如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

日米ともに奨学金の問題点は企業の「大卒信仰」だ

アメリカを静かに殺す「学生ローン」という爆弾(東洋経済オンライン)

アイネズ・モーバネ・ジョーンズ : ライター/編集者(在シアトル)

 

 アメリカの学生が抱える学生ローンの総額が初めて1兆ドル(約110兆円)を超えた。この金額はクレジットカードの合計債務額よりも多い――米国の大学生の多額の債務の現状と問題点を解説する記事「アメリカを静かに殺す『学生ローン』という爆弾」が1218日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 日本の公的な奨学金貸与機関である日本学生支援機構の平成28年度事業説明によれば、貸与金額の総額は1464億円だから単純比較では米国は日本の100、人口や進学率から見てアメリカの大学生は単純に日本の4倍程度の奨学金を借りている大学生がいるとしても、一人当たりの借入金額は日本の25倍程度になる。

 

 まず、なぜこのような高額の借り入れになるかと言えば、米国の私立大学の学費が高いから。記事によれば市大学生の年間費用は7万ドル(約760万円)だという。これには学生寮や食費、教科書代などが含まれているが、日本の私立大学の学費が、年間90万円(2018年、授業料)に比べれば格段に高い。

 

 ではなぜ、高い学費を支払ってまで大学に行くのかと言えば、この理由は日本・米国ともに共通で「給料の高い良い仕事」に就くため

 日本でも、大企業は「大卒」を採用条件にしている会社がほとんどだが、状況は米国でも同じようだ。

 

 ただ学生の抱える金額の絶対額の差は歴然としている。先に25倍と書いたが、日本でも学費以外の諸経費を考慮すればそこまで大きくないのかもしれない。

 また、一流私大を優秀な成績で卒業して、コンサルや投資銀行などに入れば初任給も日本とは数倍の格差があるはずで、彼らには返済は大きな負担にはならないだろう。

 

 私も私大出身だが、当時はまだ奨学金を借りる学生の比率は現在よりかなり低かったと思う。月数万円の借り入れだったが、借入時に面接があり、その後も毎年成績をもとにした面接があり、授業や試験に気が抜けなかったし、何よりも卒業後に100万円単位の借金を10年で返せるのかとても不安だった記憶がある。

 

 現在は、学生の半数が奨学金を借り入れているとも聞くし、時代が変わって借金への不安が薄らいでいるのかもしれないが、終身雇用制度が崩壊し、非正規雇用の比率が高まる中で、最大20年にも及ぶ返済が確実とは言い切れないのではないだろうか。

 

 記事では米国では、学費負担を担うべき親が10人のうち4人しか貯蓄をしていない、と親の学費のための貯蓄の低さを指摘しているが、これにはやや違和感を覚える

 初年度の入学金などを含む費用の支払いは高校生には無理だろうから親の肩代わりは理解できるが、その後の費用は自分で調達するのが当然ではないか。

 大学は義務教育ではないのだから、行く行かないを決めるのは本人である。しかも借入時に返済シミュレーションは明示されるはずなので、卒業後に「こんな多額の返済はできない」などと泣きつくのは、社会人としての自覚に欠けると言われても仕方がないだろう。

 

 もっとも、最大の問題は特に米国においては「学費」の高さだ。大学の運営費用や補助金の女性政策なども影響してるのだろうが、年間760万円は4年間で約3000万円ということだ。米国の郊外ならまともな戸建てが十分に買える金額だろう。

  さらに根が深いのが、大学にいかないと良い仕事に就けないという現実だ。進学したからといって良い仕事が保証される訳ではないのだが、行かなければその可能性すらゼロになる。

 医師や弁護士、会計士などある程度高給が見込める仕事に就くために専門学部に進学するならともかく、普通の人文科学、社会科学系の学部に進むのは費用に見合わない可能性が大きい。これは日本でも事情は似ているかもしれない。

 

 日本の場合、個人的に対策として考えているのは、会社側が「大卒」信仰を止めること、そして一定水準以下の大学の削減である。

 

 日本でも、2017年度に「実習や実験等を重視した即戦力となりうる人材の育成を目指す」専門職大学の制度が導入されたが、既存の高校や高専にも特殊分野に限れば優秀な技能を持つ生徒は少なくない。

 これは以前に新卒採用の関係者から聞いた話だが、就職希望者に一般常識のペーパーテストを実施したら、商業高校の生徒の方が、一部の大学生よりも点数が高いことは珍しくなかったそうだ。

  企業側も、就職希望者の「大卒」という肩書ではなく、「スキル」という資質を見極めて、人材を採用・育成するという方策を検討すべきではないだろうか。

 

 もうひとつの「大学の削減」だが、これはいわゆる偏差値の付けようのないFランクの大学を意図している。地方や郊外の小規模私大が多いが、事実上無試験で入学できるので、そもそも大学で勉強しようという意思のない学生が大半のはずだ。

 よって4年間の学生生活をアルバイトとサークル活動に終始し、卒業となる。こうして手に入れた卒業証書にどれほどの価値があるというのだろうか。それも多額の奨学金を借りてまで。

 

 米国の学生ローンほど日本の奨学金の事情は深刻ではないかもしれないが、根拠のない「大卒信仰」と、価値のない「大学淘汰」は、いずれ現実のものになると思っている。

 

五つ星ホテルは日本の観光業の仕組みを変える「きっかけ」になる

政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点(東洋経済オンライン)

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長

 

 東洋経済オンラインではおなじみの小西美術工藝社社長デービッド・アトキンソン 氏が、12月17日付で「政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点」というタイトルの記事を投稿した。

 事の発端は、菅義偉官房長官が7日「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度、新設することをめざす」と発言したこと。

 

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 記事によれば、問題視されているのは「財政投融資を活用し、日本政策投資銀行による資金援助などをするという点」のようだ。つまり税金を高級ホテル建設に使うべきかという指摘だ。

 対して、デービッド・アトキンソン 氏(以下著者)は、海外からの富裕層を招くことが日本の観光業の隆盛に繋がる理由を「合理的」に解説していて、今ひとつ論点がかみ合っていない面もある。

 

 前者が、税金の使い方という財政面から「方法論」を展開しているのに対して、著者は高級ホテルが日本の観光業の付加価値化を高め、生産性も向上するという「結果論」を重視しているからだ。

 

 個人的な感想を言えば、著者の意見に賛同したい

 日本に外国人向けの高級ホテルが足りないのは事実。記事によれば五つ星ホテルは日本には32軒しかないのに対して、アメリカには755軒、インドネシアにはバリ島だけで42軒もあるという。

 

 これは、これまでの日本の観光業が歴史的に「国内需要」しか相手にしてこなかったツケが、近年の訪日外国人の急増で表面化したといっていいだろう。

 

 日本にも有名温泉地に高級旅館と呼ばれる一泊2食で10万円クラスの宿泊施設はあるが、これも主たる顧客は国内の富裕層で、1泊もしくは2泊程度しか想定していない。提供される食事が多くの場合、朝夕共に2つのバラエティしかないことがその証拠だ。

 これでは外国人客が好むとされる「長期滞在型」の宿泊には対応できない。

 

 中国人観光客は、東洋経済オンラインの過去の記事「中国人が山ほど金使う「日本観光」の残念な実情」にもあったが、富裕層は「1週間程度の滞在で、1人当たりの消費支出は平均200万~300万円にも達する」そうだ。

 彼らの宿泊地の選択基準は「価格」ではなく「満足度」であり、納得できるのなら大金を出すことを惜しまない。

 

 日本政府観光局(JNTO)の訪日外国人の推移を見ると、韓国は7月以降激減しているが今年前半前までは中国と並んでトップ集団に入っていた。

 ただ、観光の場合「対馬への日帰り旅行」が多く、消費金額も少ないという側面があり、来日数の増加が観光収入の増加にあまり貢献していないという指摘も一部にある。

 

 現状だけ見れば、確かに九州など韓国人観光客を目当てに商売をしてきた関係者には厳しいだろうが、これは逆に「韓国」への依存度を低くするいいチャンスでもある。

 

 依存するのは「韓国」という特定の国からの観光客だけの問題ではない。特定の「観光地」に人気が集中している現状も解消させる必要はあるだろう。

 

 京都を筆頭に有名観光地は外国人で溢れ、「観光公害」のレベルまで達している。京都の祇園では「観光客のスマホにマナー順守に関する情報を自動配信する実証実験を始める」という事態にまで発展している。

 

 全国各地に五つ星ホテルを拡充することで、この外国人観光客の「量」と「質」の問題は大きく改善するはずだ。

 

 これまでの日本の観光政策は「とりあえず日本に来てください」という観光地として日本を知ってもらうことが優先され、数年前まではそれが通用したのは事実。

 これが「インバウンド効果」などで、中国からの買い物目当ての観光客が激増し、そのうちの一部がリピーターとして訪日している結果、現在の膨大な観光客が維持されている側面は大きい。もちろん、北米、欧州も順調に伸びてはいるが。

 

 これからは「宿泊でも飲食でもお金を使ってください」を意識したスタイルに変換していくべきなのだろう。

 言い方は悪いかもしれないが、観光客を迎える側(観光地のインフラ)で、来てほしい客を選別する時代に入ったのだと思う。

 

 日本の地方にはまだまだ埋もれた名所・旧跡が多いはず。それらを「短期格安ツアーの低消費観光客」に奪われる前に、五つ星のホテルなど整備して、「プライベートで長期滞在する上客」を囲い込むことが有効策ではないだろうか。

 

 

 

地方のマンションという業界内のスポット現象について一考

人口減の地方でも「マンション好調」のカラクリ(東洋経済オンライン)

一井 純 : 東洋経済 記者

 

 首都圏のマンション価格が高止まりし、販売が伸び悩む中、地方でマンションに動きが出ているらしい。

 12月16日付けの東洋経済オンラインに「人口減の地方でも『マンション好調』のカラクリ」というタイトルの記事が掲載された。

 

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 記事に出てくるのは、倉敷市の住居・商業複合施設、宮城県塩釜市と秋田県横手市の小型マンション、岡山駅に近いタワーマンションの4件だ。

 

 いずれも人口は、48万人、5.4万人、8.8万人、71万人となり、倉敷と岡山は50万人近い人口があるので、新幹線停車駅でもあり、それなりに需要はあるかもしれない。

 記事では、野村不動産が地方でのマンション開発を加速させていると伝えている。

 

 一方、他の宮城と秋田の2つのマンションはやや事情が異なる。どちらも人口は10万人以下で「戸建て」が主力の地域だ。

 それでもデベロッパーが手掛けたのには、地元でマンションへの需要が「溜まっている」という事情らしい。

 塩釜の場合は、市内の起伏が激しく、高台に建つ戸建てに住む高齢者などからより利便性を求める声が、横手市の場合、スキー場で有名は豪雪地帯ということもあり、雪かきが負担になる戸建て居住者のニーズが、それぞれあったようだ。

 

 ただ、この「地方でマンション建設」という動きが、今後急速に拡大する可能性は高くないと思う。

 野村不動産が地方でのマンション開発を進めるのは、首都圏のマンション価格が高騰し、普通のサラリーマンの手が届かない水準まで上がってしまった結果の影響が大きいだろう。

 しかも同社は他の財閥系に比べて住宅部門の比率が高く、首都圏のマンションの落ち込みを地方でカバーしたいという意図もあると想定される。

 

 もっとも記事にある2つのマンションの戸数は63戸と54戸と小規模。実際に開発したのは中堅デベロッパーだ。野村不動産が手掛けるには規模が小さすぎる。

 

 地元の「急こう配」や「豪雪」といった特殊事情によるシニア層の駅近マンションの購入には、一定のニーズがあるだろうが、記事にも「マンションは自営業者や公務員、士業など地方都市に住む高所得層からの引き合いが強い」とあるように、購入する層の厚みには欠けるという現実もある。

 

 実際に、マンションに住み替えようと戸建ての売却を考えても、現在の地方の土地価格の実勢を見る限り、新築マンションを買うための十分な資金とはならないケースも多いはずだ。

 一方で、マンション建築価格に占める比率では土地よりも建物の方が圧倒的に高いが、建築に伴う「建材」「人件費」の価格は、首都圏と大差がないので、結果として、マンション価格自体は首都圏の郊外物件とあまり違わないことになる。

 戸建ての実家を売ってマンションに移れる層は、想定以上に少ないのではないだろうか。

 

 一方の、倉敷の複合施設、岡山のタワマンは、人口も50万人規模以上そこそこあって、ニーズは期待できそうだが、記事ではこれにも「再開発」「補助金」という仕組みがあってこそだと解説している。

 

 駅前に古い民家や雑居ビルが乱立する地区では防災や交通面で再開発が必要なのは理解できるが、岡山のような補助金とタワマンを前提にした開発には、一時的な盛り上がりは見せても、数十年後の人口・世帯の減少を考えると、入居者の減ったタワマンが「寂れた都市の象徴」になっている可能性すらある。

 

 実際に「神戸市がブチ上げた『タワマン禁止令』の波紋」など、日本全体としてタワマンは回避される傾向にあるだけに(当ブログでも記事化)、この岡山の事例は、隣接する兵庫県の神戸市とは対照的な対応だと言えるだろう。

 

 個人的には、地方でもコンパクトシティ化を推進するための住民を市街中心部に集める「身丈に合ったマンション」の建設には賛成だし、補助金も使うべきだとは思う。人口が集中すればゴミ収集、水道供給などのコスト削減が可能になるからだ。

 地震などの自然災害発生時への対応も、迅速かつ効率的に行うことができるだろう。

 

 地方都市のタワーマンションが「一時の可憐な花」だとすれば、地元の事情に配慮した小規模マンションは「地味ながら根付いた草」といっては言い過ぎだろうか。

サラリーマンの不動産投資、いい加減現実に向き会うべき

またぞろ融資書類改ざん「投資用不動産」の受難(東洋経済オンライン)

一井 純 : 東洋経済 記者

 

 ワンルームマンションなど投資用の不動産をサラリーマンがローンで購入する人はいまだに多いようだ。将来の年金支給額などへの不安がその背景の一因なのだろうが。

 

          

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 こうしたなか、投資用不動産に関する融資書類の改ざんが再び露呈したことを伝える記事「またぞろ融資書類改ざん『投資用不動産』の受難」が12月13日付けの東洋経済オンラインに掲載掲載された。

 

 要約すると、東証1部上場のマンション開発業者「コーセーアールイー」の子会社が、顧客にマンションを販売する際、銀行へ提出する源泉徴収票等の収入を証明する書類や、中古物件の入居者から受領する賃料に関する書類を書き換えた疑いがある(同社発表の資料)。らしい。

 

 記事によれば、土地とセットのアパート融資は金融庁の監視が厳しくなったが、マンションの区分所有には監視の目が届かず、金融機関もアパートからマンションへと不動案収支の軸足を移していたらしい。

 

 融資に関係した金融機関は2行だが、どこかは不明。ただ不動産融資に関する書類改ざんでは、最近ではスルガ銀行西武信用金庫などが行政処分を受けており、この2行も書類改ざんにまったく無関係かどうかは不明だ。

 

 今回の記事や報道などを受けてまず思うのは、「どうして安易に不動産投資に大金をつぎ込むのか」という疑問だ。

 

 想像するに、先に述べたような老後の生活資金を補填などを想定している人のほか、純粋に賃貸料収入で副収入を得ようとする人も多いだろう。

 

 書店に行けば、「サラリーマンが大家さんになる」という趣旨の本も多く出版され、マンション投資の無料セミナーも頻繁に開催されている。富裕層ではない我が家にも投資勧誘の電話がかかってくるぐたいだから業界自体は活況なのかもしれない。

 ただ、不動産投資をすればバラ色の将来が待っているかのような期待を抱かせている感は否めない。

 

 問題の本質をずばり一言で言えば、「普通のサラリーマンがフルローンで新築ワンルームマンションを買って収益を上げ続けることは現状ではほぼ不可能」という現実に気付くべきだ、ということだ。

 

 別の言い方をすれば、マンション一室を投資向けに購入するというのは「時限爆弾を抱えるようなものだということ。

 具体的な危険要因を挙げれば、

1.新築時は入居者があっても築年数が経てば魅力は減るので空き家の可能性が高まる

2.空き家になると賃料を下げざるを得ないので収入は減る

3.賃料を下げると入居者の質が落ちるので賃料未収などトラブルの可能性が高まる

4.当然部屋の扱いも粗雑になるので設備などリフォームの費用がかさむ、

5.長期のローンを変動金利で組む場合、金利はさらに下がる可能性はほぼゼロだが上がる可能性は十分ある。しかも金利は投資用なので自宅居住用より高い

6.建築後30年近く経ったマンションにどれほどの資産価値があるのか不明

 

 などザッと考えただけでこれだけの不安要素がある。

 

 6.の資産価値については「都心3区などの優良物件を購入すれば問題ない」という意見もあるが、現在の不動産市況では普通のサラリーマンが買える価格水準ではないはずだ。

 ちなみに不動産経済研究所の10月度「首都圏マンション市場動向」によれば、東京都区部の平均分譲価格は7002万円。これには足立区や墨田区なども含まれるから、人気の都心3区の平均価格は8000万円以上だろう。

 

 誤解を招くようだと困るので確認しておくが、私は「不動産投資」を否定しているのではない。個別物件に多額の資金を集中する投資手法を問題視しているのだ。

 実際に、私は不動産投資信託(REIT)を通じて、間接的に不動産投資を数百万円規模で実践している。

 

 REITであれば、数万円から投資可能で、物件も自動的に分散投資となり、物件管理の手間もかからない。総じて流動性もあるので換金したいときにいつでも現金化できる。

 しかも実際に物件を選別・投資するのは一応不動産のプロなので、素人よりは物件を見る目はあるはずだ(と信じたい)。

 最も関心のある利回りも、3%以上の銘柄は多数ある。ただしREIT相場は今年に入って20%近く上昇しているので、ここからの新規投資には慎重というのが現在の私のスタンスだ。

 

 ということで、普通のサラリーマンが不動産投資をするなら、REITから始めることを勧める。

 東証は不動産証券化協会と組んで、毎年Jリートフェアを実施(今年は11月29,30の2日間だった)しているし、日本経済新聞は毎月Jリートセミナーを開催している。ちなみにどちらも参加費用はかからない。

  まずは、投資信託協会のWebサイトの「そもそもREITとは?」からはじめてはどうだろうか。

 

ネット通販、日本独自の商慣習を超えてD2Cは普及するか

日本の「ネット通販利用」がまだ遅れている理由(東洋経済オンライン)

劉 瀟瀟 : 三菱総合研究所研究員、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員

 

 近年すっかり一般的となったと個人的に感じていたネット通販だが、米国、中国に比べるとその利用度はまだまだ低いらしい――この実情を解説する記事「日本の『ネット通販利用』がまだ遅れている理由」が12月12日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 記事では、米国では人口の72%が、中国ではインターネット人口の73%がネット通販(EC)を利用している一方、日本のEC利用率は35.9%に留まっているとし、その理由として、

  1. 小売業が消費者のEC習慣を育成してきた
  2. 返品がしやすく、消費者のECストレスを軽減している

 の2点を挙げている。

 

 また、最近のトレンドとしてD2C(Direct to Consumer)つまり 自社運営ECサイトやSNSで直接消費者する販売手法が注目されていることも紹介している。

 

 1については、具体的に11月に米国では小売り業界で「ブラックフライデー」が、中国ではアリババが作り上げた11月11日「独身の日セール(W11)」の存在がネット通販への顧客の取り込みに成功したことを引き合いに出している。

 

 日本でも、お中元、お歳暮、クリスマスなど販売促進のセール期間は昔からあるが、あくまで実店舗での売り上げ増を狙ったものが主流(百貨店の催事場でのお歳暮対応など)で、ネットを意識した戦略はあまり聞いたことがない。

 

 近年はAmazonが日本でも「ブラックフライデー」を実施するなど、機運は出ているようだが、追随する動きは鈍いようだ。

 私自身、Amazonのヘビーユーザーなのだが、通常行われている「タイムセール」と比べて特に魅力的な商品や価格を「ブラックフライデー」で見かけることはなかった感がある。販促効果が大きかったようには思えない。

 

 以上を考えると、何らかの”個別”セールをきっかけに、日本でネット通販の急拡大に繋がる可能性は低いだろう。利便性向上という観点からじわじわと浸透していくと思う。

 

 また日本には、生協(COOP)という独自の組合組織があり、昔から宅配事情を行ってきたという事情も影響しているかもしれない。日本生活協同組合のWebサイトによれば、2018年度の小売シェアは2.69%とここ数年足踏み状態だが、組合員数は2924万人と着実に増えている。

 

 2については、日本の返品対応が特に遅れているとは思わない。またしてもAmazonを引き合いに出して恐縮だが、Amazon.co.jpが発送する商品を顧客側の都合で返品する場合は未使用・未開封の場合100%、開封炭の場合は50%が返金される(原則、返送料は顧客負担)、商品のトラブル・不具合の場合は、返送料も含めて100%返金される。

 

 私自身、何度か商品の不具合で返品したことがあるが、返品専用のページに必要事項を入力して、バーコードの表示されたページを印刷して、商品と一緒に梱包するだけなので、大した手間ではない。

 ということで、返品にかかるストレスがさらに一般的なサイトでも解消されていけば、ネット通販の拡大要因にはなるうるだろう。

 

 もうひとつの注目点である「自社運営ECサイト」だが、個人的にはもっとも充実しているのはヨドバシカメラだと思う。

 ちなみに、通販新聞社の2017年度「ネット販売白書」によれば、売上高のトップは断トツでAmazonだが、ヨドバシカメラも2位に付けている。

 家電量販店では最も古くから通販を手掛けてきたが、最近では飲食品、医薬品、電子書籍など幅広く手掛けている。しかも電子書籍に至っては20%のポイント還元と他社を大きく凌いでいる。

 また、他の自社運営サイトECと異なり、自社で配送業務まで手掛けているという「強み」もある。

 余談だが、ヨドバシカメラは資本金3000万円という「中小企業」という立場を生かして、通常のポイント制度に加えて、年末までキャッシュレス還元5%を実施して、競合他社との差別化も強化している。

 

 ヨドバシは品揃えも豊富なので、月に何度かは商品のトレンド確認のために店舗に行くのだが、サービス内容も充実している。

 店内で無料WiFiが使えて他店との価格比較が自分のスマホで自由にできるうえ、実際に商品を購入しようと店員に相談すると、その場で自社のネットや他店舗との価格を調べてくれて、最安値での購入を勧めてくれるなど、その顧客優先の対応は同業他社とは比較にならない

 

 記事で最後に、丸井のショールーミング戦略やアマゾンジャパンの置き配など、日本でも「進化」していることを紹介している。

 

 高齢や単身の世帯の増加で、ネット通販には「追い風」が吹いているのは確かだろう。ただ、他国の仕組みをそのまま日本に当てはめても成功するとは限らない。

 商品の特性を考慮し、顧客の利便性、返品や宅配への安心度を高めていけば、ネットで買うのが当たり前になる時代は意外にそう遠くないのかもしれない。

情報は「インプット」よりも「アウトプット」重視で

 SNS「バズる投稿」と「スベる投稿」の決定的な差(東洋経済オンライン)

成毛 眞 : HONZ代表

 

 昨日、当ブログで、「記事の言う「『盲点』が何なのかがわからないという『盲点』」というタイトルで、「東洋経済オンラインに掲載に値するまでの水準に達している内容とは思えない」と酷評する内容を書いて、コメントとして東洋経済オンラインに投稿もしたのだが、その直後にコメントは削除されてしまった。

 

 想像するに、編集方針への批判と受け止められた結果なのだろうが、自由な意見交換の場を提供するにしては「ずいぶん了見の狭い」な対応だとは感じた。

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 まあ、私自身はブログのタイトル通り「人とは異なる視点」をウリにしており、事実に基づいて感じたことは利害関係なしでズケズケと書くので「怒りを買う」ことは多い。この手の「理不尽な対応」はAmazonのベスト100レビュアーの際にも経験している。

 相手もビジネスなので「不利益」を感じるコメントには、「削除」で対応するのは当然ではあろう。

 

 さて、今回の対象記事は12月11日付けの東洋経済オンラインに掲載された「SNS『バズる投稿』と『スベる投稿』の決定的な差」である。

 

 著者は元日本マイクロソフトの社長で、現在は書評サイト「HONZ」を運営する成毛眞氏だ。最近の印象としては、ビジネスマンに関わる諸問題へのアドバイスに関する本を多数出版している印象がある。私も当ブログの4月11日に「俺たちの定年後 - 成毛流60歳からの生き方指南」というタイトルの本についてAmazonでレビューを転載したが、現在でも「役に立った」投票数は41人でトップ評価をいただいている(ちなみに2位は12人)。

 

 さて、今回のテーマはSNSだ。

 冒頭にビジネスマンがやっていそうな情報収集活動の例が5つ紹介されている。どれも思い当たることのある内容だと思うが、私自身が実践しているのは通勤途中のニュースチェックぐらいだ。

 ただ、チェックするのはニュースアプリだけではなく、雑誌のサブスクリプション「dマガジン」の方が主体で、東洋経済、ダイヤモンドなどの経済誌や各種週刊誌なども目を通すので、発売日の月曜日は全部目を通すのに結構な時間を取られる。

 私も日によってはインプットにかなり時間を割いているのは事実だ。

 

 記事で成毛氏が主張しているのは「膨大なインプットを捨て、アウトプットにシフトせよ」ということだ。

 この主張自体は、最近では著名人がアウトプットの重要性を説いているので、目新しくはないのだが、本記事の特徴はその具体的なアドバイスにある。

 

 例として、「大衆が取り上げそうなネタを取り上げるな」と指摘している。この理由として「一目置かれるようなことを発信しないと、意味がないのである」としているが、これはその通りなのだ。

 

 まあ自己満足のためだけに書いているのであれば構わないのだろうが、多くの人は貴重な時間を割いてSNSを発信している訳で、書いた内容は読んでほしいと思っているはずだが、「大衆ネタ」ではまず読者の心に刺さらないのだ。

 

 とは言え、毎日「独自ネタ」を発掘して文章にするのは、プロの文筆家ならともかく、SNSで片手間に情報発信する素人には厳しいものがある。

 

 当ブログも、たまに自身でオリジナルなネタを見つけて記事にすることもあるが、大体は東洋経済オンラインなどで掲載された記事をネタの対象にしている。

 

 ただし、ブログに掲載するにあたっては、記事の内容をそのまま紹介するような事はしない。必ずそこにオリジナルな視点を書き込むようにしている。

 ただ単に転載・引用したり、ごく普通の感想を書くだけでは誰も読みたいとは思わないし、何より本人の発想力、文章力の強化にならない。これでは時間の無駄に近いだろう。

 

 加えて、私自身原則として早朝にWebサイトで更新された記事をネタに、朝7-8時までに1600字程度の文章に仕上げてブログに掲載、合わせて「如月ブログ/更新」の名前でコメントすることを原則にしている。

 これは言うまでもなく、対象となる記事のWebの読者がビジネスマンで勤務時間前に読んでいることを意識している。いくら良い文章を書いても、タイミングを逃せば読んでもらえるチャンスは減る。

 

 成毛氏のいう「大衆が取り上げそうなネタ」を取り上げないのもひとつの考え方だが、現在話題となっているテーマをあえて避ける必要もないと思う。

 要するに、他のSNSと内容でいい意味で「差別化」ができればいいのだ。誰もが言いそうな表現や内容は避けて、オリジナルな視点から書けば、読んでくれる人はいるはずだ。

 

 ただし、このオリジナルな視点から文章を書くには、それなりの思考回路を鍛える必要がある。一見「おやっ?」と思わせて、読後に「なるほど!」と感じさせる文章を書くのは結構しんどいものだ。

 かくいう私自身も、まだまだ修行中の身ではあるのだが。

記事の言う「盲点」が何なのかがわからないという「盲点」

今の職場でなぜか「結果が出ない人」が陥る盲点(東洋経済オンライン)

熊野 森人 : クリエイティブディレクター

 

 このブログでは、原則として東洋経済オンラインなどの記事を題材にして、個人的な見解を書くということを基本にしているのだが、今回は数ある東洋経済オンラインの記事でも、見出しと内容の組み合わせが「しっくりこない」代表のような記事を見つけたので、あえて取り上げたい。

 

 記事は12月10日に「今の職場でなぜか『結果が出ない人』が陥る盲点」というタイトルの記事。

 このタイトルから読者が想像するのは、仕事で結果を出せない人の原因と対策だと思うのだが、その内容はかなり「没個性的」というか「常識的」というか、何とも、新鮮味や説得力に欠けるのである。

 

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 著者は、クリエイティブディレクターという肩書の熊野森人氏。デザイン、芸術系の学校で学んだ後、独立し、京都の大学で講師も務めているようだ。

 

 記事前半は、仕事に「向いている」「向いていない」の判断基準を以下の3つに分類している。

  1. 周りの人の判断
  2. 周りの人との比較による自己判断
  3. 周りの予測との比較

 の3点だ。

 

 そしてこれらは「他人が褒めているか」「自分で褒めているか」に分類されていて、「まずは今の環境でほかの人を褒めてみる」ことで、職場を「褒める文化」に変えていくことができる、としている。

 

 ことわざにある「情けは人の為ならず」の「情け」を「褒める」に変えたもので、ブーメラン効果で、人を褒めれば自分に返ってくるということだろう。

 

 著者の言いたいことは分からないでもないが、東洋経済オンラインの読者の主力は、中堅以上のビジネスパーソンでることを考えると、この内容は読者には「稚拙」というか「貧弱」でしかない。

 「何かを得たければ、まずは先に与えることでうまくいく可能性は格段に上がります」という解説も、「いまさら何を言っているのか」というのが大多数の反応ではないか。

 

 記事の後半のテーマは「空気」。

 「あまりにも合わせすぎると、それは没個性となってしまいます」、「自分の情報を出していったほうが、いいコミュニケーションがとりやすくなるものです」としているが、これも「いまさら感」が強い。

 

 著者は自分を掘り下げることによって、「なぜ好きなのかを自身で納得して発信できるようになると、人にもその好きを共有しやすくなり、相手もあなたの好きを認め、応援してくれるなんてことにもつながります」と書いているが、どうにも発想が「お花畑」に感じるのだ。

 

 キモは3ページ目の半分以上を占めている「自分を掘り下げるためのステップ」なのだが、これも読んでみると、「当たり前のことを当たり前に書いている」だけなのだ。

 

 記事の最後は「人を巻き込むコミュニケーションにチャレンジしてみてください」で終わっているが、これは巷でよくある「自己啓発セミナー」の掛け声とほぼ同じである。

 

 繰り返すようだが、本記事のタイトルは「今の職場でなぜか『結果が出ない人』が陥る盲点」である。以上の内容からどこかに「盲点」を感じられるだろうか。

 

 東洋経済オンライの記事は、大部分は参考になることが多いのだが、本記事に限れば「掲載に値するまでの水準」に達している内容とは思えない。

 

 まあ、編集サイドにも「何かとしがらみ」があって、掲載せざるを得ない状況にあるのかもしれないが、今回ほど「この記事を読むなら、別の記事を読めばよかった」と思ったことはなかった。

 

 ならば、今回のようなブログを書くのは「もっと時間のムダではないか」と問われれば、返答のしようないのだが。

メールは「顔」が見えないだけに「配慮」は不可欠

メールやLINEで「地雷」を踏まないためのワザ(東洋経済オンライン)

大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

 

 何気なく送ったメールに対して、相手が予想外の激しい反応が返ってきて困惑--といった経験をしたことはないだろうか。 

 

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 12月8日の東洋経済オンラインに「メールやLINEで『地雷』を踏まないためのワザ」が掲載された。

 

 著者は日本メンタルアップ支援機構の代表理事の大野萌子氏。この組織は、「すべてのコミュニティにおいて、健全な人間関係を創るエキスパート資格」として「メンタルアップマネージャ(1級、2級)」の講座を主催している。

 ただ、この資格自体は民間資格で、試験もなく講座を受講さえすれば、取得できるようだ。ちなみに受講料は32,400円。

 

 話が逸れたが、記事で指摘しているメール文の「地雷」のパターンは3つ。

  1. 先方から御礼のメールが来た場合の返信に「それはよかったです」
  2. 相手からの質問に答えるメールの結びに「おわかりいただけましたか」
  3. 何かを依頼するメールを送る際の一言に「できるだけ早くお願いします」

 の3点だ。

 

 どれも一見すると、特に問題がないようにも思え、普段から気にも留めずに利用しているフレーズである人も多いのではないか。

 

 個人的には、ビジネスで利用するメールは「内容」が「正確」に「早く」伝わることが最優先項目だと思っているので、この例にあるような返信が来ても、特に気にするようなことはない。あまりにも失礼な言葉使いには「ムッ」となることもあるが。

 

 ただ問題となるのは、相手が自分と同じように言葉遣いに寛容かどうかはわからないという点だ。メールの言葉遣いで面倒な対応を迫られるくらいなら、記事にあるような「ちょっとした気遣い」で避ける方が効率的だ。

 

 例のなかで、もっとも使ってしまいがちなのが、1の「それはよかったです」ではないだろうか。

 記事では、「相手のことを『ジャッジ』する意味合いを含む、上から目線の対応」であることを悪手の理由としている。

 

 これは納得のいく説明ではあるが、実際に合って会話をする際には「それはよかったです」を普通に使って、相手も特段気にしないことが多いことも多いのではないか。

 つまり、メールだと相手の「表情や仕草」などがわからないので「文面」だけで判断され、違和感を持つ人が出てくるのだと思う。

 要するに「話し言葉」と「書き言葉」を使い分ければいいという話だ。

 

 2の「おわかりいただけましたか」は私自身は、使ったことも受け取ったこともない言葉だ。現実にもそう多くは使われていないと思うのだが。

 これは個人的な感想を言えば、ビジネスメールであっても「アウト」だろう。なぜならこの言葉には「この「程度の内容は理解して当然なのだが」というある意味、自分が「格下」に見られていると受け止められる可能性が高いからだ。別の言い方をすれば「無礼」なのだ。

 

 実際に、ビジネスの現場でもこの表現を使うのは「かなり威圧的な感情」が含まれているケースが多いはずだ。もちろんその意図を意識して使っているなら構わないのだが。

 

 3の「できるだけ早くお願いします」はメールでありがちな表現。記事にもあるが、「相手が忙しい人だと期限を切ることを躊躇してしまい、『できるだけ』や『なるべく』といったやんわりとした表現を使用」してしまいがちだからだ。

 

 ただし、これはビジネスの現場では逆効果である。特に忙しい人ほど仕事の優先順位を決めたがるので、曖昧な表現では「後回し」にされかねない。丁寧な表現を使いながらも「期限を決める」のが正解である。

 

 以上の3点に共通するのは、「相手の立場に配慮すれば地雷を踏むことはない」ということだ。

 繰り返しになるが、「会話と文書の違い」「上下関係」「無用な遠慮」である。

 

 実際の現場でも、悪気があってこれらの言葉を使っている人はいないだろう。普段の会話の延長線でメールとして文書にするから地雷を踏むのだ。

 

 これらの対応策として自分が実践していることを紹介すると、メールを出す前に誤字脱字を再確認するのと同時に、「このメールを自分が受け取ったらどう感じるか」を想定してみることだ。

 ちょっとでも「違和感」があったら、それは相手にとっては「嫌悪感」になる可能性がある。

 

 「話し言葉」と「書き言葉」の使い分けには、自分も含めて十分注意したい。

日本人の給料が安いとは言っても、いきなりの「転職」「独立」は・・・無謀

本人の給料がまるで上がらない決定的な要因(東洋経済オンライン)

坂口 孝則 : 調達・購買業務コンサルタント、講演家

 

 30代、40代のいわば稼ぎ頭ともいえる世代の給与は10年前に比べて大きく下がっている――日本人の給料が世界的に見て主要国よりも低い水準にある原因とその処方箋に関する記事「日本人の給料がまるで上がらない決定的な要因」が12月7日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

  

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 記事では、国税庁の資料などを元に35歳から49歳までの世代の給料が10年前に比べて5%から10%近く減少していることを解説。

 その理由として、

  1. 日本の社会は「製造業」がベースにある
  2. 流動性が低い

 を挙げている。

 

 そして対応策として「本当に悩んでいるのであれば、転職でも独立でも、まずはやってみることを勧めたい」と、現在の職場からの離脱を勧めている。

 

 著者は、調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏。メーカーで資材のバイヤーをされていたようだが、専門分野以外での著作もあるようだが、「調達」のプロではあっても、「人材」のプロではなさそうだ。

 

 記事を読んだ感想としては、日本人の30,40代の給料が安いことは確認できたが、その理由はやや説得力に欠ける。さらに解決策に至ってはやや粗雑な印象を受けた。

 

 1978生まれらしいので、年齢は41歳前後。まさに給料の安い世代のど真ん中に位置するわけで、同世代への応援メッセージと贔屓目に考えても、「まずは転職、独立をやってみろ」というのは、人手不足が叫ばれる現在とは言え、やや近視眼的なアドバイスに映る。

 

 まず、給料が安い原因として「製造業」が主力であることを挙げているが、ここで引き合いに出しているのは、著者が勤めていたであろう大手メーカーを前提にしている(中小企業も含まれるが)ように見える。

 

 確かに富士通やNECなどの大手製造業ではリストラの嵐が吹きまくっていて、給料は抑制されているだろう。

 ただ、GoogleやYahooなど大手のIT関連企業もソフトウエアを作り出し、提供するという点では製造業だ。これらの企業の給与水準は決して低くないだろう。

 EC大手のAmazonも元々は書籍の通販会社だったが、現在はオリジナルの映画コンテンツやスマートスピーカーなどを手掛ける製造業に近づいている(倉庫など現場の給料は安いらしいが)。

 

 要するに「製造業」だから給料が安いのではなく、旧態依然とした体制で、時代に合った商品・サービスを提供できないから業績が上がらず、結果として給料が安いのである。

 

 2つ目の「流動性の低さ」という理由についてだが、確かに「大手」の看板にしがみついて安い給料に甘んじている30、40代の中堅社員は多いだろうが、新卒でまだ自由に転職が可能な若手に比べて、30代ともなれば結婚して、子供もいて、数千万円の住宅ローンを抱えている人も多いはずだ。

 

 しかもよほど特殊な技能や社外に強力なネットワークがあれば別だろうが、大手企業の平均的なサラリーマンが転職で給料がアップするとはかぎらない。仮にスキルが評価されて「好待遇」で移籍したとしても、その事業が将来にわたって好調な業績を維持するとは限らない。

 

 さらに転職するとなれば、条件は厳しくなるかもしれず、今後の子供の教育、住宅ローンを考えれば、いっときの感情で「転職」「独立」するというのは、「挑戦」というよりは「無謀」と言うべきかもしれない。

 

 著者は「失敗しても生活保護や再就職支援などもあって、日本ではそう簡単に死ぬほどまで追い込まれない」と書いているが、これはやや就職事情を楽観視しすぎていると思う。単身で実力に自信のある人向けの「限定的な」メッセージだと思った方がいいだろう。

 

 とはいえ、現状の安い給料のままで将来が必ずしも安泰とは言えなくなった今の職場には不安もあって、人生設計に悩んでいる30,40代が多いのも事実。

 

 個人的に勧めたいのは「副業」だ。現時点ではまだ副業を認めている企業は少ないが、政府が「働き方改革」を進めている中で、厚生労働省は「モデル就業規則」を今年3月に改訂した。

 その第68条では「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、「裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されていることから、第1項において、労働者が副業・兼業できることを明示しています」と補足説明している。

 

 世の中の流れが「副業解禁」に向かっているのは間違いないのだが、企業サイドがその変化に追いつけていないのが実情だろう。

 現実に自分の勤める会社で認められていない「副業」を始めるのはリスクが大きい。ではどうするか?

 

 その答えのひとつに「将来のマネタイズを考慮して、無報酬で関心のあるビジネスに参画し、ノウハウを取得する」という手がある。

 この方法だと「現金収入」は増えないが、将来稼げる可能性のある「スキル」は身に付く。報酬が発生しないので、税務署や市役所に補足されることもないので、会社にバレることもない。考え方次第では、「現金」という有形資産ではなく、「スキル」という無形資産を受け取っているともいえる。

 

 報酬が発生しないと安心して仕事を任せられないという会社も多いだろうが、人手不足の現在、無報酬で手伝ってくれるなら有難いという「個人経営企業」はあるはずだ。

 

 このような提案する私も、数年前から無報酬である仕事をお手伝いしている。週末や帰宅後の空いた時間を利用しての軽作業だが、業界内の事情はある程度わかるようになった。まだマネタイズまでの具体的なスケジュールは立てていないが。

 

 以上をまとめると、現在の給料に満足していない人が、「転職」「独立」という人生の一大勝負に出るという手もあるが、まずは「副業」から始めるのが現実的ではないか、というのが私の結論だ。

 

再婚がうまくいく秘訣は「他人」ではなく「過去の自分」と比較

過去より幸せになる「大人の再婚」密かな醍醐味(東洋経済オンライン)

大宮 冬洋 : ライター

 

 3人に1人が離婚すると言われるなかで、当然ながら「もう二度と結婚なんか御免」という人もいれば、「良い縁に出会えて再婚に成功」する人もいる。

 

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 12月6日付けの東洋経済オンラインに、「過去より幸せになる『大人の再婚』密かな醍醐味」というタイトルの記事が掲載された。

 

 個人的には「再婚」というと、偏見と言われても仕方がないのだが、「慰謝料など関係清算で揉める」「子供の養育費の未払い」「連れ子との微妙な関係」いったイメージがあって、どうにもあまりいい印象を持っていない。

 

 ところが今回の記事は「とてもうまくいった再婚例」として参考になった。

 

 登場するのは、22歳で結婚したものの旦那の浮気が原因で10年目に離婚した49歳の女性と、大阪への転勤をきっかけに歓迎会で知り合った2歳年上の男性の2人。ともに子供がいる。

 

 付き合い始めた当初は、二人とも結婚は考えていなかったが、「彼の母親の認知症が進行して彼が同居」せざるを得なくなったことが、結婚の決め手になった。

 

 普通はこうなると、「男性彼女に同居を希望し、女性がそれに反発するという」事態となり、別れるという結末に終わるのが通例だと思うが、今回は展開が異なる。

 

 男性が「この歳になって母親と同居している男なんて嫌やろ? ふってくれていいよ」と彼女の立場を優先したことで、それを受けた女性が「親を大切にできる人でよかった。むしろ絆が強まるのを感じた」と、自分の親の問題と絡めて受け止めたことが再婚の決め手になった。

 「相手のことをしっかり考えてくれている」という気持ちが伝わったのだろう。初婚の際には、「自分の立場優先」だったのが離婚で変化したのかもしれない。

 

 もちろん日々細かいケンカはあるようだが、お互いバツイチで失敗したくないという意識が「大人の対応」に繋がっているのだろう。

 

 記事の最後では「他人と比較しても幸福にはなりにくいが、過去の自分と比べることによって現状のよさを実感できることはある」としているが、これが本記事で最も伝えたいことだろう。

 

 結婚しない人は増えているし、先のように離婚も多い。ただ「結婚」で失敗する人もいれば、逆に「再婚」で成功を勝ち取る人もいる

 

 無理に結婚生活を続けて「我慢とストレス」のなかで生きるよりも、新たな「機会」を求めて自分の人生を取り戻したいと考えている人には、「再婚」はひとつの手段だし、生き方や働き方の多様化が進む中で、様ざまな恋愛のスタイルがあってもいいとは感じた。

 

 また、現実にはシングルマザーの貧困率は相対的にかなり高い。厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子世帯の母自身の年間平均就労収入は200万円に留まっている。

 

 こうした厳しい家計状況から抜け出すにも、再婚は有効な手段だろう。もちろん家計の問題だけで相手を選ぶのは感心しないが、離婚に至った原因を把握し、新たな人生を目指すことは子供の問題を含めて、十分に意味があると思う。