如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

クラウンはトヨタのメーカーとしての「意地」だ

トヨタ「15代目クラウン」発売1年後の通信簿(東洋経済オンライン東洋経済オンライン)

御堀 直嗣 : モータージャーナリスト

 

 15代目という歴史もすごいトヨタの高級セダン・クラウンの評価を語る記事「トヨタ『15代目クラウン』発売1年後の通信簿」が8月28日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 まず売れ行きだが、記事によれば昨年の発売直後の7月には前年同月比333.4%増となったそうだが、これはあくまで参考値。というのも昨今の新車販売では事前予約販売という形で正式な販売開始の前に、現在クラウンに乗っている人を中心に数カ月前から発注をかけるのが通例になっている。

 

 メーカーにとっては、生産台数の目途が立つうえ、メーカーオプションなど工場での装備品や車体の色などの顧客の傾向を掴めることで、その後の生産計画が立てやすいというメリットが、一方、購入側にとっても「誰よりも早く新型車に乗れる」というプライドが持てる。

 デメリットは、値引きが期待できないことと、装備品の詳細が不明なため納車後に追加費用がかかる可能性があることぐらい。

 

 この事前予約でかき集めた台数が、発売初月の台数にカウントされるので、当然受注台数は膨れ上がる。実態を知らない顧客は「そんなに人気なのか」と関心を寄せるので、宣伝効果も大きいわけ訳だ

 もっとも、クラウンについては、その後も目標販売際数を上回って売れているようなので、人気は一時的なものではなさそうだ。

 

 最近の乗用車で売れているのは、「SUV」「軽自動車」「ミニバン」に集中しているので、「セダン」の存在感は極めて薄い。

 軽自動車は乗用車全体の40%近いシェアを維持しているし、SUVではあのレクサスもを3種類もラインナップしている。ミニバンもトヨタのアルファードなど高級車の存在感は高い。

 

 ただ、長い自動車の歴史で、セダンは良くも悪くもスタイルとしてはもはや「完成形」なので、一定のファンに支えられて衰退はしないものの、燃費や乗員数、荷室の大きさ、デザインといった顧客の嗜好が強まる現状では、オーソドックスなセダンの一段の成長は見込み薄だろう。良くも悪くも「華やかさ」に欠けるのだ。

 

 かつては、タクシー、ハイヤーではクラウンの独壇場だったが、最近ではトヨタのシエンタを改造したJPNタクシーが都内を席巻している。スライドドアで歩道に寄せやすく、大きな旅行カバンも後ろの上下に大きく開くテールゲートから出し入れが楽なので、利用者の評判は上々のようだ。

 

 加えて、大企業の社長が使う社用車や政治家の間でも、アルファードに代表される大型ミニバンが利用されるようになった。これは推測だが、乗降性のしやすさ、天井の高さなど利便性に優れていることが評価されているのだろう。

 

 一番台数が出ている軽自動車の人気はもはや説明の必要すらないだろう。「安い」「装備が貧弱」「衝突に弱い」といった評価は完全に過去のものになった。今年発売になった日産の軽自動車デイズ(三菱のekクロス)に至っては、自動ブレーキなどの安全措置は数段上のクラスのミニバン「セレナ」と同じ性能だし、ホンダに至っては、最近発売になった軽のN-WGNの安全装備は、同社の「フィット」やミニバン「フリード」を完全に上回っている。

 

 以前は、性能の高い装備は高級車から設定して徐々に下位のクラスに浸透させていくというのが一般的だったが、他者との競争が激化したことで、そんな悠長なことは言っていられない時代になった。

 

 さらに言えば、昨年のデビューの際に試乗記で読んだのだが、クラウンの利用者の平均年齢は70代が中心だそうだ。この層が新型クラウンに乗り換えて10年もたてば免許返納も増えてくるのは確実。セダンのマーケットが縮小するのは避けられない。

 

 という訳で、クラウンに代表されるセダンの復活は望み薄なのだが、トヨタとしては創業当時から製造しているセダンへの思い入れもあるだろうし、生産中止にすることによるイメージダウンも避けたいはずだ。

 

 スープラに代表されるスポーツカーも車体価格は高いとはいえ販売台数は低く、それ自体は大きな利益にならないだろうが、モータースポーツの世界で鍛えられることで、車の構造や部品の品質向上が見込め、一般車に展開させるという効果はある。

 

 トヨタというと全国一の販売網と、強力な販売力でシュアを維持し、巨額の利益を稼いでいるというイメージが個人的にはあるが、あまり利益を深く追求せずとも伝統の「クラウン」にこだわるトヨタの自動車メーカーとしての姿勢は評価したい。

日本郵便の企業体質は、まず絶対に100%変わらない

 
日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録(東洋経済オンライン)

山田 雄一郎 : 東洋経済 記者

 保険の不適切営業という非常事態を受けて、日本郵便の横山邦男社長は8月23日に本社22階「前島ルーム」で、首都圏の現場社員のうち400人との対話集会を開催した―――この集会の模様を伝える記事「日本郵便『社員が社長にぶつけた不満』の全記録」が8月27日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 この対話集会、質問は抽選制で社員の意見を聞くことが目的のようだが、記事には「集取材班は校了後に開かれたこの対話集会の模様を追った」とあり、マスコミに公開されたようだが、質疑での対話のやり取りがそのまま掲載されていて実に生々しい

 しかも全5ページのほとんどが「発言」で占められており、集会の実態がよくわかる構成になっている。

 

 結論から言えば、記事のサブタイトルにある「返答はノルマ肯定、お付き合い容認、自爆放置」がすべてを物語っていると言えるだろう。

 

社長はノルマ営業について「ちょっと背伸びをして、ノルマに届くということが、組織や個人の成長につながる」と言っているが、金融機関ではメガバンクでもノルマ営業廃止の方向にあるのに、状況認識が世間の認識とズレ過ぎている。

 

 まあ、社長が体育会系の住友銀行出身なのでガチガチのノルマ市場主義は身体に染み付いているはずで、トップが変わらない限り、企業体質は絶対に変わらないと思った方がいい。

 しかも社長は、記事を読む限り責任もあまり感じていないようなので、辞任の可能性はゼロだ。

 

 とは言え、今回の問題の根本は、郵便局が本来の「郵便」業務以外に、「保険」「預金」「物販」などを手掛けていることに起因していると思う。

 郵便局なのだから民営化の際に、「郵便」業務に専念していれば、こんな結果にはならなかったのではないだろうか。

 郵便業務が赤字なのを他の業務で補填している構造はわかるが、本業の赤字を本業以外の業務で補う構図自体に無理があるという認識が欠けている。

 

 特に預金について言えば、どんな田舎に行っても「農協」「漁協」がない地域はないだろう。ちょっとした町なら「信用金庫」「信用組合」「労働金庫」もあるはずだ。これらでは預金以外にも融資も行っている。業務も、地域も重なる郵便局が預金業務を行う必然性はないはずだ。

 

 保険についても同じことが言える。

 埼玉県で保険販売を担当しているという郵便局員は「ここ2年くらい本当に売りづらかった。ほとんどの客に断られ続けている」と、かんぽ生命の保険商品がニーズに合っていないことを訴えた。と発言しているように、そもそも商品設計に問題がある。

 

 保険金の加入限度額が16歳以上で1000万円、加入後4年が経過しても2000万円までというのがまず現状に合っていない気がする。民業圧迫という民間保険会社の抵抗もあっただろうが。

 数か月前、所用があって近くの郵便局に行ったのだが、用事を済ませて帰ろうとしたら「保険」の勧誘をされた(どの保険かは記憶にない)。

 今は金利が極めて低いので長期の資産運用を保険で対応するのは合理的ではないことは分かっていたのだが、局員の話を一通り聞いたあとに「で、実際に払った金額と満期後に受け取る金額はどうなの」と質問したら、その場で計算してくれたのだが、何と長期に渡って支払った金額以下しか満期には返ってこないことが判明した。

 

 計算結果を提示してくれた局員もバツの悪そうな表情をしていたが、顧客に聞かれない限りは「元本割れ」という実態を説明することは避けようとする気持ちになるのは理解できる。

 いくら保険の分が上乗せされているとは言え、積極的に「売りにくい」「買いにくい」商品であることは間違いない。

 

 あえて郵便局で契約するなら「新普通定期保険」がシンプルで合理的な選択かと思われるが47歳男性で条件設定すると、Webサイトでの見積もりは死亡保険金300万円、入院保険金4500円で月額の保険料は3330円だ。

 とは言え、非営利団体のCOOP共済(あいぷらす)にすれば、死亡保険金は同額で入院保険金が5000円になって、月額3270円と、さらに安い。年額払いの割引もある。しかも加入は郵送でOKだ。しかも、剰余金が発生した場合、「割戻金」として契約者に還元するため、支払保険金の差額はさらに広がる。

 郵便局で最も合理的といえる保険商品ですら、世の中の保険商品全体でみれば競争力は決して強くはないのだ。

 

 物販に至っては、郵便局の店頭にこれでもかとチラシが並んでいるが、どれも商品力、価格面で惹かれるものが見当たらないのが個人的な感想だ。どの商品も「ふるさと納税」の返礼品で入手できそうなものばかりである。

 

 ようするに、郵便局は本来の郵便事業に専念し、商品力の強化で黒字化を目指すべきであるということが言いたいのだ。

 こういう言い方をすると、幹部は「年賀状の売り上げアップを目指す」といった、時代に逆行するさらなるノルマ強化に動きそうだが・・・

 とにかく現在のトップが経営を続ける限り、郵便局の体質は変わりようだないのは確かだ。

金融機関から「勧誘」されたら、まず「詐欺」だと疑った方がいい

お金を増やしたい人が絶対にやってはダメな事(東洋経済オンライン)

山中 伸枝 : ファイナンシャルプランナー(CFP®)

 

 定年を迎えて退職金2000万円をうけとった65歳の男性が、銀行の勧誘に乗っかって金融商品を購入、あっという間に500万円を溶かしてしまった―――。という高齢者が引っ掛かりやすい金融機関の「詐欺的な売り込み」の被害をレポートする記事「お金を増やしたい人が絶対にやってはダメな事」が8月25日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 この手の退職金を狙った金融機関のあくどい手口は、でにかなり知られた存在になっているはずなのだが、いまだに被害は続いているようだ。

 

 具体的な経緯は記事を読んで頂くとして、要約すると、大学の後輩として近づいた支店長のセールストークに乗せられて、言われるがままにお決まりの「高金利の短期定期預金」と「高手数料の投資信託」を買わされて、投資信託が暴落、多大な損失を被る。

 怒りの収まらない本人は、文句の電話を掛けるが、支店長は人事異動ですでに他店に転勤済というオチだ。

 

 ちなみに、この手の詐欺的な勧誘に引っかかるのは、大企業の管理職経験者でプライドが高いわりに、資産運用、金融商品への知識に乏しいという傾向がある。接客に長けた銀行員の「よいしょ」に乗せられやすい。要は「いいカモ」なのだ。

 

 話は若干それるが、この手の詐欺的な勧誘には「お決まりの小道具」があって、それは「支店長が直々に対応」「支店の豪華な応接室か支店長室」「提供される高級そうな緑茶」の3点セットだ。

 

 結論から言えば、このケースを含む金融機関の詐欺的な行為を避ける防衛策はたったひとつだ。それは「金融機関が勧める商品は絶対に買わないこと」。

 

 そもそも黙っていても売れる「良質な金融商品」は売り込む必要がない。売れない商品だから営業マンがノルマで売らされるのである。そんな商品が顧客のためにならないことは自明の理だろう。

 

 今回の相談者は、被害後にまともな著名でかつ良心的なFPに相談したので良かったが、よくあるのは、「今回はたまたま担当の営業マンに恵まれなかった」と自分の運の悪さを理由にして、さらに別の金融機関から質の悪い商品をつかまされるという一種の「追いはぎ」に引っかかる高齢者が多いことだ。

 

 とは言え、いきなりの数千万円という大金を手に入れて、「どうしよう」と狼狽する気持ちは理解できなくもない。 

 また超低金利という現状に加え、最近の金融庁の報告書で「老後資金2000万円不足」問題が誤って世の中に広まったこともあり、「何か資産運用しなくては」と焦るのは仕方のない側面はある。

 

 しかし大切な老後資金だからこそ、まず心を落ち着かせて、自分のおカネに関するライフプランを慎重に考えることが重要なのだ。

 高齢者向けに自宅のリフォームの必要性や、子供や孫への住宅・教育等の資金援助、介護が必要になった際の施設への入所費用など、必要となる資金は不足する可能性は小さくない。

 だからこそ、投資経験がなかったり、経験が浅くて投資に自信がない場合は無理に「資産運用」する必要はないのだ。

 「増やすこと」よりも「減らさない」ことを重視すべきなのである。

 

 具体的には、退職者専用の高い金利で引き付ける特別な定期預金ではなく、「普通の定期預金」もしくは「個人向け10年変動国債」を勧める。利息は少ないが元本が減ることはない。

 ちなみに、個人向け10年変動国債は、財務省が「個人向け販売を強化したい」との思惑から、証券会社で購入すると金額に応じてキャッシュバックがある場合がある。これはおまけがついてくる優良金融商品として、「例外中の例外」である。

 

 他の方法としては、あおぞら銀行は「高齢者向け定期預金」に年率0.3%というメガバンクの30倍の金利を、インターネット支店なら普通預金でも年率0.2%という同200倍の利息を提供している。また、インターネット専門の住信SBIネット銀行の一種の普通預金(SBIハイブリッド預金)も金利は0.01%と高い。

 これらの預金には預入額などの多少の条件はあるが、先の銀行のような「投資信託」と抱き合わせ販売という「見かけだけのの高金利」で顧客を集めている訳ではない。一考の価値はあるだろう。ただし、今後いつまでも高金利を維持してくれるとは限らないないが。

 

 最後に金融商品や資産運用の知識に乏しい人にひとつだけ覚えてほしいことがある。それは「金融機関のセールスマン、セールスレディから声を掛けられたから詐欺の勧誘だと思え」ということだ。

 

 もちろん真面目な行員もいるだろうが、こういう前提で対応した方が損失を被る可能性は格段に低くなる。

 

 さらに言えば、投資で資産を増やそうと思うならば、自腹を切って投資に関する本を読んで勉強することだ。身銭を払えば真剣になるし、真剣になればまともな投資手法も身に付く。

 大金持ちでもないのに、なんの苦労もしないで資産を増やそうという考えそのものが「甘い」という事実に気づくべきだ。いい年をした大人なのだから。

調味料を止めたら、三か月で血圧がぐんと下がった!

 本ブログの525日に、「高血圧の主因は『塩分、肥満、ストレス』だが、要は『塩分』」というタイトルで書評を書いた。

 

 対象の本は「ズボラでもラクラク! 薬に頼らず血圧がみるみる下がる!: 血管を鍛える最強の方法(知的生きかた文庫)」なのだが、その書評で、本にはない私自身が考えた高血圧対処法として、「調味料を一切摂取しない」という手法を紹介した。

 

 それから3カ月が経って、いまだに調味料は一切摂取していないのだが。血圧の明らかな低下効果があったので報告したい。

 

 対処法を公開した直後の527()時点での血圧は、上が174mmHg、下が121mmHg、脈拍は85だったのが、約三か月後の昨日823()の計測では、上が133mmHg、下が105mmHg、脈拍は74となっていた。

 

 上の血圧は41下がって率にすれば23.5%の低下、下の血圧は16下がって同12%%の低下となった。脈拍も約13%下がっている。

 

 この3カ月の間、生活面で変化があったのは「調味料を止めた」ということだけ。食べるものは回数、分量、内容などまったく変えていないし、運動も相変わらず何もしていない。本当に変えたのは「調味料」を使わないことだけなのである

 

 つまり「調味料を摂取しない」だけで、わずか三カ月で血圧は上が20%以上、下も10%以上下がったのだ。もともと素人の勝手な思いつきで始めた訳だが、事前にかかりつけの内科医の先生には相談して、「まあ試してみてもいいのでは」との了解は得ていたが、正直ここまで効果があるとは想像していなかった。

 

 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019 によれば、上は120未満、下は80未満が「正常血圧」なので、まだ下げる必要はあるのだが、だいぶ目標に近づいた。

 

 日本高血圧学会のWebサイトでは「減塩」を勧めているが、可能であれば「調味料不摂取」の方が、実践した者としては効果は大きいような気はする。

 

 確かに、醤油やソースなどを止めると、刺身やとんかつなどを食べる際に何となく味に「物足りなさ」を感じるのだが、しばらく続けていると、刺身なら魚本来の持つ旨味や、肉に含まれる肉汁の感覚が分かるようになるのだ。

 

 今までは、私自身の味覚音痴という側面もあるのだろうが、何の疑問も持たずに調味料を使っていたので、刺身は「醤油味の生魚」、とんかつは「ソース味の肉の揚げ物」としか認識していなかったのだが、この認識は大きく変わった。

 

 という訳で、調味料の不摂取には効果があったという結論なのだが、当然ながら個人差はある訳で、「どうしても調味料がないと食べた気がしない」、「味が薄くて物足りない」という人も少なくないと思う。

 

 ただ、病院に行って降圧剤をもらって飲むには手間もコストもかかる。運動を始めるにも時間も体力も限りがあるという人は一度試してみてはどうだろうか。

 「調味料の不摂取」には、時間もおカネもかからない。「自分には向いてない」と思ったら止めて、元の食生活に戻せばばいいだけの話である。「うまくいったら儲けもの」ぐらいの期待値で十分だと思う。ちなみに普段のオカズやお菓子、飲料の類にも、多少なりとも「塩分」は含まれているので、調味料を止めても完全な「断塩」にはならない。

 

 もっとも私は医師でも医療関係者でもないので、あくまで自分が実践した結果を伝えているだけで、その効果を他人に無理やり勧めている訳ではない。何かあっても責任は取れないので、「調味料不摂取」を実践するなら、あくまで個人の判断でお願いします。

この逆風下、韓国からの観光客は大歓迎すべきなのに・・・

韓国人歓迎イベントに批判 道知事「交流は必要。感情的でなく」 新千歳など2空港(デジタル毎日)

 

 昨年来の韓国の反日的な行動には、私自身「怒り」から「諦め」そして今は、「笑い」の対象になっていたのだが、ここにきて笑ってもいられない事態が起きているようなので、ブログで紹介したい。

 

 822日付けの毎日新聞のオンライン版デジタル毎日に「韓国人歓迎イベントに批判 道知事『交流は必要。感情的でなく』 新千歳など2空港」という記事が掲載された。

 

 記事では、北海道を音連れる韓国人観光客を歓迎するイベントを空港で実施したところ、道内外から「韓国人観光客は誘致する必要がない」「なぜ韓国人を歓迎するのか」などと批判する意見が相次いだ、ことを紹介している。

 

 まず、真っ先に言いたいのは「韓国」と「韓国人」を区別するべきだということ。

 国家としての韓国は、大統領の指示のもと一丸となって日本に対抗する意図を明確にしており、昨年の自衛隊機へのレーダー照射問題以来、日本への敵意は終始一貫している。

 815日の光復節での大統領演説では、対日批判のトーンが若干落ちたが、22日夜、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことで、状況はさらに悪化した。二国間の関係は「友好国」から「敵対国」に180度変化したと言っていい。

 

 とは言え、これは「国家間レベル」の話。民間レベルでも「日本製品の不買運動などが盛り上がっている」と韓国メディアは伝えているが、その様子を撮影しているカメラ、ビデオカメラは日本製。その矛盾に気づいたカメラマンはメーカーのロゴをテープを張って隠しているらしい。何とも情けない話だ。

 

 世論調査機関リアルメーターの17日発表した内容では、世論調査では「今後参加意思を示した回答者は10人のうち7人に達する66.0%となった。今後参加しないという回答者は28.0%だった。」という。

 また、韓国の航空会社の日本便も減少が止まらない。日本政府観光局(JNTO)が21日発表した7月の訪日外国人客数は、全体では増加したが、韓国からの旅行者は前年同月比7.6%減の56万人だった。

 

 以上の数値を踏まえて、韓国国民は「日本への怒りで満ち溢れている」のような報道が多いが、私に言わせれば、30%近い人は不買運動に参加せず、日本への観光客も1桁%の減少に留まっているという見方の方をすべきだと思う。

 

 しかも、こうした逆風下のなかでも、日本に好意を持つ韓国人は日本の観光に来てくれるのである。おそらく自国では、日本旅行など「怖くて周囲に言えない」「強く反対される」人が多いにも関わらずだ。

 

 「韓国人」という人として見れば、親日的な感情を持つ人は少なくないのだ。周りの批判的な雰囲気を押し切ってまで日本に来てくれる韓国人を、「よくぞこの時期に日本に来てくれました」と歓迎するのは、評価こそすれ批判する理由はどこにもない。

 

 日本人も、「韓国人」として一括りに考えるのではなく、個々の性格や価値観を判断したうえで対応すべきなのだ。「韓国人だから」という理由だけで、批判、反発の対象にするのは「自分の頭で考える」というスキルがないに等しい。これでは、様々な反日行為を感情むき出しで行う一部の韓国人と変わりない知的レベルである。

 

 個人的には、このように日本と韓国の関係の重要性を理解し、日本に友好的な立場であっても、現状の雰囲気では韓国で発言も活動もできない状況に置かれている「財界人」「政治家」「軍関係者」も少なくないと考えている。

 

 日本としては、個人的にこうした親日派の人々を支援すると同時に、政府、自治体レベルでも、反日感情でいきり立つ人々に見つからないような形で資金面、情報面などからの積極的に援助をすべきではないか。

 

 中長期的な観点から見れば、韓国内に親日派を増やす政策を着実に実行した方が、日韓双方にとって幸福な未来を築けると思う。

EDLPはスーパーの特売チラシを駆逐するか

スーパーで「特売日」がなくなり「毎日安売り」が増えている理由(ダイヤモンド・オンライン)

森山真二:流通ジャーナリスト

 

 「本日特売日!」というのぼりを最近、スーパー店頭などでみかけなくなった。そういえば新聞の折り込みチラシもめっきり減った」という出だしで始まる、最近のスーパーなどの特売状況の変化を分析する記事「スーパーで「特売日」がなくなり「毎日安売り」が増えている理由」が8月21日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 記事のキモは2点。ひとつは「折り込みチラシ」の効果が減少したこと。新聞の発行部数が大きく減ったうえ、特売情報はスマホでチェックできる、ということ。

 もうひとつが、エブリディ・ロー・プライス(EDLP)という価格戦略だ。毎日が安売り日ということで「特売宣伝用のチラシ」の価値が失われている、という点だ。

 

 スーパーの折り込みチラシについて言えば、地域によって差があるのか私の周囲では「減った」というよりは、家電販売店のチラシが「大きくなった」感が強い。

 食品スーパーのチラシの内容自体、は大きく変わってはいないと思う。中高年世帯が比較的多い地域なので意図的に配布している可能性はあるが。

 

 一方、EDLPを導入したスーパーとしては、米ウォルマート傘下になった当時の西友で、レジカウンターの前に大きな輸入チョコレートを山積みにしていた記憶があるが、成功しているようには見えなかった。実際昨年には西友の身売り観測も報道された。

 

 記事では、国内では食品スーパーのオーケーがEDLPを先行してきたと解説しているが、そのオーケーを上回る勢いでEDLP戦略で攻勢をかけているのが、ドラッグストア大手のコスモス薬品らしい。

 

 ただこのコスモス薬品、公式サイトによれば全国に1004店舗(7月末現在)あるのだが、西日本に店舗は集中していて、関東には3店舗しかもすべてが東京で、江戸川区、渋谷区、中野区にしかない。東京都下に住むものとしては、店舗のイメージはもとより、品ぞろえや安さの実感が湧かないのが実感だ。

 

 記事によれば、ポイントカードの廃止などで徹底してコストを削減、経費率は他のドラッグストアより格段に低い。医薬品を扱うことで薬剤師の配置など人的コストはかかるが、安売りの食品で顧客を呼び込んで、医薬品の購入にもつなげて利益を確保しているようだ。

 私の自宅の大手ドラッグストアではまだ見かけないが、24時間営業や弁当の販売を手掛ける店舗も出始めているようで、「食品は常にスーパー並みかそれ以上に安い」「いざという際に医薬品も買える」「総菜、弁当も充実」となると、スーパーはもちろんコンビニの脅威にもなりえるだろう。

 

 実際にコンビニの店舗数は、日本フランチャイズチェーン協会の統計によれば、今年に入って5万5000店台で足踏みが続いている。最近になってドラッグストアの再編が取りざたされているのは、コンビニが成長期に相次いで合併し、大手3社に集約されていく過程を、追いかけているようにも見える。

 

 コンビニには折り込みチラシというもの自体がないが、ドラッグストアのチラシもあるにはあるが、スーパーとは質量ともに比較にならない。

 ただ、EDLPが今後消費者の間で認知されるようになれば、事情は変わってくる。新聞の発行部数は減少が続き、日本新聞協会によれば2018年には4000万部を割り込んだ。一世帯当たりの購読部数は0.70まで低下している。

 部数減少に歯止めがかからない 状態だけに、折り込みチラシの必要性や価値はさらに薄らいでいく可能性は高そうだ。

「貧困」を語る心意気は買うが、内容は・・・

「貧困」を考えるうえで背けられない客観的事実(東洋経済オンライン)

大西 連 : 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長

 

「2019年現在、「日本に貧困はない」と言う人はいません」という文章で始まる、現代社会の貧困問題を解説する記事「『貧困』を考えるうえで背けられない客観的事実」が8月21日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 全体を通じた読んだ感想を述べると、貧困の「定義」「歴史」「非正規労働」「女性・子供」というテーマに分かれているのだが、多少なりとも「貧困問題」に関心があって、関連書籍などを読んだ人にとっては物足りない内容だった。

 

 確かに、冒頭の段落の最後には「(貧困の)現在地を共有することを目的」とあるので、おそらく明日以降の記事で深堀されていくと思うのだが、連載の一発目としてはややインパクトが弱いのである。

 

 まず、貧困に「相対的」と「絶対的」があるというのは、まあ多少の常識のある人なら知っている話だがここで解説するのは「現在地の共有」なのでいいとする。

 また「国際比較でも、日本の相対的貧困率の高さはOECD諸国の中で上から数えたほうが早いくらいなのです」とある。

 確かにOECD35加盟国のなかでは上位にはあるが、Webサイト「世界の貧困率 国別ランキング・推移」によれば、主要42か国のなかでは第14位、貧困率では1位の中国(28.8%)の半分程度である。中国の経済力は世界第2位であるにもかかわらずだ。

 米国(17.8%)に比べても低いし、スペイン(15.5%)と同程度だ。貧困率が低いとは言わないが、高いと声を大にして言える数字でもないはずだ。

 

 また、「非正規労働」についても、「1984年には15.3%だった非正規労働者が2018年には37.9%と急増しており、(中略)この中には、主婦のパート労働や学生のアルバイトなどの「家計補助」的な働き方も含まれます」とあるが、パートがバイトが大半を占めているにしても、「高年齢者雇用安定法の改正」によって65歳までの雇用機会の確保が事業主に求められたことで、非正規雇用の高齢者が急増した影響に言及していない。

 

 加えて、この項で年収200万円以下の人が増えたとについて、データの扱いに齟齬がある。

 記事には、「年収200万円以下の人は2013年で1120万人。これは働く人の24.1%、(中略)2000年には18.4%であったことを考えると、この10年間で約6%の上昇」とあるが、「%」どうしを比較するのに%の絶対値を使うのはおかしい。「6」という数字を使うなら「6ポイントの上昇」が正しい表現である。

 

 正確には、18.4%が24.1%に上昇したのだから30.9%上昇とすべきところだ。むしろこちらの数値の方がインパクトがあるのに、単純なミスで低所得者層の増加の大きさを「過小評価」させてしまっている。

 

 貧困問題の重大度をアピールしたいという志は立派だが、もう少し数値データの扱いには配慮した方がいいのではないか。

 

 記事の最後で、「私たちには、この記事で確認したような「数字」だけでなく、実際に「貧困」という状態を生きる人々の生に対する想像力も必要なのです」と述べているが、肝心のデータの扱いが不正確では、説得力に欠けると言われても仕方がないだろう。

 

 とは言え、確かに社会的に大きなテーマではあるので、次回以降に期待したい。

タワマン支持派の苦し紛れの反撃が始まった

 昨年中ごろまでは、都心のマンション、特に湾岸部を中心とするタワーマンションの人気が続いていたが、今年に入ってタワーマンションへの逆風が吹き始めた。

 

 この流れを決定づけたのは、6月に出版された榊 淳司氏の「限界のタワーマンション だろう。

 

 本がタワマンの「不都合な真実」をこれでもかと指摘したことで、これまで「憧れ」「優越感」からタワマンを志向していた層が、冷静になって購入する物件の見直しを考える人が出始めたことは、Amazonの本書の読者レビューからも読み取れる。

 

 ちなみに、私自身タワマンのメリット、デメリットについては、一時29階建てのタワマンの22階に2年ほど賃貸住まいしていた経験があるので、十分に認識している。

 

 私は「限界のタワーマンション」についても、出版と同時に購入、内容を高く評価するレビューを書いたところ、50人以上の「役に立った」投票があり、レビューとしてトップ評価をいただいている。

 

 この本に追随するようにタワマンの暗い未来を解説する記事が各種メディアで見られるようになったが、最新の代表記事は「2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか」で、8月17日の現代ビジネスに掲載された。

 記事の最後で「建設ピークを迎えた'08年に建てられたタワマンが、15年目になるのは2022年。まさにこれからタワマンの問題は深刻化する。あなたは、それでもまだタワマンを買いますか?」と、結んでいるように、タワマン購入予定者に対して明確に警鐘を鳴らしている。

 

 一方、こうした流れを受けて、タワマンの住人やデベロッパー、販売会社関連の「タワマン支持派もしくは推進派」と思われる人たちからの反論も増えてきた。

 

 その代表例が、WebサイトOTONA LIFE(オトナライフ)である。Webニュースサイト「ビジネスジャーナル」に記事の一部が掲載されることも多いので、そこからリンクしてくる人も多いはずだ。

 まず最初は、7月6日に掲載された「タワーマンションには足場が組めない、修繕費が莫大で足りなくなり資産価値が落ちる?」である。

 記事では費用総額は一戸当たり月額9000円にすぎないとしており、多額ではないと主張している。実際、工事費用は修繕積立金の範囲で収まったようだが、これはあくまで1回目の大規模修繕。

 問題は、配管やエレベーターなど費用が膨れ上がる二回目以降の大規模修繕なのだ。特にエレベーターは個々のタワマン専用の高速仕様になっているうえ、当然ながら30年前に比べて機能も進化しており価格は高い。独自仕様なので同業他社との相見積もりもできない。

 

 これに続くのが、7月30日に掲載された「タワマンに住むと不健康になるという噂は本当?」である。内容はまさに榊氏が著者で指摘した「健康面での被害」に反論している。内容については読者の判断に任せたい。

 

 そしてトドメが、8月18日の「筆者が住んでわかった!タワマンに住むメリットはこんなにあった!」である。記事前半では、高層階なので蚊が出ない、があるのでゴキブリが出ない、ことを評価している。私が住んでいたタワマンにはディスポーザーはなかったので、ゴキブリは生息していた。

 ちなみに生ゴミ以外のリビングのお菓子の残りカスでもゴキブリは生きられると思うのだが。

 

 記事後半では管理組合について言及、「筆者のタワマンでは、管理組合の理事が弁護士、税理士、建築関係者など専門知識が豊富で有能な人材で占められており」としているが、このような人材豊富なタワマンは少数派ではないだろうか。

 

 そもそも最上階と下層階では10倍以上価格が異なるタワマンでは、職業も年収も価値観も全く異なる人たちが住んでおり、「意識高い系」の理事が資産価値維持のための背策を打ち出しても、費用負担に耐えられない世帯も多いはずだ。

 しかもここ数年、湾岸のタワマンを購入した層には投資目的の中国系の外国人が含まれており、彼らを含めた合意形成には相当な時間と手間がかかるだろう。

 

 先の「限界のタワーマンション」では、多額の費用がかかる2回目の大規模修繕ができないタワマンの発生を危惧しているが、大規模修繕は2回では終わらない。その後も15年間隔で実施する必要があり、しかもその費用は増大する一方。

 管理費等が払えず売却、老朽化したタワマンから新築へ引っ越し、戸建てへの住み替えなど、新築当時の人気を維持できるタワマンはほとんどないずだ。

 

 大手デベロッパー出身でマンション事情に詳しいオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏は、その著者で、過疎化した郊外のニュータウンを引き合いに出して、「ニュータウンは横に広がった過疎化だが、タワマンは上に伸びた過疎化になる」という趣旨の指摘をしている。

 

 街としての歴史も、文化もなく、海抜ゼロメートルの埋め立て地に立てられた「タワマン」という名のコンクリートの建造物が、専門家のいうように100年後も価値を維持し、何ら問題を抱えていない住民が集まっているとは、私には到底思えない。

 

「乗り物酔い防止メガネ」もいいが、本業のクルマにもっと注力しては?

有効率95%!「乗り物酔い防止メガネ」のすごさ(東洋経済オンライン)

森口 将之 : モビリティジャーナリスト

 

 

 フランスの自動車メーカー・シトロエンが開発した乗り物酔い防止メガネ「シートロエン」の効果がすごいらしい。

 この「シートロエン」を解説する記事「有効率95%!『乗り物酔い防止メガネ』のすごさ」が8月19日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事によれば、欧州では1年前に発売し1.5万個以上が売れ、日本では今年5月の販売開始と同時に即日完売となったそうだ。

 ちなみに現在は、シトロエンオンラインショップに在庫はあるが、価格は税込みで16,200円と「特殊用途」のメガネとはいえ、「お高い」ようにも感じた。

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シートロエンの外観。現在は通販可能。

 乗り物酔いしない仕組みについては、記事に概要が書かれてるので読んでもらうとして、最も興味を持ったのは、使用開始後10~12分で効果が出たあとは、「シートロエン」を外しても効果が持続する、という点。

 

 製品の画像を見ればわかると思うのだが、デザイン技術を誇りとするフランスならではというか、とにかく見た目のデザインが「奇抜」なのである。

 色は白いし、レンズは4つもある。目立つことは間違いない。このメガネをかけた状態で、長時間他人の前に顔をさらすには、個人的にはすごい抵抗感がある。ただ、記事にあるように10分ちょっとの使用で済むなら大きな問題にはならない。

 

 私自身は乗り物酔いへの耐性が強いので、経験した記憶はほぼないが、家族は車の後部座席に乗っていると、長時間になると大体気分が悪くなる。特にスマホなどを見ていると一発だ。

 

 私自身が効果を体験できそうにないので、家族向けに1つあってもいいかなと思ったが。16,200円は効果があるとしても「高い」と感じる。

 

 ちなみにAmazonでは、似たような製品が1799円から売っていた。

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Amazonで売られているレプリカ

 商品説明を読む限り、「乗り物酔い防止」という仕組み自体は変わらないようなので、個人的には、安いレプリカ品のなかでも比較的レビュー評価の高い商品に絞って、買ってみて、その効用を家族に確認してみたいと思う。

 

 本来、こうした日常的な不都合を解消するグッズを開発するのは、日本の得意分野であったような気もするのだが、フランスの自動車メーカーの商品開発力もなかなかのものだと感じた。

 

 もっとも、それだけの実力があるならもっと本業のシトロエン車の対日輸出にも力を入れれば良いのにとも思う。

 日本自動車輸入組合の2018年度の輸入車新車登録台数速報によれば、シトロエン車の輸入台数は3,655台で第18位。トップのメルセデスベンツ(66,948台)の5%強に過ぎない。

 16,200円のメガネの利益率は悪くないだろうが、肝心のクルマよりもメガネで知名度が上がるという事態を、シトロエンのフランス本社はどう受け止めているのだろうか。

 

大江戸温泉リートの資産運用報告書がけっこう面白い

大江戸温泉リート投資法人(3472)の第六期資産運用報告書

 

 資産運用の一環として私は、株式などに投資をしているのだが、中でも対象銘柄のほぼ半数を占めているのがREITである。

 投資になじみのない方のために簡単に説明すると、REITとは「Real Estate Investment Trust」の略で、訳すと「不動産投資信託」となる。

 

 その仕組みを簡単に言えば、不動産投資に特化した特別会社を上場させて投資を募り、その資金で不動産を購入して、得られる賃貸料や物件の売却益を投資家に分配金という形で還元するというものだ。

 

 不動産投資をするなら「直接物件を購入して大家になればいいのではないか」と考えて、ワンルームマンションやアパート経営に乗り出す人も少なくないようだが、個人的にはオススメしない。

 というのも都内でワンルームを買えば千万単位で、アパート一棟ならさらに多額の資金が必要になる。自宅ではないので銀行からの融資の金利も高い。

 加えて、空き家の可能性、賃借人の不始末、設備の更新などのリスクを考えると、サラリーマンがワンルームの一室を購入するというのは言わば「地雷」を抱えるようなもの。しかもここ数年で物件価格が高騰しているので実質利回りも期待できない。

 

 対してREITは、複数の物件に投資するので分散投資になるうえ、マンションの他に、オフィスやホテル、商業施設など選択肢も多い。最低投資金額も圧倒的に低い。例えばETFとして東証に上場している「iシェアーズ JリートETF( 1476)」なら 2125円で購入できる(8/16現在)。

 

 REIT全体で見れば、利回りは4%を超える銘柄も結構あるので、分配金(いわゆる配当金)狙いの投資としても期待できることも大きなメリットだ。NISA枠で購入すれば配当金に課税もされない。もちろん株式のように市場で取引される金融商品なので価格下落のリスクはあるが。

 

 さて、話がだいぶ横にそれたが、今回のテーマはそのREITで私が投資している銘柄のひとつ「大江戸温泉リート投資法人(3472)」だ。

 

 今週、第六期の資産運用報告書が送付されてきたのだが、これが意外にも結構面白いのだ。

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資産運用報告書の表紙

  他のリートは、総じて報告書に「決算の概要」「投資物件の説明」「今後の投資方針」あたりを、淡々とまさに「報告」しているだけで「まったく興味をそそられない」のだが、大江戸温泉は、内容の充実度が他社とは全然異なる。

 投資対象が「温泉・温浴施設」という個人利用者を対象にしているという側面はあるだろうが、少なくとも「読ませる」内容に注力しているのは間違いない。ちなみに同社の株主に占める個人の割合は98.3%である(5月31時点)。

 

 まず冒頭で、同社執行役員の今西氏と一橋大学准教授の岡本氏「余暇活用」についての対談を掲載。

 岡本准教授が「人が成長する場として余暇が非常に重要である」という学説を紹介、その余暇で最も重要なのは「観想」という概念で、これは大切な仲間や家族と語りあうことで、人生において本当に大切な時間を過ごすこと、と解説している。

 

 一方、今西氏は「大江戸温泉では、アクティブシニアが楽しそうに家族や仲間と交流していて、これが『観想』なのですね」と話を自社のビジネスに振っている。

 

 岡本氏は対談の最後で、「何も生産しない時間の中で、人が人らしい空間や時間を作ることが重要」として、そのための投資を今西氏に提案している。

 

 個人的には、大江戸温泉も巷に多数ある「スーパー銭湯」の宿泊施設の整備版だと思っているので、「観想」を考えて利用している人はほとんどいないと思うが、考え方としては面白いと感じた。

 

 報告書には、他にも「余暇活用のマーケット事情」などのコラムも掲載されているが、報告書の一部にちょっと違和感を覚えた部分があったので最後に指摘しておきたい。

 

 それは「トップメッセージ」として今西氏が業績などについて述べているのだが、相対的に業績が伸び悩んだ2施設について、「対策として個人客の集客強化策を実施していると聞いています」と書かれている部分。

 必要な対策を「聞いています」というのはトップの発言としては如何なものか。対策を「聞く」のではなく「実施して、効果も出ています」というのが投資家向けの発言としては正しいだろう。

 どこか事業への関心が「他人行儀」のように感じられる表現がやや気になった。

 

 とはいえ8月16日時点の分配金予想利回りは5.47%。今西氏も今期、次期共に2300円台を確保できると予想しており(前期は2390円)、当面は十分な利回りは期待できそうだ。