば、ぜひとも歓迎したい。

財閥系不動産でも「年収格差」は凄まじい――住友不はランク外

最新!「40歳年収」が高い500社全国ランキング(東洋経済オンライン)

東洋経済オンライン編集部

 

上場企業を対象に各社の40歳社員の平均年収をランキングした記事「最新!40歳年収』が高い500社全国ランキング」が掲載された。

 

 40歳と言えば、仕事も自分の進め方を生かして活躍、大企業であっても役職にはついていてもおかしくない年代だが、バブル期の大量採用組が上につかえているうえ、最近は45歳を対象とするリストラも増えており、微妙な年次でもある。

 

 さて、ランキングの結果をみて、気づいた点をいくつか挙げたい。

 まず最大の特徴は、M&Aを手掛ける企業群だ。1位のM&Aキャピタルパートナーズ(40歳推計年収2920万円)をはじめ、5社がベスト10にランクインしている。

 

 これは案件を成功させることによる報酬が多額なため、担当した社員に支払われる「成功報酬」の占める比率が高いためだろう。

 しかもあくまで「平均」なので、3000万円以上受け取っている社員も少なくないと思われる。きわめて「実力主義」の会社なのだろう。

 

 確かに年収ベースでみれば、うらやましい限りだが、その仕事の実態は「想像を絶する」厳しいモノではなかろうか。儲かるビジネスなので大手、中小が入り乱れて激しい競争をしているはずで、様々な案件を手掛けながら、そうした努力が報いられるケースの方が当然少ないと思う。

 

 ただ業種としてみれば、中小企業を中心とする後継者不在問題は今後さらに高まるのは確実なので、M&A需要が高まるのは確実。成長産業のひとつとは言えそうだ。

 

 次に注目したのは、「総合商社」。昔から給与が高いのは有名で、三井物産などは海外赴任すれば「帰国したら家が建つ」などと言われていた。今回のランキングでも、上位15位までに大手5社がランクインしている。

 

 ただこちらは、先のM&A関連企業と違って、いまだにある程度の年功序列型の賃金制度が維持されているはずで、手掛けた仕事の成果が評価されることはあっても、それは「年収」ではなく「出世」に対してだろう。

 終身雇用も年功序列も制度面では解消される方向にはあると思うが、とりあえず「有名企業」「安定志向」の人には、いまだに魅力的な会社だと思う。

 

 さて、今回のランキングで最も興味深かったのが「財閥系の3つの不動産会社」の年収だ。

 実際に数値を見てみると、16位に三井不動産(1247万円)、18位に三菱地所(1221万円)と上位にランクインしているのに対して、マンション販売では最大手の住友不動産は上位500社のランキングに入っていない。

 ちなみにランキングの最下位(494位)の会社の年収は723万円なので、それ以下ということになる。

 

 気になったので調べてみたら、手元の日経会社情報によれば、住友不動産の平均年収は661万円だった。記事によれば今回のランキングの対象企業全体の単純平均は603万円ということだから、かなりこの「平均」に近い。

 

 会社に問い合わせたわけではないので、どのような理由でこの格差が生じるのかは不明だが、ネットの会社情報投稿サイト「カイシャの評判」によれば、住友不動産は「何歳になっても年俸一律300万円+高歩合率のインセンティブ」とのコメントが散見されたので、こういった基本給の低さが影響している可能性はある。

 

 住友不動産と言えば、全国、首都圏で分譲マンションの供給戸数は5年連続で日本一、その強力な販売力には定評がある。当然ながらそこで働く社員の労働環境も厳しいものがあるはずだ。

 同社は、新築マンションの販売で値引きしないことで有名だが、こうして高い利益率を確保する一方で、社員の年収を低くしてコスト抑えるというのは、利益を追求する「企業」としては株式市場で評価されるだろうが、社員をできるだけ効率的に安く使うというのは新卒の「就職先」としては、どうなのだろうか。

 

 昨今のように再規模な都市、マンション開発で大手不動産(デベロッパー)の仕事に魅力を感じる就職希望の学生も多いとは思うが、同じ「財閥系」でも、その待遇には大きな格差があることを知っておくべきだろう。

改めて問われる「社内失業者」の処遇

日本で「社内失業者」が増え続けている根本理由(東洋経済オンライン)

鳥潟 幸志 : グロービス・デジタル・プラットフォーム プロダクトリーダ

 

 「社内失業者」と呼ばれる正社員でありながら仕事がない状態の労働者の「傾向と対策」について解説する記事「日本で『社内失業者』が増え続けている根本理由」が9月10日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 かつては「窓際族」と呼ばれ、「部付部長」とか「シニア何たら」といった肩書で、部下も仕事もない名目だけの管理職は昔から存在したが、記事によれば2025年には500万人に達するそうで、改めてその存在と対策が重要になっているようだ。

 

 世の中の状況を見てみると、確かに「社内失業者」は増えている感はあるこの理由として希望者には65歳までの雇用が義務付けられた結果、多くの定年退職者が再雇用制度を利用して、同じ会社に留まっているものの、「役職」「部下」「権限」ははく奪されて、与えられた仕事へのモチベーションを喪失しているパターンが多いように思える。50代半ばで大半の社員がなる「役職定年」もこれに含まれる。

 

 記事のキモは後半部分の2つで、一つ目は「会社側」が、終身雇用制度の崩壊を前提に社員に自己啓発を促す意図から「異動によるキャリア発展の機会を作り、キャリアパスを考える機会を与えること」というもの。

 二つ目は、「個人の側」が、自分の人生を考えるうえで「市場環境や自分の相対的な能力を把握すること」だ。また、会社以外のコミュニティへの参加も推奨している。

 

 また、「営業、企画、オペレーション、どんな職種に就いていようと通用する汎用的なビジネススキル」の取得も推奨しているが、別の職場に長くいた人には、人間関係や創意工夫などのスキルが求められるこれらの職種への展開は、年齢的にも困難だろう。

 外部コミュニティへの参加も意図は分かるが、メンバーが50代の似たような経歴の持ち主ばかりだと、刺激は少ないし、結局「名刺交換会」で終わってしまうことも多いのではないか。

 

 とまあ、「社内失業者」問題に関する分析は、普通はここで終わってしまうのだが、この記事は最後に「実践的かつ具体的」なアドバイスをしている。

 それは「今やっている目の前の決まりきったオペレーションを“少しだけ”変えてみる」ということだ。「社内メールの文章スタイルを変える」といった小さい変化の積み重ねが、やがてモチベーションを変える契機になる、というアドバイスは「社内失業者」にとって実行するためのハードルは低いので、とりあえず行動する価値はあると思う。

 

 記事を読んだ感想としては、社内失業者の立場で満足している人は別にして、不完全燃焼やモヤモヤといった感情に悩んでいる人は、「人生の後半戦をどうやって生き延びるか」といった大上段に構えて悩むよりも、「まずはできる範囲の一歩から」という気持ちで取り組んだ方が気は楽だし、時間はかかっても納得のいく「結論」が導き出せるような気がする。

日韓の対立問題は、年内に解決する――韓国の白旗で

 日本と韓国との関係が戦後最悪と言われて久しいが、この騒ぎも年内に収束すると思われる。それも「韓国の白旗」という形で。

 

 そもそもの問題の発端は徴用工訴訟だが、その後も韓国の嫌がらせが続き、堪忍袋の緒が切れた日本が、輸出管理の厳格化(輸出3品目の管理やホワイト国認定解除)を実行したというのが経緯。

 

 いままで日本には「何を言っても」「何を要求しても」問題ない、と考えてきた韓国の狼狽ぶりは明らかで、米国など国際社会にまで訴えてホワイト国認定の解除を回避しようとしたが、すでに遅きに失した。

 経済産業省が実施したパブリックコメントでは、意見の95%がホワイト国認定解除に賛成している。

 

 こうした流れに韓国は、「経済問題」から「軍事問題」へと、お得意の「テーマずらし」作戦を展開。軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)を俎上に上げて揺さぶりをかけてきた。

 

 結果として、米国の期間延長要請を袖にする形で、2019年8月23日、韓国が日韓GSOMIAを延長せず破棄を決定、11月23日午前0時に効力を失うこととなった。

 

 もっとも、北朝鮮内部の危険な軍事行動を察知する人工衛星の情報収集能力は、韓国よりも日本のほうがずっと高いようで、GSOMIAによるメリットは韓国の側の方が大きかった。

 

 その事実に気づいたのかどうかは分からないが、最近になって韓国は、韓国国防部の朴宰民(パク・ジェミン)次官が、「日本が貿易規制措置を再検討して撤回すれば政府も(GSOMIA終了の決定を)前向きに再検討することができる」などと、発言しているが、足元を見透かされていることには気づいていないようだ。

 

 ここで輸出管理問題に戻ると、今回韓国が新たに入ったグループBは「輸出管理レジーム」(原子力提供国グループ(NSG)、オーストラリアグループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、ワッセナー・アレンジメント(WA)の4つに参加し、一定要件を満たす国と定義されている。

 

 理由はよく分からないが、オーストラリアグループ(AW)にだけ加盟しているリトアニア、エストニアなどもグループBに属している。これは推測だが、日本との良好な交流関係などが評価されたのだろう。

 

 では、このグループBはその下のグループCと比べてどのような違いがあるのか気になるが、現実問題としては多少優遇される程度のようだ。実際、日本との貿易や交流がさかんな中国、台湾、シンガポールなど、他のアジア諸国はほとんどがこのグループCに属している。韓国がここに分類されても何らおかしくない。

 

 一方、国内問題に目を向けると、文在寅大統領は9月にも、「疑惑のタマネギ」とまで言われる法務部長官候補のチョ・グク氏の法相任命を強行する見通し。「疑惑が底なし」の人物だけにスキャンダル絡みで国内の政治的なリスクはさらに高まると予想される。

 

 経済事情も深刻だ。韓国産業通商資源部が9月1日に発表した8月の輸出入動向によると、輸出は前年比13.6%減少し、9カ月連続で前年割れとなったこと、また3カ月連続で2桁台のマイナスとなった、ことが明らかになった。

 

 主力の半導体市況や自動車の回復が見込み薄なほか、反日運動の高まりで日本への旅行者が激減、韓国の格安航空会社(LCC)は窮地に陥っている。少なくとも年内は回復の目途は立ちそうにない。仮に11月まで輸出の減少が続けば、その期間は1年に達する。産業界の我慢も限界が近づくはずだ。

 

 こうしたなか、今回の事の発端となった徴用工問題では、韓国の最高裁判所・大法院が2018年10月に日本企業(三菱重工業など)に対して賠償を命じる判決を出した。

 2019年7月16日に韓国国内の三菱重工業の資産をすでに差し押さえしており、それらの売却命令を裁判所に申請して現金化が行われる見込み。早ければ12月にも現金化は実現するだろう。

 

 日本政府は、韓国の元徴用工訴訟で敗訴した新日鉄住金の資産差し押さえ問題で、韓国に「企業に実害が生じた場合は対抗措置に踏み切らざるを得ない」と警告しており、「韓国企業の日本国内資産の凍結」などが予想されているが、効果が最も大きいのは「金融措置」だろう。

 韓国への送金停止や、韓国の輸出企業に邦銀が行っている信用供与を停止すれば、韓国経済は一発で撃沈されるはずだ。カウンターノックアクトである。

 

 あとこれは個人的な予想だが、GSOMIAが実際に破棄される11月23日にも、日本政府は何らかのアクションを起こすと思う。

 具体的には、先に述べたグループCへの格下げだ。現在日本は、GSOMIAをフランス、オーストラリア、イギリス、インド、イタリアの五カ国としか締結していない(NATOは除く)。

 

 インドを除くアジアの国々とはGSOMIAを締結していないのだから、「韓国との締結解除で友好関係がさらに弱まった」との判断から、11月23日当日に「第3段の対抗策」としてグループCへの格下げを発表する可能性はゼロではないと思う。

 同時に、メンツをつぶされて怒り心頭の米国のトランプ大統領も「在韓米軍の規模縮小」など何らかの対韓政策を打ち出す公算もある。

 

 加えて12月の徴用工判決に基づいた日本企業の資産現金化が実現した場合、「第4弾の対抗策」である金融制裁を発動すれば、韓国経済の息の根は止まる。韓国ウォン、株価の急落は不可避だろう。

 外国からは相手にされず、海外企業は資産・資金を逃避、経済の悪化と政治への不信で国民の支持率も急降下。完全に「詰んだ」状態となってお手上げ、というシナリオだ。

 

 以上が、日韓の対立問題は年内でカタが付くと考える根拠である。

 

 こうなると韓国は日本に対して「通貨スワップ」協定を要請するだろうが、日本はこれに対応する必要はまったくない。韓国の完全な「自業自得」だからだ。

 しかも想像するに要請するにしても「日本がスワップ協定を結びたいというなら韓国にも用意がある」とか「日本にはスワップ協定を締結する義務がある」などと上から目線で言ってくるのは目に見えている。

 

 世界の金融制度に影響が出かねない、というなら国際通貨基金(IMF)が主導権を持って対応すればいいだけの話である。

「理科系」強く、「女子大」は低調―――有名企業への就職率

最新!「有名企業への就職率が高い大学」TOP200(東洋経済オンライン)

安田 賢治 : 大学通信 常務取締役 情報調査・編集部ゼネラルマネージャー

 

 有名企業への就職では「理科系が圧倒的に強く、女子大は総じて低迷」という大卒の就職傾向をまとめた記事「最新!『有名企業への就職率が高い大学』TOP200」が、9月7日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 詳細は記事を読んで頂くとして、傾向を一言で言えば「理科系は強く、女子大は低調」といったところだろうか。

 

 記事では、「理系大学の強さが際立っており、トップ10では半数の5校を占める。総合大学でも早稲田大は理工系が3学部、大阪大も3学部あり定員は多い」としており、また、「トップ10以外でも、(中略)比較的規模の小さな理系大学も上位に入っている」としていおり、大学の規模や国公立・私立の区分なく理系は強い

 

 その理由は記事にもあるが、新技術などへの対応などで有利なのは当然として「例えばサービス分野でも、IT、AIの導入は当たり前」というように、必要とされる分野が急速に拡大したという事情がある。

 

 今後の傾向を想定してみると、AI、RPA、5Gなどの普及で理系へのさらに需要が高まるのは確実だが、文系学部でも理科系科目には関係ないとは言えなくなるはずだ。

 

 文系では最近は「商・経営」系の学部が就職に有利と言うことで人気化しているが、就職して業務に携われば、顧客や市場データの分析に必要な「統計分析」の知識は不可欠だし、ソフトウェアの重要度が増せば、業務を推進するうえでも「プログラムやシステム開発」担当者との意思の疎通ができなければ、話にならない。

 

 小学校でプログラミング授業が必修科目になったのは、文部科学省も理系科目の重要性に気づいたからだろう。高度なプログラム技術を全員が取得する必要はないし、現実には無理な話だが、プログラムという概念を理解するだけでも、仕事の幅は広がる

 

 こうして理科系大学や学部が人気化するのはいいのだが、問題は「学費の高さ」だろう。手元に資料がないので恐縮だが、文系に比べて年額数十万円は高いはずだ。しかも大学院への進学率が文系より圧倒的に高いので、さらにその差は広がる。実験などの研究施設が必要なので、仕方がないのではあるのだが。

 

 学費の無償化や奨学金の拡充などの動きはあるが、その対象は低所得者向けが主流で、両親ともに大卒以上で、共稼ぎ夫婦のような家庭にはあまり恩恵がないのが実態だ。

 

 日本が今後も「技術立国」を目指すのであれば、親の所得に関係なく、高校時代の成績や得意分野での実績などをもっと評価する仕組みを充実させてもいいはずだ。

 例えば、東京大学などでも推薦入学の選考では、高校時代の実績を評価して「全国レベルあるいは国際レベルのコンテストやコンク ール(例えば数学オリンピック)での入賞記録」(p18)などを基準にしているようだが、一般の大学がここまでハードルを高くする必要はないだろう。

 

 個人的には、入試の成績ではなく、工業高校や高専などで独創性のある技術を手掛けてるような進学志望者を、積極的に採用するような仕組みがあってもいいと思う。

 

婚活は「前向き」かつ「冷静」の姿勢で

詐欺まがいの婚活に疲れ果てた男性の一大転機(東洋経済オンライン)

大宮 冬洋 : ライター

 

 独身時代に散々女性からのネットワークビジネスに引っ掛かりそうにあり、婚活パーティーや結婚相談所を避けてきた50代の男性が、見事相性のいい伴侶を得たという喜ばしい結婚事例を紹介する記事「詐欺まがいの婚活に疲れ果てた男性の一大転機」が96日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 結論から言えば、「お互いにかなり運よく巡り合えた感が強い」ような感じがした。記事が話を「盛っている」とは思わないが。

 

 というのも、男性側は筆者が書いているように「朴訥」「のんびり」「お人よし」を絵にかいたような性格で、基本的に受け身の姿勢。人ががよさそうに見えるからネットビジネス狙いの女性のカモになりやすい。

 記事によれば、独身時代(20台前半?)から50歳近くまで5年に一回の周期で「勧誘」を受けてきたというから、少なくとも5~6回は「その手の女性」と付き合ったことになる。

 

 普通の感覚だと、一度もしくは二度会えば「ああ、またこのパターンね」となるはずなのだが、どうにも学習効果がないようだ。というか「受け身」が基本なので、こうなるのだろう。

 結果として、この受け身の姿勢が、民間の「まともな婚活市場」の回避につながり、長い独身時代が続いた。

 

 一方の女性は、逆に好きになった男性に対して「後先を考えずに結婚する」という過剰とも言える「積極性」が失敗につながった。

 

 今回再婚した男性がいうように「『なんでそんな男と結婚したのか』と思うほどの人物」のようで、相手の気持ちをまったく考慮しない男性だったらしい。

 まあ「若気の至り」と言ってしまえばそれまでだが、その積極性による失敗の反動で、今回の再婚にはやや慎重になった側面はあるようだ。

 

 このまったく異なる性格と過去を持つ二人を結びつけたのが、自治体の「婚活サポーター」制度だ。

 心れは、いわゆる市民のボランティアによる婚活支援、いわゆる「世話好きおばさんの仲人」なのだが、営利目的の民間の結婚相談所と異なり、現実からかけ離れた「要望」を受ける義務はないので、男女ともに分相応の相手を探すことになる。

 

 この仕組みが、「受け身」の男性と、「結婚に失敗」した女性を結びつけることになった。

 男性は、ネットビジネス勧誘のような疑念を持つことなく女性に接することができ、女性も安心して男性をしっかり見極めることができたからだ。

 

 女性の気持ちに配慮できるという「いい意味」での「お人よし」ぶりが、悪い方向に働いた「積極性」による結婚という苦い経験から、男性に警戒感を抱いていた女性の心を「解きほぐした」のは間違いないだろう。

 

 婚活というと、お金をかけてパーティーや紹介を繰り返すという手法になりがちだが、「身の丈に合った相手を客観的に探してもらう」という視点に立てば、自治体の「婚活サポーター」制度は利用価値がありそうだ。

 

 ちなみに東京都では、港区が「出会い応援プロジェクト」として、婚活イベントを年3回実施予定している(令和元年)ほか、非営利団体として「一般社団法人日本婚活支援協会」が同様のサービスを実施している模様。

 

 興味のある方は一度、問い合わせしてみてはいかがだろうか。

人財採用に「妥協は禁物」。常に「人材確保」の意識を

「採用してから育てる」がNGなこれだけの理由(東洋経済オンライン)

酒井 利昌 : アタックス・セールス・アソシエイツ 採用コンサルタント

 

 とある専門商社で即戦力のマネージャーを募集していたが、なかなか見つからない。焦っていたところに「これは」という人物が人材紹介会社から紹介され、トントン拍子で採用に至った。

 ところが、配属された部署の評価は散々。仕事は満足にできずに一年半で退職、指導したマネージャーも体調を崩すという、中途採用の失敗で想定外の「事故」に巻き込まれた会社の事例を紹介する記事「『採用してから育てる』がNGなこれだけの理由」が9月5日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 まあ採用担当としては、人材が必要な現場から「早く人を」と急かされるし、採用に手こずっていると自身の評価にも繋がるから、「焦る」気持ちは理解できる。

 

 特に会社が急成長して管理部門に手が足りなくなったり、キーパーソンが引き抜かれた場合などで起きがちで、自分の周りでもよく聞く話だ。

 

 記事では、この手の失敗の原因を「妥協して人を採用するため」としている。これは言われてみれば当たり前の話で、「人手」欲しさに「人物」の吟味ができないのだから問題が起きるのは必然である。

 

 今回は中規模の会社が1人のマネージャーを採用するという設定だったが、これは「大企業」の新卒採用でも同じような状況は起きている。

 これは採用担当の友人から聞いた話だが、どうも、一定期間内に数百人規模で学歴フィルターを使って採用すると、一定の確率で「はずれ」を引くのは不可避のようだ。

 

 記事もあるが、「育成しようにも本人の実力不足」というケースも多いのだろうが、大来業の場合は、「分不相応のプライド」が邪魔をして「自分のキャリアにふさわしいと思えない仕事」はまったく関与しないらしい。

 しかも、こういう話はすぐに他部門に伝わるので、人事部も別の配属先を決められない。結局「若年窓際族」になって辞めていくというのが常態化しているそうだ。傾向としては「高学歴」「意識高い系」に多いという。

 

 会社として「はずれの採用」をどう考えているのか聞いたのだが、「大量採用に伴うコスト」と割り切っているらしい。まあ大企業だから可能なのだろうが。

 

 いずれにせよ、どちらも「人手」の確保を最優先させた結果であることは間違いない。ようするに「妥協」で採用するから、採用する側も採用される側もお互いへの「理解不十分」のまま入社するため、その後実態がバレてお互いに不幸な結果を招くことになる。

 

 この問題の解決策は、記事にある「つねにいい人財はいないかと探し続けるのです。人手不足というマイナスの状態を±0にする採用でなく、±0からプラスにする採用を通年でやり続ける」というのが有効だろう。

 

 世間の採用傾向を見ていると、就職協定は形がい化して採用期間は伸びているし、「通年採用」の制度自体を廃止する会社も出てきた。

 

 また、大企業や経済団体も「終身雇用は維持できない」と宣言、採用する側は「必要な時期」に「必要な人材」を「必要な分だけ」採用するとう流れを強めるはず。

 一方、採用される側も「会社」の規模や知名度で選ぶよりも、「仕事」の内容など自分のスキルへ影響を優先する傾向が強まるのは間違いない。

 

 こうして大企業の人材採用傾向が変化すると、中途採用の人材市場にはこれまでに少なかった様々な人財が出回るようになる。これは冒頭のような中堅規模の企業にとっても「追い風」だろう。

 「追い込まれ型」採用から逃れることで、余裕をもって本当に必要な人材を見極める機会が増えるからだ。

 

 先にも書いたが、特に中規模以下の企業では採用にかかるコストは大きく、失敗は多大な損失を招く。

 これを回避するには、会社全体として「採用」への意識改革が必要だろう。これをけん引するのは経営トップの重要な役割だ。経営者自らが常にアンテナを張り巡らして、「いい人材を確保したい」という意識を持っていないと、採用の現場には伝わらない。

 

 経営という観点で考えてみれば、「製品開発」部門で、「常に一定の時期に自社のペースで研究・開発」で、などと呑気なことを言っていたらライバルとの競争に勝てる訳がない。

 適時、的確な判断と言う考えを「採用」の分野に展開するのは、ごく自然なことだとも言えるはずだ。