如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

リモートワーク成功の可否は会社の社員への「信頼度」にかかっている

会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 行き帰りの満員電車に揺られ、疲弊したサラリーマン勤務を続けている人はまだまだ多いと思うが、こうした非効率的な仕事の進め方の改革を提言する記事「会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか」が10月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

  記事で取り上げているテーマは3つ。

                  ・出社しない「ノー・オフィスデー」

                  ・「サードプレースオフィス(第三の事務所)」

                  ・仕事を飽きずに楽しむために必要な「あそび心」

 である。

 

 一つ目の、「ノー・オフィスデー」だが、これはまず思いつく「在宅勤務」のほかに、「コワーキングスペースでの仕事」、さらに「直行直帰」も含まれる。

 

 在宅勤務については、かなり社会の認知度も高まってきたが、現実的には「介護」や「育児」などの家庭の事情を抱えた人を対象に、週に数日までといった制度が一般的ではないだろうか。

 要するに特殊な事情を抱えた人への「特例措置」という側面が強く、仕事の効率性を考慮して積極的に導入している企業はまだ少数派だろう。

 

 ではなぜ、在宅勤務を含むリモートワークが普及しないかというと、一言でいえば「会社が社員の管理に自信が持てないから」というのが最大の理由だろう。

 簡単に言えば、「仕事をしているかサボっているかどうか確認できない」からだ。その証拠のひとつにあるメーカーは、在宅勤務者を管理するために専用の部屋を用意して、壁一面にモニタを設置、勤務者のPCにあるカメラの画像を投影して、誰が何をしているかすぐにわかるような「監視体制」を敷いている。

 

 これは極端な例だろうが、会社というか管理職にとっては、部下の仕事ぶりを自分の目で確認できないと安心できないのだ。つまり「出社することに意味がある」と考えているに他ならない。

 

 本来、会社員はそのスキルを「仕事」を通じて会社に貢献することで報酬を得ている訳で、「出社」することは必要不可欠な条件ではないはずだ。

 会社側としては、勤務時間や健康管理などにも配慮しなければならないので、完全なリモートワークは困難化もしれないが、現在の原則「特例」から選択「自由」に変化していくのは時代の流れだろう。

 

 そもそも毎日会社に来なくてはできない仕事というのが、どれだけあるのかゼロから洗い直した方がいいだろう。システム開発などはネット環境が整備されれば「在宅」でも十分仕事は可能だろうし、、企画、調査部門などは相手との打ち合わせに伴う移動時間や取材先の都合などを考えれば「直行直帰」の方が、より効率的かもしれない。

 

 この相手との打ち合わせ先で有効なのが、2つ目の「サードプレースオフィス(第三の事務所)」だ。会社でも自宅でもないカフェなどで打ち合わせをすることで、記事では「とても自由な雰囲気で話ができました。意見交換が活発になる」としている。

 

 3つ目の「あそび心」は、保守的な会社ほど抵抗が強いだろう。「あそび」=「サボり」というイメージが強く、新たな発想や企画は仕事とは直接関係ないことから生まれることが少なくない、という事実に理解が及ばない。

 

 以上3つのテーマに共通するのは、「会社が社員を」「上司が部下を」信頼しているかどうか、という点に尽きるだろう。

 もっとも、社員の側もやみくもに「在宅勤務」を主張するには無理がある。入社したばかりの新人が「自宅で仕事をしたい」と言っても、上司にはそれを許可する根拠に欠けるからだ。

 少なくとも会社内で評価されるような実績を残したうえで、「より効率的に仕事がしたい」というのであれば、会社の理解も得やすくなるだろう。

 

 一方、会社側にとっても、同業他社が有能なエンジニアなどに在宅勤務を認めるようになれば、人材が流出する可能性は高まる。そもそも新卒で入社する社員は「終身雇用」を期待していないし、人生設計では「会社の知名度」という他者の評価よりも、「自分のスキルや待遇のアップ」という自身の価値観を優先するのが大きな流れになりつつある。

 

 AI、ITなどの普及で社会や職場を取り巻く環境は加速度を付けて変化している。働き手の都合や要求に応えられず、変化に対応できない企業の先行きは暗い。

 会社は、社員を「出社や勤務時間」という勤務体系ではなく、「仕事の成果」で評価するという本来あるべき姿へと「思考回路」を切り替えていくべきだろう。

「お見合い」⇒「恋愛」⇒「ネット婚活」は自然な流れ、個人スコアの存在感アップも

今や8人に1人が「婚活サービス」で結婚する背景(東洋経済オンライン)

リクルートブライダル総研

 

 昭和中期ころまでは主流だった「見合い」結婚が、今は「恋愛結婚」が9割に達し、現在ではネットを使った婚活サービスなどに移行しつある――という最近の婚活事情を解説する記事「今や8人に1人が『婚活サービス』で結婚する背景」が10月8日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 サブタイトルにあるように「自由恋愛の歴史に大きな変化が訪れている」のである。

 記事では、2018年に結婚した人のうち、8人に1人が婚活サービスを利用して結婚、20~40台の独身者の4人に1人は婚活サービスの経験があるという調査結果を紹介している。

 しかも、婚活サービスのなかでも最も結婚した人の比率が高かったのはネット系婚活で、結婚相談所とパーティー・イベントに約2~3倍の差をつけたそうだ。

 

 こうした「婚活」の大きな動向に、現代の独身者の結婚に対する「認識」と「環境」の変化が影響しているのは間違いない

 

 そもそも「結婚」は、昭和の時代には「しなければならないもの」「してようやく一人前」という周囲からの圧力が強く、当事者も疑問を持っていなかったが、その後女性の社会進出が進み、男女が職場やサークルなどで知り合い「自発的」に相手を選んで結婚するという流れになった。

 ただ記事中にある「恋愛・見合い結婚の構成の推移」グラフでは、1965年頃に逆転した「見合い」「恋愛」の比率は、その後上昇を続けるが、1990年頃に90%近くまで上昇したあとは頭打ちになっている。

 

 想像するに、「恋愛」結婚というスタイルは定着したが、その内訳が変わってきたのだ。これは記事にもあるがネット環境の充実が影響している。

 ネットを通じたコミュニケーションは1980年代から「パソコン通信」の掲示板など存在はしたものの、機材や接続環境などは一般的ではなかった

 いわゆる「オフ会」などもあり参加した経験もあるが、いわゆる「オタク」系の人が多かった記憶がある。参加者も大半は男性で、女性にはハードルが高かった。

 

 その後、帯電話NTTドコモの「i-mode」をはじめとする各種ネットサービスが充実、現在ではLINEでやFacebookなどSNSでのコミュニケーションなしでは若者の生活は成り立たなくなっている。

 こうした結果、ネット環境の充実が「ネット系婚活」というサービスへの抵抗感を弱めたのは確実だろう。もちろん「いかがわしさ」感の強かったネット系恋愛サービスの「浄化」が進んだことも効果はあっただろうが。

 

 という訳で 、職場や友人の紹介など「現実空間」で知り合いになるよりも、自分の価値観で相手を探し、選ぶことが容易になったことで「仮想空間」で、相手との距離感を見極める傾向が強まった。

 「仮想」だけに、実物を判断できないデメリットはあるが、コミュニケ―ションや発言履歴などを調べれば、大体の「人となり」は判断できるのだろう。時間や手間などの効率やコスト面でもネットの方が優れている。普及するのは時代の流れだろう

 

 今後の展開としては、相手を選ぶ際の客観的な基準となる「個人スコア」へのニーズが高まりそうだ。選択肢が増えても、自分の考える基準に自信のない人も多いはずで、数値化されれば「相手」だけでなく「自分」の立ち位置もわかるというメリットもある。

 この分野で先行した中国では「個人情報の管理」が行き過ぎて、民間企業に政府が介入したようだが、日本では、みずほ銀行とソフトバンクGの「Jスコア」などが立ち上がったばかり。

 個人情報保護の問題はあるが、最近リクルート系の就職支援企業が就活生の個人データを企業に無断で販売していたことが社会問題化するなど、世間の個人情報への監視の目は強まっており、「まともな」企業であれば、同じようなヘマはしないだろう。

 

 個人的には、結婚相手を選ぶ手段は、お見合いという「押し付け」から恋愛結婚という「自由恋愛」という自分の意志が優先される流れの先に、個人スコアを利用した婚活サービス業者からの積極的な結婚相手の「あっせん」という、どちらかといえば再び「受け身」のサービスが増えてきそうな気がする。

 結婚したい人にとっては「自分の意志」を重視したいが、業者は「成婚させてなんぼ」であることに変わりはないからだ。

 ネット系婚活も、現在は普及・拡大の一途だが、そう遠くない将来淘汰が進みそうな気がする。

 

障がい者雇用に立ちふさがる達成企業率50%の壁

「障害者の雇用率」が高い上位100社ランキング(東洋経済オンライン)

村山 颯志郎 : 東洋経済データ事業局データベース3部

  

 毎年9月は障がい者雇用支援月間ということで、厚生労働省や自治体が協力して啓もう活動を行っている。

 10月7日付けの東洋経済オンラインには、障がい者雇用に力を入れている企業を特集した「『障害者の雇用率』が高い上位100社ランキング」が掲載された。

 

 現在、民間企業の障害者法定雇用率は2.2%だが、記事ではランキング上位5社の雇用状況を紹介している。1位の会社の雇用率は20.92%、2位も13.78%と規定値を大きく上回っているのが目を引く。

 

 意外なのは3位のエンターテインメントのエイベックス。同社のサイトにあるCSRレポート2017を見ると、障がい者のスポーツ活動支援事業を大きく紹介している。前回2016年のリオパラリンピックでは、単一企業として最多の選手(6名)を送り込み、文部化科学省から表彰もされている。来年の東京パラリンピックでも同社の選手が活躍し、障がい者支援に積極的な企業への評価が高まることを期待したい。

 

 また、5位にはユニクロのファーストリテイリングが入った。雇用率5.62%も立派だが、雇用者数も917人と人数では最大の日本電信電話(NTT)の939人に匹敵する障がい者を雇用している。

 同社はこれまで一部のマスコミでは内部告発という形で、過酷な労働環境が伝えられ批判も浴びたが、2012年度以降はほぼ国内全店で「1店舗1人以上の障害者を雇用」を実現しているという。

 まあ会長兼社長の柳井正氏のリーダーシップによるものだとは思うが、マスメディアは有名企業や大企業の「マイナス面」を取り上げるのには熱心だが、こうした「プラス面」も、評価すべきだと思う。

 

 ただこうした個別に頑張っている企業がある一方で、法定雇用率を達成する企業の比率は伸び悩んでいる。厚生労働省の「平成30年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、平成以降で見ると、2年に52.2%となったのが最高で、その後は伸び悩み16年には41.7%まで低下した。29年には50.0%と50%台を回復したが、翌30年には45.9%と大きく落ち込んだ(p17)。

 ここ30年で見ると、法定雇用率を達成する企業の割合は50%の壁を乗り越えられないのが実態と言える。

 

 実際にランキングを見ても同率99位には雇用率2.59%の企業が6社もあり、義務である2.5%を何とか上回っている企業がいかに多いかを示している。

 

 厚生労働省は障がい者雇用に対して、様々な対策を講じている。具体的には「障害者雇用納付金制度」として、雇用率未達成企業から納付金を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給している。

  つまり「ムチとアメ」の両面でサポートしている訳だが、法定雇用率の達成企業が頭打ちな原因として2つ考えられる

 

 一つ目は「障がい者雇用」への理解度がまだ浸透しきれていないというか、会社側の受け入れ体制が整っていないという事情、もうひとつは、制度面の「ムチ」の弱さだろう。

 

 障がい者雇用への理解は進みつつあるものの、実際に仕事をしてもらうにあたって「どのような」仕事を「どのように」任せればいいのか、まだ手探り状態の会社は少ないだろう。

 特に平成18年以降は、それまでの「身体障がい者」「知的障がい者」に加えて「精神障がい者」が対象になっており、一見して他の障がいに比べて障がいの内容が掴みにくいことも影響している可能性はある。これは時間をかけて解消させていくしかないだろう。

 

 もうひとつの要因である「ムチ」だが、雇用率未達成の場合不足一人当たり月額5万円が徴収される。これが高いか低いかは議論の余地があるだろうが、経営者が労働生産性を重視して「納付金を支払ってもそれ以上の利益を稼げげれば構わない」と考えている場合は、このままでは効果は望み薄だろう。

 

 もっとも、未達成企業に対しては、「適正実施勧告」「特別指導」を経て、改善が見られない場合は企業名の公開に踏み切っており、実際に平成28年度の「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等」では東京の2社が公開されている。ちなみに29年度は2社とも改善されたため企業名の公開はゼロとなった。

 

 ここまで厳しい処分を受けるまで障がい者雇用を拒否し続けた企業も企業だが、会社名の公開に効果があることも実証された形だ。

 ただし現状では、会社名の公開までは、障がい者の雇い入れ計画(2年)の作成命令を実施後、改善が遅れている企業に特別指導(9カ月)を実施したあとの公表というスケジュールとなっており、この2年9カ月という期間を短縮することは検討する価値はあるだろう。

 

 来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、社会のムードが盛り上がる中で、障がい者雇用への認知度や理解が一段と進めばよいのだが

「関数電卓」にみる日本教育の特殊性――「電子辞書」とは事情が違う

カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由(東洋経済オンライン)

劉 彦甫 : 東洋経済 記者

 

 カシオという会社から製品として何を思い浮かべるだろうか。

 個人的にはかつての「デジタルはカシオ」というCMのキャッチコピーから「デジタル時計」や「電卓」を思い浮かべるのだが、10月6日付けの東洋経済オンラインには、「カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由」として、カシオの「時計」とならぶ二大事業柱である「教育事業」の主力を占める「関数電卓」の動向を解説している。

 

 世間一般的には「G-ショック」に代表される腕時計の会社として認知されていると思うし、実際に同社のWebサイトを見ると、最上段に大きく画像で紹介される商品は「時計」が半分を占める。その下の製品情報でも序列は「時計」から始まって、「電卓」は5番目。それでも、正式社名は「カシオ計算機」なのである。

 

 汎用性のある普通の電卓はそれこそ100円ショップでも売っているし、オフィスで事務に使うある程度の大きさのしっかりした卓上サイズの電卓も1000円台から購入できる(12桁卓上電卓の例)。

 

 これが関数電卓となると、価格帯が2500円から4000円台へとアップする。ボタンは増えるが、内部の部品に大きな変更はないだろうから利益率は高い。記事では関数電卓の売上高営業利益率は16%と、全社の利益率10.1%と比べても高収益だ、としている。

 

 この関数電卓、近年台数を伸ばしているのは東南アジアなどの新興国だそうだ。数学を効率よく学習するために、ベトナムなど数十カ国で関数電卓による数学教育法を普及する取り組みを行っているそうだ。

 

 翻って日本では、関数電卓の存在感は薄い。一部の理系学生などでは必須だろうが、そもそも電卓は、手計算の手間を減らすという目的でしか使われていないのが現実だろう。普通の電卓にも標準装備されていて、使いこなせば便利なメモリーキー(Mキー)ですら使う人は少ないはずだ。

 

 ではなぜ日本の教育現場で「関数電卓」が普及しないのか。この疑問に対する回答が記事にある「現場の高校の先生たちが関数電卓による教授法を知らないうえ、手計算を頑張ってきた自らの成功体験が捨てきれない」という「教育者側」の事情だ。

 

 これを教育者の怠慢と非難することは容易だが、「関数」を「四則演算」と同じレベルに考えていいのかは疑問も残る。

 私は数学に詳しい訳ではないが、例えば「標準偏差」を計算する場合、大量のデータを手計算で行うのは非合理的なのは分かるが、標準偏差の意味やその計算式を知らずに、ボタンひとつで結果が出てしまうのは、便利の一言で済まされるのだろうか。

 

 もちろん関数を、「数学」のツールとして活用するのか、「計算」の効率化として使うのかで意味合いが違うとは思うが、少なくとも「数学」として利用するのであれば、まず最初に数式を覚えて、計算を紙に書いて、結果を導きだすという手間は、関数の種類にもよるだろうが、「無駄」ではないと思う。一度関数の仕組みを知ってしまえば、あとは電卓で済ませても何の問題もないと思うが。

 

 このあたりの事情が、「手間」の問題だけで「紙の辞書」が「電子辞書」に置き換わったのとは事情が異なると思う。

 

 あとは、社会環境の変化の影響も大きい。「英語」については、文部科学省が2011年から小学校での英語教育の必修化、2020年から同教科化の導入(P15)を決めており、教師を中心に学校側が英語教育に真剣に取り組まざるを得なくなった。

 古参教師の「紙の辞書に慣れしんだ」などという「電子辞書」を回避する言い訳が通用しなくなったのである。

 

 また同じく2020年からは小学校の「プログラミング教育」も全面実施される。学習活動はAからDまでの分類があり、実際にプログラミング言語に触れるのはCレベルからのようだが、プログラミングに「関数」の概念は必要不可欠だろう。

 英語と同じように、教師が「必要に迫られれば」、プログラミングや関数を勉強せざるを得なくなる。

 結果として、関数が身近なものになれば、関数電卓の利用価値が見直される可能性がなくはない

 

 「なくはない」という表現を使ったのは、スマホやタブレットの普及で、入力機能の工夫や計算結果の表示の多様性では、専用機である関数電卓よりも有利な面も少なくないと思うからだ。

 

 記事では、「認知度が高まれば、いずれ日本でも関数電卓への理解が深まり、普及するかもしれない」としているが、個人的には今後「関数」への関心は高まっても「関数電卓」の売り上げ増につながるかは疑問だ。

 

 カシオもコンパクトデジカメ市場では、「エクシリム」ブランドで一時人気を集めたが、スマホカメラの普及で2018年に撤退した。過去に参入したワープロ、パソコン事業も今はない。

 これらに共通しているのは、新しい技術が社会に普及しても「より洗練された機能や利便性を持つ製品しか生き残れない」という事実だ。

 

 関数電卓が日本で普及するとすれば、より高度な機能がより簡単に使えるという優位性をスマホより発揮できた場合だろう。

QBハウスには本当に「敵」はいないのか

QBハウス、1割値上げでも客数減“起きず”大幅増益…低価格&高い技術で「敵が不在」状態(Business Journal ビジネスジャーナル)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

 

 ヘアカット専門店「QBハウス」が値上げしたにも関わらず、客離れが起きず業績は絶好調という状態を紹介する記事「QBハウス、1割値上げでも客数減“起きず”大幅増益…低価格&高い技術で『敵が不在』状態」が10月5日付けのBusiness Journal(ビジネスジャーナル)に掲載された。

 

 記事では、今年2月に税込み価格を1080円から1200円へと約1割も引き上げたが、値上げ直前の6カ月の前年同期比(2.7%増)を、2月以降は毎月最低でも同7%増と大きく上回る状態が続いているという。

 

 焼き鳥チェーンの「鳥貴族」や天丼チェーン「てんや」が同様に値上げをした結果、今年8月まで客数や売上高が長期にわたって低迷しているのとは対照的だ。

 常識的には、値上げはマイナスのインパクトが強いので、値上げ直後から逆に売り上げ増加が続くというのは異例の事態とはいえるだろう。

 

 記事では、

              ・1000円台前半でカットできるところはかなり少ない

              ・駅周辺や商業施設内など好立地の店舗が多い

              ・東証1部に上場するなど高い知名度を獲得

 を理由として挙げ、「代替となる理美容室は少ないので、QBハウスの差別化の度合いは高い」と分析している。

 

 また、独自の従業員育成ノウハウによる「高い技術力」が強みなうえに、その技術も習得するのに一般的な理美容室では2~3年かかるところを、わずか「6カ月で習得」できるという効率性も奏功している、としている。

 

 ただ、記事では「価格」「立地」「知名度」などを差別化の主因として紹介しているが、QBハウスのWebサイトを見ると、同社のアピールポイントはやや異なるようにも見える。

 というのも、サイト最上段の一番左にある「QBハウスとは」を見ると、まず目に入るのは「10分へのこだわり」という「時間」をアピールしている。次に紹介しているのは「衛生面へのこだわり」だ。

 

 要するに「安さ」「身近」よりも、「短時間」「きれい」をウリにしているのである。

 しかもサイトでは「新しいカットのご提案」として、「髪型を極端に変えることなく個性あるベストスタイルを維持するため・・・月に2回は是非ご利用ください」と提案している。

 ちなみに私自身が理容室に行く頻度は、2カ月に1度が基本だ。これは少ない方だと思うが、毎月1度というのが平均的だとすると、月2回来店してもらえれば、売り上げは2倍になる。

 もっとも、これはあくまでQBハウスの「提案」であり、実際に2回行くような「髪にこだわりのある人」はお気に入りの担当者がいる「より高い美容室」を利用するとは思うが。

 

 記事では最後に、競合する同業が見当たらないとして「1000円台中ごろまでであれば、値上げは大丈夫ではないか」と結論付けている。

 

 ここからは私の見解だが、1000円台中ごろへ現状のままのシステムで値上げをした場合は、売り上げへの影響は小さくないと思う

 というのは、私の住んでいる都心からやや離れた郊外では、1500円から1800円ぐらいで「シェービング」「シャンプー」に加え、簡単な「肩もみ」まで含まれたフルサービスを売り物にしている理容室が、駅近くに数件はある。

 

 従業員が多く分業が進んでいるので時間も30分程度だし、混雑度、清潔感もQBハウスと大差ない。同じ価格ならフルサービス店を選択する人も多いと思う。

 

 加えて言えば、「シェービング」は自分でできるとは言っても、額やまぶたなど目の近くはプロに任せた方が安心だろう。少なくとも私は「まぶたを自分で剃ろう」とは思わない。

 

 一方で、今後も長期低迷が続きそうなのがいわゆる「街の床屋さん」だ。どっしりとした安定感のある椅子に、バリカンを使わずにハサミでの調髪、店によってはシャンプーが二回もあって、時間もたっぷり一時間はかかる。価格も4000円台が多いと思う。はっきりいえば「時間とおカネのある人」しか利用しないだろう。

 

 こうした昔ながらの理容室を利用するのは、もはや近所の「おじさん」といった高齢者ぐらいだろう。顧客がQBハウスなどに奪われているので、この先回復も見込めない。

 それでも営業を続けられるのは、一般的な小売店などと違って「在庫」負担がないためだろう。よくある自宅の一階を店舗にすれば賃貸料もかからない。コストの大半を自分の人件費が占めているので、その他の固定費比率が低いことは逆に「強み」ではある。

 

 以上、理容室業界の先行きを展望すると、QBハウスが値上げをすれば勢いは止まり、フルサービスの低価格店が見直される一方、昔ながらの床屋は細々と生き残る、ということになると思う。

結婚に「感性」も重要だが、やはり「相性」が大事かと

42歳女性が「結婚恐怖症」をついに克服したワケ(東洋経済オンライン)

大宮 冬洋 : ライター

 

 第一印象や感性というか、その場の雰囲気で4カ月で結婚を決めたが1年で離婚、その後10年後に再び縁が訪れたが、今度も会って7カ月で結婚するという2度の「スピード婚」の経験者を紹介する「42歳女性が『結婚恐怖症をついに克服したワケ」が10月4日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事自体は、「こういう結婚スタイルもあるのだなあ」と思われるいつものパターンなのだが、今回はその内容というか女性の行動パターンが極端で、不謹慎かもしれないが、読んでとても面白かった。

 

 タイトルには「結婚恐怖症を克服」とあるが、内容は「克服」というよりは、結果として「良縁」に恵まれたと言った方が正しいかもしれない

 というのも、女性のコメントでは、最初の結婚は「28歳という年齢で焦っていたので、このへんで手を打とう」とか、結婚には至らなかったものの二度目のお付き合いでは「結婚の失敗を男性経験の少なさを理由に、チャラい人」を狙うとか、二度目の結婚では「最初はウザくて無理と思ったが、リズム感が似ていて」半年で結婚を決めるなど、よく言えば「自由奔放」というか「感性重視」、悪く言えば、「思慮不足」「見通しの甘さ」が際立っているのだ。

 

 本人は「またしてもスピード婚です。私は反省が足りないのでしょうか……」という認識はあるようだが。もっとも、結婚にただ一つの正解がある訳ではないし、感性や第一印象で結婚したカップルが成功する例も少なくないだろう。

 

 彼女の結婚歴についてあえて、コメントするとすれば、適齢期という思い込みとか、反動でチャラい男狙いとか、あまり結婚後の実態(共同生活)を意識していない点はあるのかもしれない。

 

 二度目の結婚がうまくいったのは、記事にもあるが、夫が「学歴」、妻が「結婚の失敗」という「自信のなさ」を理解しあって、結果として「すごく大変だった」という最初の一年間を乗り切れたことの成果だろう。言うまでもないが、理解しあえるというのはお互いの「相性の良さ」が根底にあるからだと思う。

 

 ということで彼女のこれまでの経緯を見ると、結婚が成功したのは彼女の「結婚前の行動体系」が変化からではなく、「結婚後の相手への接し方」が変わったためではないか。

 

 3組に1組は離婚するという現状では、最初の結婚で納得して最後まで添い遂げるというこれまでのスタイルから、離婚、再婚は「ごく自然なこと」という認識に社会が急速に変化してきている。

 

 直接の関連性はないが、仕事の世界では、新卒で採用されそのまま定年まで終身雇用という「慣例」は、もはや過去の遺物になりつつある。結婚の世界でも同様の展開が起きる可能性は高い。

 

 ただ重要なのは、どちらも前歴を生かして「人生のステップアップを図る」という意識だろう。もちろんこれは相手や自分の年収アップといった金銭面だけの話ではなく、視野や経験を広げるという意味合いの方が大きい。

 もちろん「相性」あってのステップアップであることは言うまでもない

海賊版サイトは「論外」だが、電子書籍版の値下げも必要

続く無断投稿「漫画村」はなぜ繰り返されるのか(東洋経済オンライン)

大塚 隆史 緒方 欽一 : 東洋経済 記者

 

 漫画の違法アップロードを行う「海賊版サイト」の最近の動向を解説する記事「続く無断投稿『漫画村はなぜ繰り返されるのか」が10月3日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 「漫画村」元運営者の逮捕や、漫画「進撃の巨人」を動画に変換して投稿する事例、運営者への損害賠償などの事件を紹介している。

 記事によれば、違法アップロードがなくならない理由として、視聴中に入る広告によって半年で2000万円を稼いだ事例や、違法アップロードよる単行本の売り上げ減少が1アカウント当たり1億5000万円以上に達したケースもあったそうだ。

 

 数年前まで野放しだったこうした「海賊版」サイトだが、摘発逃れの温床になっていた海外サーバーを利用する手口も、運営者へのアクセスログの開示請求などで通用しなくなったうえ、漫画村とは別の有名な海賊版サイトの運営者には、懲役2年4か月から3年6か月の実刑判決が出るなど、違法サイトの運営が追い詰められているのは間違いない。

 

 私自身は、海賊版サイトを見たことも、利用したこともないので、ブログで書いてもあまり説得力はないのかもしれない

 ただ、記事にある違法アップロードをする人には「自分の好きな漫画を多くの人に知ってほしいというファン心理」があるという考え方は理解できない。「知ってほしい」という感情はまだしも、その違法行為が「売り上げ減」という作者の不利益につながり、結果として応援しているはずの作者を苦しめているという事実には考えが及ばないのだろうか。

 もっとも大半の運営者は 記者が指摘しているように、広告収入が目当ての悪事と知った上での不法者なのだろうが。

 

 では、「あらすじ」を紹介するのは問題ないのかというと、そう単純な話でもないらしい。

 記事では、後半で「あらすじをブログで紹介し、有料サイトへのリンクでアフィリエイト収入を得ると、著作権上の問題になる可能性がある」そうだ。

 ちなみに当ブログでも、東洋経済オンラインからの記事の「引用」をしているが、記事の丸写しは当然ながら避けている。記事はあくまでブログ作成の「きっかけ」であって、本文の大部分は「私の意見」が占めるようにしている。

 当然ながら、有料サイトへのリンクなどは一切行っていない(週刊東洋経済本誌へのAmazonリンクは例外)。

 

 最後に、書籍や雑誌の価格設定について個人的な意見を述べたい

 最近では紙の書籍と電子版では価格差を付けることが増えてきたが、ほんの数年前までは同じ価格というのもザラだった。

 ちなみに冒頭で紹介した漫画「進撃の巨人」の最新29巻の価格は、紙が495円に対して電子版は462円で6%ちょっとしか安くない。

 参考までにAmazonの新書部門で現在ベストセラーの「ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)」の値引き率は10%、これが平均的な数値のようだ。ちなみに週刊東洋経済の電子版の割引率は17%と高い。

 

 出版社側の事情を詳しく知っているわけではないが、読者から見ると、電子書籍は「印刷のコストがない」「流通在庫も不要」「取次への支払いもない」「販売する書店へのマージンもかからない」などを考えると、電子版は20%以上安く設定してもおかしくないと感じる。読後に譲渡できない制限を考慮すれば、個人的には半値でもいいと思う。

 

 ちなみに著者に入る印税は、紙の書籍の場合10%を切る水準が一般的のようだが、Amazonで自分で原稿を書いて電子書籍として出版すれば印税(Amazonではロイヤリティと呼ぶ)は、70%である。

 

 漫画が売れなくなった原因として、海賊版サイトの存在があったことは事実だが、買いたくても買えない人たちが「違法」だと知りつつも、無料で読んでいた事例も少なくないだろう。理由がどうあれ決して許される話ではないが。

 

 出版社には、電子版を値下げできない事情もあるかとは思うが、タブレットやスマホで漫画を読むという流れはもはや止めようがないのが実情だ。

 であれば、いっそのこと思い切り電子版を値下げして、販売冊数の増加で紙版の売り上げ減をカバーするというのも手だし、最近急速に普及しているサブスクリプション(定額購読)で「ページや一話単位」の収益を狙うのもアリだろう。

  そもそも雑誌は休刊が続いてるし、販売する書店自体の減少に歯止めがかかっていない。

 

 摘発と罰則の強化で海賊版サイトは減る傾向を強めるだろうが、その結果、漫画を含めた書籍・雑誌への関心が薄れて読者が減ってしまっては元も子もないと思うのだが。

使えない「若手」も「ベテラン」も任せる仕事次第で戦力になる

「できる事しかやらない部下」を覚醒させる方法(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 どこの会社にも、「まだ若いのに新しい業務を受けたがらない」「ベテランなのに年齢相応の仕事をしてくれない」と悩む管理職は結構いると思う。

 こうしたちょっと「面倒な」社員を、戦力として生かす手法を紹介する記事「『できる事しかやらない部下』を覚醒させる方法」が10月2日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 結論から先に言えば、「言われてみればその通りの王道」ではあるが、具体的かつ分かりやすい文体で、納得、好感を持てる記事だった。

 

 具体的な内容は記事を読んで頂くとして、簡単に趣旨を引用すると「失敗を恐れる若手には、小さな成功体験を積ませる」と「ベテランには経験を生かせる思考力、説明力を生かせる仕事を任せる」の2点だ

 

 若手に関して言えば、私自身の見方は、記事にあるような「能力はあるのに事なかれ主義の消極派」と「能力が低いのに意識だけは高い系の積極派」の二極化がやや進行しているような気がしている。

 上司や周囲とうまく「間合い」を取りながら、先輩の仕事を「見習って」自分から成長していくような、会社にとって「手のかからない若手」は減ったのは確かだろう。

 

 とは言え、「若手を育てる」のもマネジャーの仕事だから、相手に自主的な変化を求めるのではなく、変化できるような環境を与えることが重要な訳で、その観点から記事にある「半年かけて“自己効力感の種”を植える」というのは、実効力のある対策だと思う。

  「自己効力感」とは、「自分ならうまくやれる」と思える感覚のことで、この積み重ねで少しづつできる仕事の範囲を広げさせていくというのは合理的だろう。当然ながら個人差はあるので、任せる仕事の水準や期限には細かい配慮が必要だが、自分でできる仕事の範囲が広がっていけば、仕事を多面的に見るようになると思うし、その結果仕事への「判断力」は高まるはずだ。

  自分の「判断」でこなせる仕事が増えていけば、自然と仕事の「面白さ」と「難しさ」への理解が深まるので、消極的な姿勢は変化していくだろう。

 こうなれば、マネジャーとしての仕事はとりあえず「成功」である。

 

 一方、ベテランに対しては、経験を生かせる仕事を任せるのは「王道」ではあるのだが、その手法には気を付けたい。

 ここで言うベテランとは例えれば「役職定年を迎えた年上の部下」が該当すると思うのだが、総じて彼らの心理状態は、「役職も部下もいないので仕事をする覇気がない」か「部下はいないがこれまで通り自分主導で仕事を進めたい」のどちらかであることが多い。

  つまり、仕事に対する意欲が「まったくない」か「分不相応にありすぎる」の両極端なのだ。これがベテランへの対応を難しくしている

 

 前者について言えば、「年下の上司」にとっては、現実にはできることは限られるだろう。ベテランに少なくとも一定の分野で経験があるとしても、新しい仕事には抵抗もしくは後ろ向きの反応しか示さない可能性が高い。

 記事の趣旨とは反するが、こういう人たちには「馴染んだ定型ルーチンワーク」を任せるのが最善策だと思う。無理に嫌がる仕事を任せて「マイナス」の結果を生むよりは、現状維持の「プラスマイナスゼロ」の方が、相対的には評価できるからだ。やや後ろ向きの対策だが、現実的だと思う。

 

 後者に対しては、有効な方法として「プライドをくすぐる」がある。そもそも人に物事を教えたり、指導するのは好きなのだから、あとはその仕事の「内容」に配慮すればいいのだ。

 何の指示もなく「若手の相談に乗る」「新人に仕事を教える」などを任せると、大体の場合「指導と言う名の自慢話」になる可能性が高い。

 仕事を依頼するにあたっては、慎重かつ丁寧に「具体的に関与できる仕事の範囲を決めておく」ことが必要だろう。

 こちらは先の若手と逆で、放っておくと「暴走」する傾向があるので、常にウォッチしておく必要がある。

 

 記事では最後に、「いいマネジャーかどうかは、部下の眠れる力をうまく活用できるかどうかで決まると言っても過言ではない」と持論を披露している。

 これには私も諸手を挙げて賛成したい。マネジャーの本来の仕事は「自分がいかに仕事を効率よく大量にこなす」ではなく「いかに部下にいい仕事をさせて、成長させられるか」だと思うからだ。

 

 会社の財産の柱の一つは人材(人財)である。会社が成長するにあたって、社員の成長が欠かせないのは言うまでもないだろう。

中小企業「ヨドバシカメラ」のキャシュレス還元策に他社はどう対抗するか

「大企業」の家電量販店はどう対応するのか

 

本日、10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられた。

 巷では、税率引き上げで景気に悪影響というマクロ経済的な批判から、軽減税率制度の導入に伴う混乱、キャッシュレス決済への優遇措置など、様々な視点から議論が交わされている。

 

 私がこのブログでよく紹介する「東洋経済オンライン」にも、本日付けで「大打撃!『外食の税率10%』を乗り切る新常識」という記事が掲載された。

 記事では、タイトルにある「外食」をテーマに解説。通常なら10%の消費税が、キャッシュレス還元制度を利用すれば「お得」になる方法を紹介している。

 

 ということで、今回は当ブログでも「旬」である税率引き上げをテーマに記事を書くが、テーマは「外食」ではなく、「家電量販店」である

 

 今回、キャッシュレス還元の恩恵を受けるのは中小企業なのだが、この中小企業の定義が業種にもよるが小売業の場合、「資本金5000万円以下または従業員50人以下」となっている。

 ここで個人的に大きな話題となると前々から想定していたのが、「ヨドバシカメラ」なのだ。

 ご存じのように同社は株式を公開していない非上場企業。同社のWebサイトによれば、売上高は6931億円(2019年3月)、従業員は5000名(2018年4月)だ。会社の規模で言えば、並みの上場企業以上である。

 ところが、wikipediaによれば同社の資本金は、3000万円で、これは経済産業省の「キャッシュレス・ポイント還元事業 (キャッシュレス・消費者還元事業) 中小・小規模店舗向け説明資料」によれば、小売業では「中小企業」に相当することになる(資本金5000万円以下または従業員50人以下)。すなわち、キャッシュレス還元制度がフルに利用できるのだ。

 ただし、上記を満たしていても、確定している(申告済みの)直近過去3年分の 各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中 小・小規模事業者は補助の対象外、という仕組みもあるので、これをどうやってクリアしているのかは非上場企業だけに不明だが。

 

 ということで1日早朝にヨドバシカメラのWebサイト「ヨドバシドットコム」を見て、やっぱりと実感した。

 トップページの最上段に「10月1日からキャッシュレス決済で+5%還元」と大々的に宣伝しているではないか。これが実現可能なのは、同社が「中小企業」に分類されているからに他ならないだろう。ただし、同社発行のゴールドポイントカード・プラスを利用することと、なぜか12月31日までの期間限定の条件付きだ。

 

 ちなみに上場しているビックカメラ(銘柄コード3048)の資本金は259億円、ヤマダ電機(同9831)の資本金は710億円である。堂々たる大企業なのだ。

 

 さて、そのビックカメラだが当然ながら「キャッシュレス還元」をアピールできない。代わりにこれまでの税別表示から「全品税込表示」に切り替えたことをアピールしている。どこまで効果が見込めるか不明だが、同じ商品の価格が同じなら(ちなみにヨドバシは相当以前から税込表示)、ポイントで5%も有利なヨドバシを選択するだろう。

 

 ちなみにヤマダ電機は、Webサイトでは9月28日から10月4日までの「家電大バザール」が目立つ程度で、キャッシュレスに関する価格への言及はない。

 

 熾烈な価格競争を日々繰り広げている家電量販店で、5%の価格差は決定的な勝敗要因になる可能性がある。しかも12月までの期間限定とはいえ、冬のボーナスシーズンをカバーしているし、今後急速な普及が見込める4Kテレビなど高額商品が目玉になると見込まれることの影響も大きい。

 

 個人的な事情を明かせば、約10年前に購入したプラズマテレビが寿命を迎えつつあるので、冬のボーナス商戦を狙って買い替えの検討を進めているが、ヨドバシ以外の他社がこの不利な状況を「黙って指をくわえて見ている」とは思えない

 

 想像するに、利益を削ってまでヨドバシ価格に合わせてくる可能性もあるが、そうなると業績への影響は不可避で、株価への悪影響は避けられないだろう。

 となると、考えられるのは、売上高7000億円規模で従業員が5000人もいるのに「中小企業」という枠組みがおかしい、という論陣を張ってくる可能性である。

 

 政府やマスコミも、キャッシュレス還元の本来の目的の一部に「中小企業対策」が含まれているのは認識しているはずなので、中小企業の定義に新たに「売上高」などの基準を追加してくる可能性は否定できない。

 

 ただ、この還元策も来年6月までの期間限定。ヨドバシカメラが今年12月までの期間限定にしたのも、こうした優遇への批判や規制に配慮、税率引き上げ後の混乱が一巡して、規制論が盛り上がる前までに「とりあえず3か月だけ実施しよう」という腹積もりかもしれない。

 逆に規制に向けて動きがなければ、3月、4月の新年度入り、6月のボーナスシーズンまで期間延長も視野に入れているはずだ。

 

 いずれにせよ、10月以降の家電量販店業界では、ヨドバシカメラを軸にキャシュレス還元制度をめぐって大きな話題を集めることは間違いなさそうだ。

 

不要な大学は「淘汰」させるしかない――個性化が生存の道

日本ではなぜ人口減でも大学が増え続けたのか(東洋経済オンライン)

木村 誠 : 教育ジャーナリスト

 

 最近では「私立大学の40%近くは定員割れ」という事実は広く認知されるようになったが、この事態に関して、その経緯と現状、そして逆境下で奮闘する大学を紹介する記事「日本ではなぜ人口減でも大学が増え続けたのか」が9月30日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事ではまず、18歳人口の減少と首都圏特に東京近郊の大学への進学志向にも関わらず、地方の大学が増え続けたのは、地方自治体が既存の学校法人と協力し、財政支援をする「公私協力方式」と、その後の実質的に公設でありながら法的には民営(学校法人)という「公設民営方式」という2つの大学開設制度が影響したためと解説している。

 

 このどちらも失敗に終わった結果、今度は起死回生策として行ったのが「設置者変更による私大の公立化」である。

 この試みは、前の2つと違って成功例が出ている。例えば秋田の公立「国際教養大学」はその独自の教育プログラムが評価されて河合塾による入試難易予想ランキングでは東大、一橋大に引けを取らない。

 

 もっとも現状は、私立大学の経営は低迷を続けていると言える。先の40%割れと言うのは「全国」の集計であり、「地方」に限定すれば50%は超えているだろう。

 

 この原因はひとえに、地元の大学に通う魅力を高校生が感じられないからに尽きる。何ら教育プログラムに特徴もなく、キャンパスもただ広いだけで学生生活も楽しめそうもない、しかも就職実績は見るべきものがない、となれば進学したいと思う志望者がいるはずがないのである。

 

 最近では、 福井県など13県でつくる「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」が9月3日に、内閣府に「大都市圏の大学の定員を削減し地方大学の定員拡大を促進すること」などを提言しているが、地方私大の現実をまったく理解できていないとしか思えない。

 提言した福井県知事などは、同じ日本海側にある国際教養大学を少しは見習えと言いたい。もっとも当事者は事情を分かったうえで、県民や支援者へのポーズとして出向いたのが実情と信じたいが。

 

 結局のところ、大学進学率がこの30年間で50%強まで上昇したとはいえ、それ以上のスピードで大学(特に地方)を増やしたことが、定員割れの主因なのだ。

 

 ではなぜ、経営難の地方の私立大学が生き残っているかと言えば、「補助金」と「地元の勉強意欲の乏しい学生」に支えられているからだ。

 

 特に、いわゆるFランクと呼ばれる偏差値の付けようがない「ボーダーフリー」「フリーパス」の大学においては、学生のレベルに問題がありすぎるケースが多いと思う。

というのも、この水準の大学には、自分の意志で行きたい大学を選んだのではなく、「親がとりあえず大学に行っておけというから」とか「高校の教師がお前でも行ける大学があるというから」などの理由で、進学する方が圧倒的多数ではないだろうか。

 

 よって元来勉強する意志のない学生しか集まらないから、勉学において積極性や向上心などは望むべくもなく、クラブ活動などにも消極的。就職にあたって何の努力もしない。

 その結果は、地元の中小企業にしか採用されないという結果になる。まあ元々彼らは地元志向が強いので、卒業後の人生も地元で「完結」するのが本望なら、これで構わないのかもしれないが。

 

 ただ補助金を使って運営している以上、「大学」レベルの教育をするのは最低条件だろう。それすらできない大学には存在価値があるとは言えないはずだ。

 

 記事では、情報科学の専門性や地域貢献などで評価を高めた公立の「会津大学」や、今後ニーズが高まる介護など医療系の私立大学の新設を紹介しているが、こうした独自の努力と経営改革で奮闘している個性的な大学も存在する。

 

 補助金に依存した低レベルの大学には、早々に退場願った方が、日本の大学の「質」を確保するためにも、良いと思うのだが。